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ラストキャット(16話)

 「ミミ、帰ってきた…?」と祥太が“おはよう”の挨拶を忘れて言う。
 その日家族みんなが“おはよう”を言い忘れる程に、ミミを想い浮かべては心配しながらいて…。
 その日も「ミミ…!!」と、まるで”選挙の時のうぐいす嬢“の様に連呼して…、探し廻ったが見つけられずにいた。
 “ネコは死に際を人に見せない”ので少し不安がよぎりながらも、その夜ミミは家に帰らずに眠れぬ夜を過ごした。

 3日目の日曜の朝は沈黙から始まり少し諦め気味の気分の中、母の栞里がミミの好物のエビフライを作り始めて“きつね色”に出来上がる頃に、“恋猫シマ”が窓越しに見えてニャオ語で話しかける様に鳴き「私についてきて…!」と、こちらを見て後ろを振り向きながら歩いていく。
 沙羅が「ミミの声が聞こえる…」と言うと、祥太が「ミミの彼女について行こう!」と話した。
 恋猫シマの後に続いて歩く私達は、“おかしな家族”……!!
 先頭のシマが止まりニャオ語で話し始めると、微かに「ニャ!」とミミの声が聞こえた…、ご近所の小屋の中から…!!

 その近所の明石さんに事情を話して小屋を開けてもらうと、「ニャー」と、ミミが私に必死に飛び付いて爪を立て“しがみつき”離れなかった。
ミミの絶望からの“解放”が爪の傷跡になり、私の胸に刻まれた。
  小屋の主の明石さんに御礼をして、家に戻ろうとした時にシマの姿は消えていて、「ありがとね、シマちゃん…!」と、言った私の言葉は空振りでまるで独り言の様に空を切った…。  
空を切った“ありがとう“だけれども、 ミミの種族は人間より遙かに聴力が優れていて、何処かでシマが聞いてくれていたらイイな〜と願ってたりして…!

 …………………… 続く ……………………


 


 

 
 

 

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