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真夜中にアラームがなったら、アメリカ社会の闇が見えた

どこに住んでいようが、なによりも一番大事なことは、安全であること―。

我が家は一軒家に住むようになってから、ホームセキュリティ会社と契約して、アラームシステムを導入しています。

留守中に、家になにかあればすぐに知らせてくれるシステムは、頼れる安心感があります。家にいるときも、窓やドアを開けるたびに、ピピピっと音が鳴るので、開くはずのないところが開いたときに、異常を知らせてくれます。

そのアラーム音が、昨晩の11時過ぎに突然鳴りました

わたしは、ベッドで本を読んでいたのですが、この音が意味することを瞬時に理解して、息を吞みました。つまり、どこかのドアか窓かが開いたということです。こんな真夜中に。

隣にいた夫も、がばりと起き上がりました。驚いているけれど冷静です。家を見回ってくるといって、階段を下りていきました。いざというときに、本当に頼りになる人です。わたしは、万が一に備えて、携帯電話を握りしめて2階で待つことにしました。異常があったら、すぐに911番(日本でいう110番)へ電話しようと思ったのです。

夫が注意深く見回っている間に、わたしは同じ階で寝ている子どもたちの部屋を確認しにいきました。2人とも、なにも知らずにすやすやと眠っています。夜中に近くで雷が落ちても、絶対に起きない2人です。

結局、異常は見つかりませんでした。ドアも窓もすべて鍵がかかっているし、誰かが入った形跡はありません。家の外に設置したカメラも確認しましたが、いつもと違うことは何もない。

なぜかはわからないけれど、アラームが誤作動したんだろうということに落ち着きました。明日、セキュリティー会社に電話することにして、また眠りかけたとき―。

もう一度、アラーム音が鳴りました。胸がドキンとして、鼓動が速くなるのがわかります。やっぱり誰かいる?!

家の中に、何者かが潜んでいるとしたら。その動機が善良なものでないことは明らかです。

さっきと同じように、夫がまた家の中を隅々まで確認しにいきました。わたしも同じように、携帯電話を握りしめたまま、子ども部屋に異常がないか見に行きました。

結局、なにもありませんでした。なにが原因だったかわからないのですが、アラーム音が勝手に鳴ったようです。人騒がせなアラームです。セキュリティー会社に文句のひとつもいって、ちゃんとチェックしてもらわないと。

でも、真夜中に鳴ったこの2回のアラーム音は、わたしがいま住んでいる社会がどういうものかを、改めて思い知らせる警報のようだった気がするのです。

暗闇の中で、ピピピっという鋭い音を耳にした瞬間、わたしの頭に浮かんだのは、真夜中に家に侵入してくる何者かのシルエット。この国で、こういう輩は、ほぼ間違いなく銃を携帯しています

銃を持って侵入されたら、もうどうにもできないんです。バットがあっても、ナイフがあっても、視界に入った瞬間にアウトです。わたしがいま住んでいるのは、その気になれば銃が手に入る社会なんだ。

と言っても、普段からびくびくしながら生きているわけではありません。銃のことなんて忘れて、平和に暮らしています

でも、アメリカは地域によって治安には雲泥の差があることを知っているし、治安の悪いといわれるところには一人ではゼッタイに行かない。いま住んでいる地域は安全性が高いところですが、それでも夜中に一人で歩いたりはしない。子どもたちが通う小学校でも、避難訓練のシナリオの一つは、不審者による銃乱射事件を想定したもの。銃は、映画の中だけの話ではなくて、現実にそこにあるものなのです。

昨晩は、普段は忘れている銃社会の危うさを、胸の前に突き付けられたような気がしました

夫が階下へおりていくときに、本当に誰かがいて、そいつが銃を持っていたらという想像が、いま目の前にあり得る展開として現実味をもったときに、恐怖と不安で心が大きく揺らぎました。わたしたちの生活が、一瞬にして壊れるかもしれない危機感。

アメリカ社会から銃がなくならないのは、悪しき目的を果たすために銃を使おうとする者から、自分の身を守るために銃が必要だからです。銃の販売を停止すればいいという単純なことではない。

だからどうすればいいのかなんて、わたしにはわからないけれど、これが現実なんだ。


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