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箱庭ダンス 第一章「物語の始まり」その1
第一章 物語の始まり その11.
雲の上まで伸びるビル群に囲まれたこの場所は、今となっちゃここにしか無い“自然”ってものがある。
この街は確かに超高層ビルがあり、空中を走るハイウェイがあり、(空飛ぶ車はまだまだ夢物語だ)太陽光と核融合で膨大なエネルギーが産み出され、ロボットの労働力により人は働かなくて良くなった。“過去”からしたら“理想郷”なんだろうが、100エーカーの街の外は“砂漠”だ。
箱庭ダンス 第一章「物語の始まり」その2
第一章 物語の始まり その24.
雨上がりの“森”で両手を上げた女に見とれているアキムはどこからか流れてくる音を聞いた。
流行りのハードなリズムのロックではない。
かといって昔のロックやポップスとも違う。
微かなモスキート音(この森にだけ蚊はいる。街は乾燥と暑さで虫は全部死に絶えた)に似た鼓膜を揺るがすような、路面電車(周囲が砂漠で地下鉄は無い)で設定をミスった時代遅れの“外耳イヤホン”から
箱庭ダンス 第二章 「二人の物語」その1
1.
何でおーお(名前がよーことはわかったが、おーおと呼んでいる)をオレのアパートに連れて帰ったのかは、オレにもわからない。
ただ、なんとなく“物語の始まり”だって思ったんだ。
オレが読んでいる“紙の本”で物語の始まりは“男の子が女の子に出会う”というものなんだ。だから、オレもおーおに出会って何かが始まるんじゃないかって思ったんだ。
おーおはサイボーグだった。つまり、“脳ミソ以外は全部機械”っ
箱庭ダンス第二章「二人の物語」その2
4.
闇医者は動かずに床に横たわっている。生きているか死んでいるかはわからないが、とにかく彼は街のスラム街の寂れたクリニックではなく、この場所にいる。同じように拉致されてきたのだろう。
つまりは、おーお(くどいようだが、サイボーグの女の名はよーこだ)は何か重要な情報を知っているようだ。拉致してまで知りたい情報をアキムに話をしているかどうかが重要で、他は死体(闇医者が生きていないとしたらだが)が増
箱庭ダンス第二章「二人の物語」その3
7.
おーおが話をしたDanse macabreという店は、アキムのようなスラム街に住む若者にも知られている実に“悪名高き”店だ。
単純な性的サービスをする場所ではない。所謂高級娼婦で、年収が100億クレジット(アキムが毎日仕事をしても稼ぐのに300年はかかる)を超えるような人間が遊ぶ店で、そこの“踊り子”は街の統治者や企業重役などしか知らない情報を知っていて(理由は簡単。コトを終えてのピロー