WBCの出場枠は何か国がいいのか
侍ジャパンの優勝で盛り上がったWBCから1年が経ったということで、記事を書いてみました。今回はWBCの本大会、出場枠について個人的に思うところをまとめています。
※今回は主に予選ではなく本大会の出場枠について書いています。
1.これまでのWBC出場国数
まずこれまでのWBC、出場枠と出場国を振り返っていきましょう。
◾2006年 16か国
出場国(MLBが選出):日本/韓国/台湾/中国/オーストラリア/オランダ/イタリア/南アフリカ/アメリカ/カナダ/メキシコ/キューバ/ドミニカ共和国/プエルトリコ/パナマ/ベネズエラ
◾2009年 16か国
出場国(MLBが選出):2006年と同じ
◾2013年 16か国
〜2013年大会より予選導入〜
出場国(前回上位12か国+予選突破4か国):日本/韓国/台湾/中国/オーストラリア/オランダ/イタリア/スペイン(初出場)/アメリカ/カナダ/メキシコ/キューバ/ドミニカ共和国/プエルトリコ/ベネズエラ/ブラジル(初出場)
◾2017年 16か国
出場国(前回上位12か国+予選突破4か国):日本/韓国/台湾/中国/オーストラリア/オランダ/イタリア/イスラエル(初出場)/アメリカ/カナダ/メキシコ/キューバ/ドミニカ共和国/プエルトリコ/ベネズエラ/コロンビア(初出場)
◾2023年 20か国
出場国(前回出場16か国+予選突破4か国):日本/韓国/台湾/中国/オーストラリア/オランダ/イタリア/イスラエル/イギリス(初出場)/チェコ(初出場)/アメリカ/カナダ/メキシコ/キューバ/ドミニカ共和国/プエルトリコ/ベネズエラ/コロンビア/パナマ(復帰)/ニカラグア(初出場)
2.出場枠が増えた2023年
上記でわかる通り、2023年大会は初めて出場枠が増え20カ国となりました。
これによりチェコ、イギリス、ニカラグアが初出場を果たし、パナマも3大会ぶりのWBC復帰となりました。これは成功だったと言えるでしょう。
◾出場枠増で良かったこと
初出場し東京ラウンドを戦ったチェコは、戦いぶりが日本人の心を打ち、大会後もコーチの交流や栗山さんがチェコ訪問など交流が始まりました。WBC後にチェコで行った野球の大会でも集客増、同国球界が変わる1年になりました。
同じく初出場のイギリスはMLBが公式戦を行うなど市場として注目する国。BBCがMLB中継を始める年にイギリスがWBC初出場、MLBとしても良かったでしょう。
パナマやニカラグアは野球が最も人気スポーツの国。そんな両国の野球ファンもWBCに出れたのは嬉しかったことかと思います。
16か国のままだったら、これらの国はWBC本大会に出れないままだったのかもしれないのです。
◾初出場国も健闘
こうやって出場枠を増やすとレベルの低下が懸念されたりもしますが、上記の4か国では
◽チェコ:中国戦勝利、以降もコールド負けなし
◽イギリス:コロンビアに勝利、4強のメキシコと1点差
◽パナマ:台湾とイタリアに勝利
◽ニカラグア:ドミニカ共和国など強豪国揃いのプールDでコールド負けなし
と戦いぶりを見せました。
3.出場枠をこれ以上増やすべきか
それならさらに増やしたらどうなるのか。増やすとしたら、グループ分けで割り切りやすい出場国数で言うと24か国でしょう。(サッカーやバスケのW杯のように32か国にすると流石に大会のレベル低下は避けられません)
そうすると新たに出場権を得られそうなのはどの国でしょうか。
最も可能性が高いのは2022年のWBC予選で惜しくも出場権を逃したスペインとブラジルでしょう。
中南米からの移民も多いスペインは2023年の欧州野球選手権でオランダやチェコ等を退け優勝。
日系人により野球が発展してきたブラジルは2023年のパンアメリカン競技大会でキューバなどを破り銀メダル。
この両国なら現WBC出場国に対抗できる水準があります。
また2023年の欧州野球選手権で4強のドイツもWBC出場経験はありませんが、ケプラー(ツインズ)やドノバン(カージナルス)などメジャーリーガーもおり、上手くメンバーが揃えばWBCでも戦えるチームも作れるでしょう。
スペインにブラジル、ドイツが新たに出場となれば出場枠24か国としてもWBCのレベルが大きく落ちるとは限りません。
そしてドイツといえば今年、GDPが日本を抜き世界3位となった経済大国。ブラジルも2億人以上の人口を抱える大国です。
この両国はサッカーなど他スポーツが盛んなこともあり、野球が超人気スポーツとなるのは難しいかもしれません。ただWBC出場により昨年のチェコのように野球がちょっとブームとなるだけでも、チェコより人口や経済力で大きく上回る両国ですから、野球界に変化をもたらすかもしれません。
さらにこれまでWBCに出場してきた中国も、出場枠20か国のままではレベル的に出場枠を上記のブラジル等に取られかねないですが、24なら出場権獲得の可能性はぐっと高まります。
出場枠を24か国にしてドイツやブラジル、そして人口とGDPが共に世界2位の中国を確実に出場させることができたら、WBCにより市場拡大を狙うMLBにとってもプラスでしょう。
4.出場枠を24か国にする懸念
これだけ見ると、もう24か国出せばいいのではと思うのですが、個人的には一つ懸念材料があります。それは大会のフォーマットとスケジュール。24か国が出場となったら、グループ分けはどんな形となるでしょうか。
案① 6チーム×4グループ
現実的にはこれが最適解でしょうか。ただ1次ラウンド5試合となると過密日程が懸念となります。1次ラウンド4試合となった2023年のWBCでも、チェコやオーストラリアは、同組で最強(勝てる見込みが少ない)だった日本戦で少し点差がつくと、過密日程を加味したのか主力選手を途中交代させました。こういう試合が増えてしまうのは大会としても良くないでしょう。とはいえ休養日を入れ大会の日程を伸ばすと、今度はMLBやNPBなどでプレーする選手はシーズンへの影響も出てしまいます。
案② 4チーム×6グループ
サッカーのアジアカップや欧州選手権は出場24か国で、このグループ分けを行っています。それらの大会ではグループの上位2チーム+3位チームのうち成績の良い4チームが決勝トーナメント進出しています。ただこのやり方、「3位チームのうち成績の良い4チーム」というのが勝敗数で並び得失点差で決まりやすかったりもします。サッカーならそれで良いですが、得点の入りやすい野球でそのやり方は適切なのか疑問です。
両点を踏まえ、出場枠を増やすことは良いとも悪いとも言い切れません。
5.主催者であるMLBの意向
いろいろ語ってきましたが、主催者であるMLBのコミッショナーは2023年大会後、次は出場枠を増やす予定はないと語っています。
とはいえこれまでWBCは、良い意味で伝統がない大会であり、柔軟に大会の形式を変えてきました。今後もどうなるか注目したいです。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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