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伊達巻き

 数の子も昆布巻きも煮しめも、重箱の中におさまった食べ物はどれも好きだけれど、特に愛らしく思えてしまうのは伊達巻き。わたしは伊達巻きのことが大好き。どういうところが好きなのか、甘い味? ”伊達”という名の通り、花形の存在だから? フリルみたいに、なみなみっとしているから? 伊達巻きについてちょっと調べてみると、「伊達巻きとは、卵料理のひとつ。長崎においては、カステラ蒲鉾と呼ばれる」
 カステラ蒲鉾! 
 その言葉にぴんときました。卵と材料を混ぜた時のうす黄色だとか、オーブンから取り出された時の焼き目。甘い、やわらかい、あたたかい、それは幸福がそろっている風景です。エプロン、コック帽、クッキングペーパー。長崎のお土産通り。アメリカの、田舎の、キッチン。チェリーパイ……。
 いつの間にか遠くまで次々と、風景が連想されていくから、わたしは伊達巻きのことが大好き。いついつまでも重箱の中で、おすましして光っていてね。

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お正月の一週間、たべものエッセイ
1月2日 / 伊達巻き

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