【インド回想記①】インドで人生観は変わるのか
オッチャンたちの汗と視線、響くクラクション、正体不明のお香の煙、そしてフンの香りに洗われて
「インド行ってきた」と話すと、「おお、人生観変わった?!」と80%くらいの確率で聞かれます。けれども、こう聞かれたとき、答えに窮する自分がいます。なぜなら、「世界が、180度違うように見えるようになった!」なんて劇的な変化は、訪れなかったから。
この定義に従うなら、「世界の見え方の角度が、2~3度変わること」も「人生観の変化」に当たる、と思います。そして私は、この話を思い出した時、「人生観の変化」に対しての、もっと自分に馴染む答えを見つけました。
今の私が思う価値観とは、単なる「その時の世界の見え方」ではなく、自ら及び他の何かによって育てられる木であり、むくむく動く、成長中の不格好な巨人です。こう考えたとき、私にとってのインドの滞在は、「人生観を変えた」ものでは無いけれど、「価値観という木に、巨人に、養分が与えられて成長させたもの」だったと言えると思います。
私は、人生観を変えるためにインドに行ったわけではありませんでした。ただただ、ムンバイメンバーに自分が感じた強烈な愛着の原因を知りたくて、インドという国に興味を持ち始めて、加えてインドの音楽やダンス、ノリが大好きになって、熱量のままに動いていて気が付いたらインドにいた、というだけでした。人生に迷っていたわけでも、行き詰まりを感じていたわけでもありませんでした。そんな私にとって、インドは想像を超えていました。あの匂いも、視線も、エネルギーも、人の渦も、そこかしこから溢れている生の力も、全部。ずしんと重くて熱くて、軽やかで温かくて透明な、数々の忘れたくないインドの記憶、これらは今の自分の肥料となり、忘れられた後も私の血肉になっていると思います。
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