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【詩】公共の詩(うた)

「詩は、勝手なおしゃべりなのかな」
その時の気分、感情のゆらぎ、ただの感傷。
世の中へのうらみつらみ
そんな風なもの
私的に吐き出して、ささやかな共感を求める
とるに足りない言葉なのかしら

いいや、詩は公共に向かっている
詩は広場へ
もっと言えば、宇宙の交響にさえ向かっている

公共を無視した言葉はチリのようで、宙に舞って消える
いや、マイクロプラスチックのように
いつまでも残留し、この世界を汚し続ける

詩は、公共に向かって歌われるけれど
いいこと尽くしではないよ
悪いものだって生む
詩人は、そのネガティブな結果も引き受ける
その時、詩人がいる

詩人はいつも世界に挨拶あいさつを送る
「おはよう」
「大丈夫かい」
「そういうこともあるさ!」
「メリークリスマス🎄」
「愛しているよ」

喝采かっさいされることもあれば、
陰口を言われることもある
「詩なんて、たわごとさ」
「意味がわからない」
「あいつは売れてるけど、見た目は良くない」
「自己満足」
「ありきたり」
それでも、詩は続く
そこに詩人がいるかぎり……

公共の中にことばを置く
世界に開かれた存在であり
自分の声で歌う者

それは職業としての詩人。

職業としての詩人、それは
どんなに小さくても
この世界の一部を作り続ける者

そう、大工や靴屋や仕立て屋と同じように
また、食堂や喫茶店やレストランで
食べ物が人の体と心を作るように

詩人も言葉によってこの世界を作り続ける
この世界の夢を編み続けている


* 詩は「ポエム」とからかわれたり、ただマイナーな文学ジャンルとみなされたりすることもあります。けれども今、詩を求める人は増えていると感じます。

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