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【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#04『最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える』 ※ネタバレあり

どうも皆さんこんにちは、漫画系YouTuberのゲス顔です。

今回ご紹介する作品は、『最強の支援職魔術師である俺は世界最強クランを従える』
こちらの漫画版3巻までを読んだレビューとなります。


この作品に対する僕の感想を一言でまとめるなら、「妥協しない主人公はかっこいい」といったところでしょうか。正直、めちゃくちゃ面白いです。

この物語の主人公は、「ノエル・シュトーレン」という青年。
彼は探索者(シーカー)として活動していました。新進気鋭のパーティー、ブルービヨンドのメンバーであるノエルには、一つの壮大な夢がありました。

それは、最強のシーカーになること。
育ての親だった祖父に誓ったノエルの夢でした。

不滅の悪鬼(オーバーデス)の異名で呼ばれた偉大なる祖父に鍛え上げられたノエルの実力は、折り紙付き。

しかし、ノエルの前には大きな障害がありました。
それは彼の得た職業。ノエルのジョブは話術士。

力を持つ言葉を操り、味方を強化し敵を弱体化させる職業。
ただし、肉体的な強さは他のジョブと比較して劣っているため、最弱の職業と呼ばれていました。

それでもノエルは諦めません。
自分1人では最強のシーカーになれないのなら、自分が率いるクランを最強にしてやる。

その夢を追いかけ叶えるため、ノエルは妥協なき戦いに身を投じるようになっていくのでした。といった形で物語がスタートします。

この作品、まず最初に言っておきたいことがありまして。
それが、作画が半端じゃないっていう点です。

なろう系作品で作画を褒めるっていうのは、僕もわりとやる方なんですけれども、この作品はちょっとそういうレベルじゃないなと思います。

うまいとかじゃなくて、すごいんです。本当すごいとしか言えないです。
当然、絵が上手いっていうのはあります。もちろんそうなのですが、構図も構成も素晴らしいですし、演出も最高です。

正直、どこかの週刊雑誌に連載されているって言われても驚かない。
むしろ実際に連載されてる作品と比べても、このレベルの作画はなかなか出てこないんじゃないかなっていう感じです。

そして、その素晴らしい作画で描かれる物語も、魅力たっぷりなんですよ。
まず最初に推しておきたいのは、この作品、とにかく主人公のキャラが立ちまくってます。

大きな夢を持つ主人公だけれども、才能には恵まれていないんですよ。
この作品では、シーカーを目指す人間には生まれながらのジョブが与えられています。

けれども、彼のジョブである話術士は、最強のシーカーには適さないんですよ。

そこで自分1人だけで最強になるっていうのではなくて、自分が作るクランの仲間たちと一緒に最強と呼ばれるシーカーを目指す。

最強クランのリーダーになるという形で最強のシーカーになろうとするんです。

主人公の職業は超弱くてとか、主人公のスキルは最弱とかっていうのはなろうだと結構定番です。

ですが、大抵は能力そのものがひっくり返ったりものすごい成長して最強になったりというのが多いんですよ。

この作品はそうじゃないんですよ。
主人公が最弱って呼ばれているのは、肉体的な弱さがあるから。

強力な敵と戦って打ち勝たなければいけないっていう側面を持つシーカーにとって、肉体的な弱さっていうのは、明確な弱点です。

だから最弱の職業なんて呼ばれたりする話術士だけれども、決して能力がないわけではない。

話術士という職業の持つ長所と短所を考えた時に、どうすれば最強のシーカーになれるのかと悩んだ結果として、仲間が必要というところに行き着く。

自分が支援するべき優れた仲間が必要だから、最強のシーカー=最強のクランになって、主人公がそこに向かって邁進していきます。

最強を目指すっていうのも、なろう系っぽいじゃないですか。
もう本当によくあるんです。

でも、この作品は一味違う。
主人公がなぜ最強にこだわるのか、理由が明確に描かれているんです。

それは、主人公の育ての親だった祖父が、超強いシーカーだったからです。
それこそ最強の一歩手前とかそういうレベルでしょう。

そんな祖父に憧れたからこそ、ノエルも強いシーカーになろうと、祖父の指導のもとで厳しい修行を積んだんです。

でも、その祖父は亡くなってしまいます。
それは、自分と自分たちが暮らす村の人々を守るために強力な悪魔と戦って、相打ちになってしまったから。

死の間際、ボロボロになった祖父からノエルは聞かれるのです。
探索者っていうのはこういう仕事だと。これほどまでに死に近い仕事なのだと。

お前はそれでもなりたいか、こんなじじいと同じような死に様を迎えたいか、と聞いてくるわけです。

それを聞かれた幼いノエルは、きっと怖かったと思うんですよ。
実際、おじいさんが戦ってる最中は耳を塞ぎ隠れて、音が止むまで震え怯えながら待つことしかできなかったわけです。

それでもシーカーになりたいかと聞かれて、バッとそれまでおじいさんと過ごした日々が頭に浮かびます。

そして言うんですよ、シーカーになると。
目に涙を溜めながら笑顔で言うんです。

これは第0話という前日譚的な部分で、一番最初に描かれるところなのですが、僕個人としてはこの部分だけでガッツリ持っていかれました。

しびれますからね。それでまた見てくださいよこの表情。
なかなか書けるもんじゃないと思いますよ。



こんな過去があるからこそ、主人公は祖父を超える最強のシーカーになると誓うのです。

本当、熱いです。しかし、この主人公、熱いだけじゃないんですよ。
これほどの熱い夢を持ちながら、一方でめちゃくちゃ冷淡なんです。

彼は自分の夢にとてもまっすぐで一直線なんですよ。
だからこそ、その夢の障害になるようなものについても、一切容赦をしない。

話の中でパーティーの金を持ち逃げする仲間が現れます。
彼らに対して、なぜお金を盗んだのか。一体どんな秘密があったのか。

それらを全て暴いてみせた上で、金を取り戻すためにかつての仲間を奴隷として売っぱらうなんてこともします。

最強を目指すとなったら、情にほだされている場合じゃないという姿勢。
夢を語るキャラクターでありながら、夢を夢のままにする気はないっていう態度が個人的には非常にかっこいいと思いました。

この主人公の態度があるからこそ、彼が目指すものの高さやそこに至るまでの困難さが感じられて、この先彼は本当に最強のシーカーになれるのか? 最強のクランを作ることができるのか? と、すごく興味を惹かれるんですよ。

ただ、正直この主人公を嫌いになる人もいると思うんです。
なにせ、基本的に彼の態度は、イキリまくりなんです。

「俺が目指しているのは最強なんだから、これくらい当然だろ」みたいな。
「ほら、お前らの言ってることは間違ってるだろう」みたいな態度が、前面に出るシーンは結構あります。

でも、僕はこのノエルくんのイキりは嫌いじゃないんです。
理由は、実際に彼が目指している最強のシーカーという目標なら、確かにこのくらいは軽くやらなきゃ駄目だよなと思えるから。

ここまではっきりと高い目標を持って、その理由もシーカーとして死んだ祖父との誓いという熱いものですからね。

その夢を叶えるためになら、必要なあらゆる手を残酷なほど冷静に選択するというそういう主人公なので。

ここまで見せられたら、そのイキってる態度も格好いいとしか言いようがないなと思ったんです。いい意味で振り切れたキャラクターだと思います。

また、主人公のキャラクターが立っているだけじゃなく、彼の周りにいる人々も魅力的です。

個人的には、話の冒頭の方に出てくる筋肉ダルマ系のキャラクター。彼が非常に好きでした。

最初登場した時、この筋肉ダルマくんは明らかに裏切り者になるようなムーブをかまします。

言動が三下感丸出しという感じで、でも実際は逆なんです。
彼は確かに頭のいいキャラクターではないんです、お馬鹿さんなんですよ。

でも、裏切り者になるような人間じゃない。
主人公も信頼できる人間であると認めています。そして、ある意味常識人なんです。

自分たちを裏切って金を持ち逃げした仲間に対しても「何か事情があったんじゃないか」と言って、彼らの話を聞こうとしてしまうような人なのです。

だからこそ、いくら金を持ち逃げしたからとはいえ、かつての仲間を奴隷に売っ払って金を回収する主人公のぶっ飛び方に付いていけなくなってしまう。

結果として、シーカーを引退する決意を固めるという流れがあります。
この辺りの彼の心情描写が、かなり共感できるものに仕上がっているんです。

それは、単純にこのサブキャラクターの人格がうまく書けているってだけではなく、主人公との対比が非常にうまくて。

ある意味で、この筋肉ダルマくんの態度こそ、一般的なシーカーの考え方なんですよ。

名を売って金を稼ぎ、飯も酒も女も思うがままにする。
自分の実力でそれを手に入れてやるぞというのが、基本的なシーカーの態度です。

ですが、ノエルは違い最強を目指しているわけです。
筋肉ダルマ君が語るような、一般的なシーカーの目標から見ると、ノエルの目指す最強はある種の狂気の沙汰です。

その狂気的な夢とは比べるべくもないものであることが、ここではっきりするわけです。

たとえ実力があろうとも、まともな神経をしている人間には全くノエルについていけないというのを一番最初に描いています。

それを書くためには、ちゃんとしたキャラクターが隣にいる事実。
そのちゃんとしたキャラクターがついて行けないと離脱したっていう場面が必要です。

だからこそ、筋肉ダルマくんのキャラクターが単なる置物ではなく……。
言葉にするのが難しい。読んでもらうとわかるんですが、この時主人公は筋肉ダルマくんに対して、できれば一緒に来てほしい感情があるように見えるんです。

その直前に、自分を裏切った仲間を奴隷にして売るひどいことをしておきながら、自分が目指す最強というものは情に任せて叶うものじゃない。

それを、主人公本人がきちんと理解してる描写をしておきながら、でもこの筋肉ダルマくんと一緒にやりたい感情も見え隠れしています。

主人公の気持ちが動くに値する存在だというのがわかるキャラクターとして描かれている部分です。

だから、別れのシーンも僕個人的にはすごく好きなんですよ。
この部分に関しては、読んでもらうしかないですね。

全体の流れを見ないと、多分このシーンの良さはわからないかもしれません。

では、総評です。
「最強になるを口にしまくる、口だけじゃない主人公がかっこいい」
といったところでしょうか。

この作品は、とにかく主人公が最強を目指している部分と、それがまともなことではないことをきちんと描くことを徹底しているんですよ。

だから、ときには主人公がすごくひどい奴みたいにも見えたりもしますし、ある意味では意識高い系のような言動をしたりもします。

昔誰かが言っていたのを聞いたのですが、「誰だって意識高い系から始まるんだ」って。でもそれはそうですよね。

誰だって実力よりも先に目標とか夢が立つわけですから、そういう意味で主人公は超意識高い系なわけですよ。

だから、そのあたりをどう評価するかで、この作品に対する評価も変わるような気はします。

主人公がイキリ倒してるように感じてしまうと、読みにくいかなと。
ただそうならないように、主人公が本当に高い目標に対して堅実に行動していることや、その目標を目指す理由を明確に提示しています。

その部分に注目すれば、あまり嫌悪感なく読めるとは思うのですが、それでも主人公は上から目線で物を言うことが結構多いのでそういうキャラクターが苦手という人は注意した方がいいかなとは思います。

ただ、やはり作画もめちゃくちゃいいですし、主人公の物語としてすっきり描かれている部分もありますので、気になった方はぜひ1巻を読んでみることをおすすめいたします。



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