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小説:剣・弓・本007「ナスノの詩」

【ナスノ】

 さて、今日という一日が幕を下ろします。私にとってこの旅は美しさ「への」旅なのか。あるいは、美しさ「を巡る」旅なのか。いや、それ以外なのでしょうか? 答えは旅の中にあるのでしょうね。

 いずれにせよ、セド、ライという美しさの原石に出会った今日という日に感謝をしたいところです。

 さて、私の中の美しさを鍛錬する時刻です。今宵も詩を書いてから眠りに就くとしましょう。

 森の唄にとけながら
 川の唄によいしれて
 洗い髪の人は
 水鏡にくちづけ

 春の唄にとけながら
 春の唄によいしれて
 花飾りの人は
 誰そ彼たそがれとあいびき

 森 川 洗 水
 春 春 花 誰

ナスノ・イ・ノスナ

 出来栄えはあまりよくありませんね。魔獣と戦った日というのはどうも筆がよろしくない。
 これではあなたに笑われてしまいますね。

 そもそも、魔獣を屠るというのは美しい行いなのでしょうか? 魔獣も私たちと同じ生き物です。私たちの都合で命を奪う? もし今日のあの局面で魔獣を生かしていたら、私たちの首がまた転がる? それを阻止したのならそれは美しい?
 この命題については答えを急がないことにしましょう。
 さて、明日は『静かの森』ですね。

いつもどうもありがとうございます。