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【詩物語】太陽と月と星の楽器

ある楽器工房を訪ねた時のお話です。

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私はいっとうさんの工房で、ルネサンスギターやウクレレに触らせてもらった。

いっとうさんは楽器の製作者で、ルネサンス時代のヨーロッパのギターや、ポルトガルからハワイに持ち込まれた楽器であるウクレレを作っている。

その楽器を試奏させてもらうと、どれもすぐに馴染んでくれるような感じがあった。
音色だけでなく、見た目や肌触りもいい。
日本の木があちこちに使われているという。

私があるルネサンスギターを手に取り、さっと鳴らしてみたところ

(神鳴り)

という言葉が思わず、浮かんだ。

音の鳴りに、雷のような衝撃を受け、神々しい力を感じた。明るく澄んだ響き。

「それは表面板が屋久杉でできていて、側面と背面はかやの木です」

屋久杉は、屋久島の杉。かやの木は柔らかい日本の木だ。

日本は世界でも類のない気候に恵まれている。高温多湿で、しかも四季の変化がある。

ヨーロッパで昔、演奏されていたルネサンスギターには、日本の木は使われていないはずだが、日本の風土には日本の木でできた楽器が合うということもあるかもしれない。


工房の奥の部屋に案内してもらった。
木の棚にあるウクレレが気になって、「これは」と僕が聞くと

「ああ、それは昔に作ったウクレレです。
ボディは神代欅(じんだいけやき)でできています。
2600年くらい前に、土砂に埋まり、
空気から隔絶されて腐敗せず、そのまま残った欅を使っています」

触ってみると
(音がしない)

「そうなんですよ。
ボディが音を吸収してしまうのかもしれません」

ポロポロというより、ポコポコというのか
弦をはじいても
はじくそばから音が吸収されて響かない。

かえって神秘的だった。


結局、この二台の楽器を買うことに決めた。

いっとうさんがストラップ(楽器を肩にかける紐)を二本持ってきてくれた。
「どちらかひとつ、サービスで付けましょう」

「では、この青い方」
僕が選んだのは小さな星が散りばめられたストラップだった。

楽器とストラップを、勝手に「太陽のルネサンスギター」「月のウクレレ」「星のストラップ」と名付けた。

手前が「太陽のルネサンスギター」

旅のお供に申し分なさそうだ。

吟遊詩人としての活動がはかどるとうれしい。


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