マウンティングの怪

マウンティング【mounting】
サルがほかのサルの尻に乗り、交尾の姿勢をとること。霊長類に見られ、雌雄に関係なく行われる。動物社会における順序確認の行為で、一方は優位を誇示し他方は無抵抗を示して、攻撃を抑止したり社会的関係を調停したりする。馬乗り行為。(大辞林 第三版より)

しかしここでいうマウンティングとは、“自分のほうが相手よりも優位であるということを示すための主張・行動”のことである。霊長類の中でもヒト科ヒト属ヒトによく見られる行動だ。

ヒトはたいへん精神の弱い生物なので、自分の正しさを常に確認して安心せずにはいられない習性をもつ。自分の正しさを主張するだけならまだ良いのだが、“相手より自分の方が優れている”と誇示することで自分を肯定するのでたいへんたちが悪い。

ヒトは幼い子供から老人までも日夜マウンティングをし合っている。おもちゃの数、夏休みの旅行先、進学先のレベル、就職先のレベル、配偶者のレベル、子供の進学先のレベル、子供の就職先のレベル、子供の配偶者のレベル、孫の進学先のレベル、孫の就職先のレベル、孫の配偶者のレベル…数え上げたらきりがない。物心がついてから死ぬまで、ヒトの一生は常にマウンティングと共にあると言っても過言ではない。哀しい生き物である。

このような哀しきマウンティング合戦にヒトが明け暮れている隙に、我々が地球を侵略してしまおうという極秘計画がある。そのために私は秘密裏に地球に潜伏しているのだが、美しい自然や豊かな資源があるこの地球は哀しきマウンティング生物たちにはもったいない惑星だとつくづく思う。

我々はヒトのように他者を否定して自己を肯定するような真似は決してしない。マウンティングしなければ生きていけないような弱い精神を持ち合わせていないし、ヒトよりも知能のレベルが高いので、あのような生産性のない哀しきマウンティング合戦に明け暮れることはきっとないだろう。

我々はヒトよりも優れた地球の住人となれるに違いない。なぜなら、他者と比べて自らの優位性を説くなどという愚行を我々は決してしないからだ。



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