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優しさの歌

風がふいている
頬を撫でるように
葉ずれの向こうから
ふーふーと喜んでいる

思い出をそっとなぜていく
忘れないよ あの日のことも

打たれる雨がやがて上がり
ぬれた新緑が
温かそうに滴っている
ゆったりとみみずが這い出し

そっと歌っている
誰もが声になって
石の隙間から
山々の頂きのタクトを眺めて
降らない雪よりも白く

みずからの心に問う
友はいずこ
今ここに
会いに行くよ 君のところへ

すべての仲直りはすんだと
カナブンは言う
みつばちが祝祭を奏でるだろう
“僕らは虫になった”
どうかくもを仲間はずれにしないで

峰々を流れた水は はるか水田を
ゆく 遠い海へ向かって
川は水を運ぶ

しゅるしゅる しゅるしゅる
織り物をはぜるように
鮭の稚魚を連れて
メダカの学校を横目に
君に会いに行くよ ブラボー

母なる海はどこ
父なる海はどこ
くじらは水の渡り
神々の使者とシャチ

大わしの背に乗って
ぼくらのソウルははばたく
八咫烏(やたがらす)のくちばしが大地をつついている

ショーウィンドウに映るふたり
手をつないでふたり
水底を歩いて太陽の道に出た

みんなで手をつないで
星の林を渡る舟
渡し舟は月の舟

あなたに会いに行くから
夜に沈んだ北の海、南の町
遠い所なんてない ないんだ

触れた手を忘れない
今度は僕が赤子をすくい
抱き止める 昼も夜も
この手で抱きとめるだろう



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