恐ろしい夜の出来事【ブチ屋】

ある夜の事です。

その日は少し風が吹いていました。

タバコを一本吸おうとたまに行く喫煙所に向かったのですが、遅い時間だったので電気も消えており、自販機の灯りだけが光っていました。

普段は電気も付いているのに何故…

いつもと違い、怪しげな雰囲気を漂わせたその場所に怖いなぁ怖いなぁ、と思いながらその重い足取りをゆっくりと進めていると…


何か音楽のような物が聞こえてきました。


そして早口で何かを言っている声。


恐る恐ると様子を見ながら入ってみますと、

なんとそこには、3人組の若者があぐらをかきながら見事な三角形を作って座っていました。

音楽と声の正体は彼らがYouTubeでビートを流しながら、フリースタイルのラップバトルをして遊んでいた音でした。

僕は気付かれないようにコッソリ入ったつもりでしたが、そこは狭い喫煙所。案の定彼らは僕の存在に気づき、3人のうちの1人がこう放ちました。

「やべっ、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい」

恥ずかしいならそんな所で座るな。
100%灰が落ちてる喫煙所の地面にようケツ付けれるな…と思った。

そしてもう1人が楽器を背負った僕の格好を見て一言。

「あ、でもバンドマンだからこういうの分かってるよ、大丈夫」

ん…?
分かってる人に聞かれる方が恥ずかしくないですか…?

しかし彼らはビートを止めずバトルを続行。

僕は面白くなってきてそのラップに耳を傾けていました。

しかし出てくる言葉の一つ一つがもう下ネタばっかり。

ここには書けないようなドギツイやつばっかり。

唯一書ける内容だと、
友達の女の子の名前を出して、あの子がかわいいだなんだ言ってる感じです。

そしてまた下ネタに走る。

それにしてもまあ、彼らはとても楽しそうだ。

音に乗せて言葉を楽しむ。

もしかしたらこれは、
音楽のあるべき姿なのかも知れないな。

ラップの番組が流行ったり、ラップを取り入れる歌が多く配信されたり、令和はラップを極めたい時代なのかも。

ラッパーがテレビ等で演奏している姿をカッコいいと思ったら、

YouTubeに落ちている音源で誰でも何処でもフリースタイルバトルができる。

喫煙所でもね。

そんな事を考えてはちょっと微笑んでいる自分もいる。

貴重な経験でした。

いい時代に生まれたなぁ。



いや、冒頭の恐ろしげな雰囲気とは打って変わって最後はちょっとほっこりすんのかい!

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