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卒業式II〜不器用ですから〜

どうも。

KONGです。

卒業式を行う学校がチラホラ。

生活環境がガラリと変わる卒業生達。

本日は青春ラブコメにはほど遠い、高校生KONGの卒業式でのお話。


3月の半ば、
いよいよ卒業式までのカウントダウンが始まる時期。

「あと、数日でこの学校生活から卒業か…。」

などと思いながら、快調にペダルを回し学校に向かうKONG。

その日の行事は卒業式の予行練習。

学校に到着し、ウダウダと残りの学校生活を過ごしながら迎えた予行練習の時間。

体育館に向かう為、卒業生が廊下に並ばされているなか、担任がKONGを呼んだ

「カイフキ!」

怒られる心当たりはないが、少し構えてしまう。

しかし担任はニコやかになり、こう言ったのだ

「私も意外だったんだが、

アンタ、

皆勤賞らしいわ。」

なぬ!!

高校生活唯一の賞。

近くでその話が聞こえていたヤツらは、

『マジかよ。』

『え!休んだ日あるでしょ?』

『そーいえば毎日見た気がするけど…』

(心地よい反応だ。)

さらに『皆勤賞組』は皆んなと別の列に着席し、式の最中には1人1人呼ばれその場で立つ事を伝えられた。

(ふふふ、目立つポイントが一つ出来た。)

予行練習は難なく進行して、皆勤者が呼ばれる

「カイフキ ユウイチロウ」

「ッッッはーいっ!!」

箇所箇所から

「マジかよ!w」

「嘘ぉ!w」

クスクス笑いが聞こえて来たが、相変わらず心地よい。

目立つ場所があればあるほど後輩達にアピール出来る。

そう。

全ては、

卒業式後の

「先輩ボタンください!」

の一言をもらう為。


こうして、迎えた卒業式前日。

友人達と自転車で並んで下校をする。

「明日で最後かぁ…。」

誰かが言った。

少し寂しくもなるが、あまり実感はなかった。

「カイちゃんが1番使ったあの公園のトイレも寂しがってとるやろぉ!」

その一言から、KONGはハッとする!

「ちょい!!トイレにお礼を言いに行くわ!」

思い立ったように、KONGは公園のトイレに向かう事を伝え一目散にペダルを漕ぐ。

「え!」

「マジ?」

一行は面倒くさがる者もいたが、なんやかんやで着いてきてくれて公園に到着。

"パリパリ"と音を立て、公園の地面に散らばった何かをタイヤで潰しながら進み、トイレの前で自転車を止め、

「今までありがとう!トイレ!」

感謝を伝え、再び自転車に跨り走り出す。

なんて清々しいのだろう。

しかし不思議なことに、あれほど快調に進んでいた自転車は、嘘のように段々ペダルが重くなっていき、最終的には"ガタンガタン"とバランスが取れなくなっていくのだった。

タイヤのパンク。

公園でパリパリ踏んでいたのはガラスだったのだとそこで知る。

残念ながら、その日は治す時間がはなく、翌日の卒業式は徒歩での通学を一瞬覚悟したが、幸いな事に一緒に帰っていた友人の"松ちゃん"(仮)が学校近くまで自転車の後ろに乗せてくれる事になり一安心。

トイレの神様から『最後まで気を抜くな。』と有難い教訓をもらう形となった。


卒業式当日。

後輩達にもKONGの印象を残す事に成功し式は無事終了。

あとは、最大のミッション【先輩ボタンください!】を残すだけとなった。

渡り廊下で男子数名が座り込むが、寄ってくる後輩は男ばかり、

泣き出しそうな表情で1人が後輩に言う。

「ちょい!
女子から話かけられるの待っとんやから!
早よ帰れ!」

笑ながら後輩達は去って行ったが、待てども待てども誰も話かけにこない。

と、

そこに下校仲間の"ユウタ"(仮)が現れ

「あっらぁ〜?カイちゃん達まだ帰らんの?」


姿が見えないと思っていたユウタを見上げたら、制服のボタンどころかネクタイすら無なくなっている。

KONG達は震えた。

「そんな事ある?」

「自分で捨てたんだろ?」

"いやいや"と手のひらを横に振りながらユウタがKONGの横にドカッと座り込むと、
あら不思議、
青空の下なのに部室と同じ匂いがしていた渡り廊下に初の女子が駆け込んでくる。

「え、えっと、

先輩!ボタン…」

ユウタの前に友達数名に背中を押された女子が立ったが、ユウタの制服を見て最後までセリフを言わず切ない表情をしている。

ユウタ本人はヘラヘラしながらも少し困っている様子だった。

そこで、

熱くなる拳を必死に抑えながらも、居ても立っても居られない2人の漢が立ち上がる。

KONGはブレザーを脱ぎ、松ちゃんに渡す。

松ちゃんがKONGのブレザーをユウタに着させて、

「この服から、渡してやるんだ。」


それを聞いたユウタがブレザーのボタンに手を掛け…

「あ、大丈夫です。」


食い気味の"No Thank you"

さっきまでの表情はどーした?

『3年間KONGを暖めてくれた制服』『レジ袋』と同じ扱いをされた瞬間だった。

女子数名に慰められながら去っていく女子。

男子数名に慰められながら制服を着せられるKONG。

ふと見上げた校舎からは

『イケメンに場所は関係ない』

と、最後の授業が終わった。


肩を落としながら、松ちゃんの自転車に乗り家に帰るKONG一行。

制服が軽くなり和かな男もいれば、ネクタイや、ボタンがなくなる男、完全装備のまま下校する男達での最後の下校時間。

「マジ実感ねぇなぁ」

「マジ最後やなぁ」

各々思っていた事があるだろう。

「これで松ちゃんに乗せてもらうのも最後だぁ」

と、KONGが言った瞬間。

ガキャン!!!

「◻︎◯△⭐︎※Σδ!!!」

強烈な痛みが股下に走る。

股間を押さえて飛び回るKONG。

「えぇぇぇぇぇぇーーー!!ww」


ユウタが地面を指差す。

どうやら、2人乗りで後ろに立つ為に付けていた『ハブステップ』が折れ、そのまま後タイヤが股間に直撃したのだ。

結果。

高校生活最後は自らの足で帰る事となり、

その後の人生では、トイレの神様からの教訓『最後まで気を抜くな』を噛み締め、大人の階段を登るのでした。

それでは!

股!

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