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先輩!頑張れ!!!

あ。

どうも。

KONGです。

思い出というものには、様々な形がある。
楽しかった思い出。
辛かった思い出。
そして・・・“辛かったけど楽しかった”思い出。

KONGが中学生の時、そんな相反する感情を生み出す行事があった。

その行事には『一夜漬け』『ラッキーパンチ』というものは存在しない。

必要なのは、日頃の体力。集中力。当日に至るまでのコンディション。

まさに人生の縮図と言っても過言では無い。

その行事の名はーーーーーーー


マラソン大会。




中学時代のKONGは、長距離走が苦手だった。

バスケ部だったので、毎日のようにグラウンドの外周を走らされてはいたものの、持久力に難があり、なかなかタイムが縮まらなかった。

(・・・このままだとまずい。)

中学2年のKONGは焦っていた。

もうすぐ、毎年恒例のマラソン大会の時期なのだ。

KONGの所属していたバスケ部にはルールがあった。

毎年マラソン大会に出場した生徒達が、それぞれ何位だったかが記録されていて、2年生、3年生の時に、去年の順位を下回った部員は、下回った数だけ、マラソンコースのトラック(1周1キロ)をドリブルをしながら走らなければいけないという、過酷なノルマが課せられていたのだった。

1年の頃はその事を知らず、心臓が破裂しそうなぐらい頑張って走った記憶がある。

そんな去年の自分が、今年の敵。

おまけに本番はトラックの内側から、先輩や後輩、さらに女子達までが見ているのだ。

誤魔化しがきかない。


マラソン大会の時期になると、体育の授業は本番で走るトラックのある大きなスポーツ公園に移動し、本番では5周(5キロ)走るところを、授業では少し少なめの3周走る。

この授業が嫌で嫌で仕方がない。

しかし、走らなければ本番は完走すら難しいし。

男なら、なるべくスマートに走る姿を女子や可愛い後輩達に見せたいじゃないか。

水泳の授業で披露する『クロール』の息継ぎの顔同様、酸素を求めるKONGの顔は、芸術的ではあるがスマートとはかけ離れていたので、練習を積み重ね、余裕を持って走れるペース、スピード、1番大事な『表情』を作る作業に日々に明け暮れる。

そして迎えた当日。

1年男子、女子と走り終わった後にいよいよ2年男子がスタートラインにつく。

至る所から会話が聞こえる。


『一緒に走ろうぜ。』


『いやいや、本気なんてださねぇよ。』


『俺、逆走しようかなぁ〜』


ここで騙し合いは既に始まっている。

気を紛らわそうとする者や、周りの人を巻き添えにする者。

この状況で

『一緒に走ろうな。』


程、信じていけない言葉はない。

自分に自信がない証拠だ。

KONGは静かに近くにいたバスケ部に声を掛ける。

「カツオ。ゆっくり走って一緒に外周ドリブルやらん?」


そう。

KONGも自分に自信がないので一緒にペナルティーを受ける仲間をさがすのだった。

「貝ちゃん去年何位?」

少し考え

「確か…70位…くらい」


「俺は30位くr」

(パーン)


なぬ!!!!!!

返答を聞く前に一斉にスタートが始まった。

カツオは30位くらい…。

だとすると、スタートから首位の軍団に入るのは必然。

心の整理がつかないまま、KONGは80%くらいのペースでダッシュをする。

開始500メートル地点。

KONGは限界に達していた。

息は上がり

足はもつれ

お腹が空いていた。

ずるずると先頭集団から離され、カツオの背中がどんどん小さくなっていく。

残り4500メートル。

KONGの、自分との戦いが始まった。


どれくらい走っただろう。

トラックの中から聞こえる声援に紛れまいと、バスケ部の先輩が叫んだ。

「貝吹ぃ!!今50位くらいだぞぉ!!」



「…はっ…はっ…はっ…マ、マジっすか…!」


去年70位だった自分が、いつの間にか50位になっていたなんて、自分でも驚きだった。

この調子で抜かれなければ、ペナルティ回避だ。

しかし念には念を入れておきたい。

もう1人くらい追い抜けないだろうか。

そんな事を考えていると、ふと目の前に、少しペースを落として走る生徒を見かけた。

カツオだ。

両膝から出血をしている。

どうやら、いつの間にか転倒したらしい。

カツオはイケメンで、出血してもなお走る姿に女子達も

「先輩!!頑張ってくださぁい!」


「頑張ってぇぇ!」


と、泣きそうな表情で応援している。

正直うらやましい。

しかしそれにも増して膝が痛そうだ。

カツオに並び、一声かけてやる事にした。

「ぜぇ…ぜぇ…
もう…リタイアしちゃえよ…。」

カツオは答える。

「ゼェ…先生は無理するなって言うけど…

ゼェ…一応…最後まで走ろうかと。」

男らしい。

モテるわけだ。

カツオの背中をポンと叩き、一言。


「さらば!!!」



KONGはカツオを追い抜いた。

女子の声が聞こえる。

「貝ちゃん、今カツオ君叩いてなかった?!」


「ひどぉい!」


「先輩頑張れぇ!!」


(その"先輩頑張れ"には、俺も含まれてんだろうな?

おう!頑張るぜ!)



そしてゴール。

KONGの結果は…




75位。






大嘘やん。





なんやねん50位って。



こうして、友を裏切ったにも関わらず順位を5位落としていたKONGは、ペナルティとして1人寂しくグラウンドを5周走らされた一方、怪我をしたカツオはペナルティーを免れたのだった。



それでは!


また!

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