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【吉本興業×ゲッティ】今、何をすればウケる?時代の変化で、「芸人の売れ方」も変わってきた。

ライフスタイルが大きく変わったこの1年。さらに、SNSの影響力も追い風になり、消費者の価値観や購買行動にも様々な変化をもたらしています。

これからの時代、求められる“力”とは?

吉本興行株式会社の専務・泉正隆さんは、「芸人の売れ方が変わってきた」と分析します。

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ゲッティイメージズ(以下、ゲッティ):ゲッティイメージズは、約32万人の契約フォトグラファー・ビデオグラファーとともに、企業の広告やプロモーションに使われるようなビジュアルを制作しています。

消費行動に影響を与える要素と、そのビジュアル傾向について調査・分析する専門のチームもあるのです。そこで浮かび上がってきた重要なキーワードは、「リアリティ」です。消費者の価値観は変化し続けていますが、リアリティに価値を置く傾向は一貫して高まっています。購買行動におけるYouTuberの影響力が強くなっているのも、身近で、リアルにイメージできると思われているからです。

Visual GPS ※による消費者調査結果:
企業は多様性を大切にするべきだ 50%
企業はあらゆる体型やタイプの人々を広告で使うべきだ 61%
※ゲッティイメージズによるビジュアル分析レポート

芸能界も大きな変化の中にあると思うのですが、今の時代に泉さんは何が大切な力だと考えていますか?

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吉本興業・泉正隆専務(以下、泉):確かに、昔と比べて吉本興業の芸人の売れ方が変わってきています。

例えば、私が30年前にナインティナインやロンドンブーツ1号2号を担当して東京進出を本格化させた頃の吉本は、まだ、タレントの数も少なかったです。それが今では約6000人。所属タレントの人数も増えましたが、同じようにメディアの数も増えました。テレビ以外にも、YouTubeもあれば、TwitterをはじめとするSNSもあります。これは、芸人たちの活躍の場が広がることを意味しています。

そこで大事になってくるのが、時代に適応することと、自己プロデュース能力です。今、どんなことを言えばウケるのか、適切な表現や発信する内容、メディアの特性を瞬時に見極める力が必要です。

私たちの仕事も、芸人さんの新たな活躍の場を創造することと、所属するタレントたちが様々な分野での「やりたい」ということをサポートすることに重心が変わってきていますね。今は、リアルイベントである劇場出演や、テレビ以外にも多くの仕事ができて、皆さんが考えている以上に、活躍している芸人は増えてきました。

ゲッティ:そこで聞きたいのが「住みます芸人」というプロジェクト。立ち上げ当初から、泉専務が主導してきました。
地方に住む方々にとって、もっとも身近でリアルな芸人になっていますよね。これも、時代の変化を先駆けるような取り組みだと思うのですが、どのように始まったのでしょうか。

キャプチャ

:弊社会長の大崎(洋)が、若者が東京に一極集中し、地方の元気が失われていることを問題だと思い、これを解消したいと思ったのが始まりです。
東京や大阪に出てきて、それなりに力はあるけれど、知名度のないタレントに声をかけ、その中で地域を盛り上げたいという強い思いを持った芸人達を移住させ、地域を活性化したいと会長は言うのです。

最初に聞いたときは...こんなこと言って良いのかわかりませんけど、「ほんまに大丈夫なんか」と内心思ったものです。1か月後には、芸人を全国47組選び、芸人と一緒に地域活性化を担う「エリア社員」も47人地元採用して、始まったのが2011年4月からですが、最初は営業に行っても手応えがなかったものです。

先方の本音は「売れていない芸人よりも売れている芸人さんを呼びたい」ですが、スケジュールやギャランティなど条件が合わないと説明するほかなかったですが、成功事例が出てから変わりました。

ゲッティ:それはなんですか?

:愛知県犬山市に「国宝犬山城」という素晴らしいお城があります。そこで、芸人が人力車を引きながら城下町を案内する「お笑い人力車」という事業が始まったのです。大きかったのは、これが2011年、つまり開始した年に始まったことです。担当した芸人は、劇場なんかでは正直に言って、元気はいいけどウケてないなと思っていました。

ですが、人力車を引いて走り出すと、元気いっぱいに「殿、姫こちらが〜〜でございます〜」と観光客を案内するのです。これがお城の風景や町並みとマッチして、大きな話題になりました。

【愛知】小鈴木横顔


地元新聞でも地元テレビでも大きく取り上げられて、観光客にも大好評です。売れていない芸人でも仕事が作れ、かつ地域の活性化につながるという成功事例となって、今では全国各地の観光協会さんや行政、地元の企業さんとのお仕事につながりました。

この「あなたの街に住みますプロジェクト」は、コロナ禍でイベントが減ってしまった影響で2020年は初めての赤字となってしまいましたが、成功事例ができたことで、当初からは黒字が続いていました。

ゲッティ:ただ身近でリアリティがあるだけではなく、笑いが持っているポジティブなパワーをうまく伝えていると思いました。今、私たちのビジュアルでも企業の方から求められているのは「リアリティ」に加えて「ウェルネス(健康)」です。
特にウェルネス経営は一つのトレンドになっており、多くの企業が健康をイメージできるビジュアルを探しています。

Visual GPSによる消費者調査結果:
最も大事なこと 家族のこころと体の健康 63%
2番目に重要なこと 金銭面での安定 57%
3番目に重要なこと 自分のこころと体の健康 50%

笑いも、ウェルネスの源になると思います。「住みます芸人」は、その意味ではウェルネスを地域に届けている社会貢献活動でもありますね。

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:それは嬉しい評価です。私たちは2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさん(バングラディシュ出身、経済学者)とコラボして、「ソーシャルビジネス」を展開しています。

「住みます芸人」は、2021年度に開局する地域創生のためのBS放送、「BSよしもと」では、地域の課題を一緒になって解決していく番組を担ってもらいたいと考えています。彼らの中には、地域のニュース番組で仕事をしている芸人もいます。地域の課題をよく知るだけでなく、ユヌスさんの提唱する社会課題解決ビジネスにつなげるような形で解決していってほしいのです。

ゲッティ:私たちもビジュアルで伝えようとしているSDGs(持続可能な開発目標)を広める活動もしていますね。国連ともタッグを組んでいますし、「SDGs-1グランプリ」では、漫才でSDGsを伝えるという発想に驚きました。

:私たちが国連から評価をいただいたのは、「SDGs」という言葉が日本で広がる前から、エンタテインメントの力を活用して、社会に広く届けたことにありました。笑いを通じて、聞き慣れない言葉が広がり、知られるようになればいいなと思っていました。

ゲッティ:そういう発想から学んでいこうと思います。ゲッティのビジュアルを吉本の芸人さんたちにも積極的に使ってほしいですね。

:会社としてはお付き合いがありますが、芸人個人が使うとなるとどうでしょうねぇ……。使うのはええけどお金かかるで、と言うておかないと(笑)

ゲッティ: YouTuberの方なんかによくご利用いただいている、個人プランもあるんですよ。そっちは法人価格よりはお求めやすいです(笑)。
笑いの枠にとらわれない発想で、新しいニーズを掘り起こしてきたことがわかり、勉強になりました。ありがとうございました。

Visual GPS(ゲッティイメージズのビジュアル調査レポート)はこちらからダウンロード可能

▼参考リンク
よしもと住みます芸人
ゲッティイメージズ
VISUAL GPS


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