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ゲシュタルト・グループセラピー(1)

2023年7月に東京のオリンピック記念青少年センターで開催された日本ゲシュタルト療法学会第13回学術大会に招聘されたピーター・コールさん(とその妻のデイジー・リースさん)の著書『ゲシュタルト・グループセラピーにおける新たな方向性ー関係性の基盤、本当の自己』の読書ノートです。

NEW DIRECTIONS IN GESTALT GROUP THERAPY Relational Ground, Authentic Self PETER H. COLE &Y DAISY REESE Rutledge, 2018

学術大会での講演とワークショップ、大会後の二日間にわたるアドバンス・ワークショップに参加しました。
日本で行われているゲシュタルト療法は、従来はどちらかというと「パールズのスタイル」の色合いが強かったと思います。いわゆる「ホットシート」を使って、「グループの中で個人セッションを行なう」アプローチです。
最近では、ローラ・パールズの流れの「関係対話アプローチ」も紹介されるようになりました。
ピーターたちのグループのスタイルも、どちらかというと関係論的なアプローチに近いと思われます。
実際に体験したグループは、参加者が多かったこともあり、フィッシュボウル形式で行われました。
真ん中に10名ほどのグループメンバーとピーターが輪になって座り、エンカウンターグループのように対話を進めていくのですが、要所要所でピーターが介入して、ときにはエンプティ・チェアも提案する、といったあたりが、ゲシュタルト的でした。
それは、グループの場や関係性にサポートされつつ、自分の内的な課題のワークも深まっていくような時間と体験でした。
私たちの研究プロジェクトは、このときの体験をもとに始まりました。

導入 ゲシュタルト・グループセラピー:21世紀の心理療法へのチャレンジ

・GGTのホーリスティックで、場-中心のアプローチによって、セラピストはセラピーグループに広がりと深みをもたらせることができる。GGTはセラピーグループに生じる社会的・政治的関心に広がっていくし、グループメンバーの情緒的な成長と発展をサポートする方向に深まることもできる。
・ゲシュタルト療法は、歴史的には第二次世界大戦前のヨーロッパの知的生活の豊かなタペストリーから発展してきた心理学のヒューマニスティックなシステムであり、そのルーツには先進的な精神分析、ゲシュタルト心理学、場の理論、現象学、そしてマルティン・ブーバーの対話の哲学がある。
・本書の目的のひとつは、ゲシュタルト・グループ・セラピーのアプローチを記述し、説明し、コミュニケートすることだ。
・二つ目は、ゲシュタルトのアプローチに詳しくないグループセラピストたちに、ゲシュタルト療法の理論の素晴らしさを提示したいということ。

この不確かな時代の心理療法

・特に生態学的に、私たちはかつてないほど不確かな時代に生きている。
・私たちの存在のまさに基盤であるわれわれの星は、大きな変化を遂げつつあり、人類の未来も確かなものではない。
・セラピストの仕事は、クライエントが自分の人生をきちんと生きることを助けると同時に、人類の未来が危機に瀕しているという現実に直面することをサポートすること。
・これが、21世紀の心理療法に逆説的な変化をもたらしている。
・生態学的、社会的な観点のいずれからも、私たちはますます不確実になっていく時代を生きており、心理療法にも新たな倫理的・臨床的課題が突きつけられている。
・貧富の差の拡大。
・アメリカやヨーロッパでは、独裁的で国家主義的な指導者たちが台頭している。
・大量破壊兵器が拡散し、宗教的な過激主義が台頭し、生態系の危機が世界の資源を脅かす中、不安定で歪んだ倫理的、宗教的、民族的なイデオロギーを生み出す状況が加速されている。
・こうした環境・政治・社会情勢の中でクライエントに関わるってことは現代の心理療法にとって大きなチャレンジ。
・スピリチュアルな次元では、クライエントは、意味、他者と繋がること、より大きな全体につながることを求めている。
・カウンセリングルームにおいて、この危機的な社会的・生態学的変化の時代において、クライエントが繋がりや意味を探すことをサポートする役割を、私たち心理療法家は担っている。
・伝統的な宗教が衰退している現代において、心理療法グループに来るという儀式は、クライアントの人生にとって非常に有意義なものとなりうる。そこでは、脆弱性を安全に共有し、真実を語り、意味を探すことができる環境を提供することができる。
・科学的に現実の性質をどう理解するかということも目覚ましく変化してきている。われわれの世界観は、separatenessなものからrelationalityにシフトしている。
・GGTは、理論と方法論において、極めて関係的であり、科学や心理学で大きな変革をもたらしている関係論的あるいはシステム論的な生命観によく適合している。

#カウンセリング
#心理療法
#グループセラピー




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