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【怪談】 粉

ワタシの妻が20代の時に経験した怖い話。

今から10年ほど前。
当時、彼女は大阪の弁天町という場所にあるアパートで暮らしていた。

いつもとかわらない1日を過ごした、ある日のこと。
真夜中に突然目が覚めてしまった。金縛りだ。

……こわい

まぶたは閉じたままだったので何も見えていないのだが感覚でわかる。
枕もと。
頭の上あたりに誰かが立っている、そんな気配がする。

ファサ… ファサ…

仰向けに寝ている彼女の顔の表面をなぞるようにかすめた。
たぶん……髪…の毛…

こわいこわいこわいこわい!
絶対に誰かいる!!
恐怖に支配される感覚が全身を走った。

もう絶対に目を開けれない!開けてはいけない!
そう思った矢先である。
何やら得体の知れない、うすく、粉っぽいものが顔の上に落ちてきた。

じわじわと高まる鼓動。
次はなに…?

さらに、パラ…パラ…と落ちてくる。
一体、何が落ちてきているのだろう?

どうしても気になってしまった彼女。
できるだけ息をころし、ゆっくりと、そして少しだけまぶたを持ち上げた。

人がいる…
暗くて顔まではよく見えないが、若い女性だということはわかった。

肩まで伸びた髪をダラリとたらし、
寝ている妻の正面、つまりは顔の真上からこちらを見下ろしている。

そして…
ポテトチップスをたべている……

ぅわぁ……
不快感と恐怖がまざりあう何ともいえない感情。
彼女はそのまま静かにまぶたを閉じたそうだ。

その後もパラパラ落ち続けるポテトチップスの“粉”、もとい“食べかす”
イヤでイヤで、はやく顔をそむけたいのだが体はいっこうに動かない。

怖い半分、食べかすを落とされるイヤさ半分。
そんな不快感を抱いたまま、気がつけば朝だったという。

布団にポテトチップスの食べかすはおちていなかった。


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