ゲーマー達のうねりはウォークマンのように
携帯音楽プレイヤー「ウォークマン」は初代が1979年に発売され、今年で40周年だという。
この小さいカセットプレーヤーは音楽のあり方を大きく変えた、はずだ。知らないけど。
その時僕はまだ産まれていないし、僕にとってはいつでもどこでも音楽が聞けるなんて別に驚くような事でもない。
しかし想像は出来る。「いつでもどこでも」という今ではありふれたコンセプトは音楽と僕たちとの距離を限りなくゼロにしたのだ。
本題の前に
誤解を防ぐために少しだけ前置きすると、この文章は別にウォークマンを褒めるだけの文章ではないし、歩きながらゲームをするべきだ、という文章でもない。
もちろん「ポケモンGO」をはじめとした位置情報を用いたゲーム(というか『ingress』)はモデルとしては似ているが、このスタイルだけが、正解というわけでもないはずだ。
もう少しだけ、素人なりに深掘りしていきたい。
70年代って何だよ
ウォークマンの話に戻ろう。
1979年なんてあんまり想像できないが、その年の代表曲を見るとなんとなくイメージが掴めるかもしれない。
サザンオールスターズが「いとしのエリー」をリリースして、「YMCA」の掛け声で有名な「YOUNG MAN」が流行した年である。
余談だが、ドラマ「相棒」の主演のあの水谷豊がシングルを出していた。どんな時代だ。やっぱりよくわからない。
さて、それ以前の音楽媒体はいわゆるラジカセであったらしい。ウォークマンも厳密にはラジカセだったのだろうが、ここでは部屋に置くタイプの事を指す。
ちょっと遠い存在
部屋に置くプレーヤーが主流だったということは、当時の人々が音楽を聴いていた場所は予想できる。
そのラジカセを置いた部屋か、せいぜいライブハウスやバーくらいのものだろう。
ラジカセはともかく、ライブハウスに行くのは嫌いではないし、貴重な音楽体験だ。
しかし、音楽が「貴重な体験」としてのみ存在していたと考えるなら、それは不便ではないのだろうか?
ウォークマン以前の世界では音楽は非日常的な存在だったのではないか。
音楽が聴きたいと思ったらラジカセを置くなり、ライブに行くなり、いつもの生活環境とは異なる「場」を作り出さなければいけなかったのではないか。
いずれも毎日の生活から一歩はみ出して音楽を「聴きに行って」いたのだと推測する。
こうなると(今と比べてだが)音楽を楽しめるタイミングは減ってくる。
早い話、コンテンツからの淘汰が発生してしまう。
音楽に時間や労力を必要とする場合、時間を費やせる人間は音楽を楽しめるし、そうでない人間は楽しめないはずだ。
それでも当時の音楽産業は衰退していったとは思えないが、それでもそのままでは限界がある。
持続的ににコンテンツを続けられる人間がいないからである。コストを支払えなくなった瞬間に人は離れていくからだ。
おそらくウォークマンが変えたのはこの現状である。
音楽がイヤホン背負ってやってくる
さて話題が変わってしまうが、僕は毎日音楽を聴いているといっていい。
歩いているときも(周りに気を付けながら)、電車に乗っているときも、この文章を書いているときも(授業中にこっそり書いている場合を除いて)イヤホンを付けてなにか聴いている。
断っておくと、僕は音楽を第一に生きているわけではない。
楽器も弾けないし、たまに音痴といわれたりもする。取り立て応援しているアーティストがいるわけでもないから、ライブに行くこともあんまりない。定額サービスを使っているのでCDの売り上げにはほとんど貢献しない。
決して邦楽にしろ洋楽にしろファンといえる人間ではない。
それでも僕の生活の中には確かに音楽が大きな割合を占めている。
毎日のように新しい音楽に出会い、音楽から学ぶことも多い。
この生活こそ、ウォークマンをはじめとした携帯式プレーヤーが生み出した生活なのだ。
これこそ生活と音楽の距離を無くすということなのだと思う。
ということで
結論だが、こんな生活を生み出すアイデアがもっと必要だ。
題にあるようにゲーム業界にも、もちろんそのほかの業界にも。
もちろんゲームに関しては「いつでもどこでも」プレイできるモデルは豊富に生み出されている。
スマホを使ったゲームは大量に生産され、大量に淘汰されている。
現状ではゲーマーという客を奪い合い、新しい戦場で新たな勝者と敗者を生み出している状態だ。
おそらく必要なのは新しいゲームタイトルではない。
新しいゲーム付属サービスである。
ウォークマンが新しい音楽を生み出すのではなく、新しい音楽の触れ方を生み出したように、
時間や金を費やすことをためらわない「コア」なゲーマーも、より効率的なゲーム体験を求める「カジュアル」なゲーマーも、
よりゲームを生活の一部とできるような世界が実現出来たらいいなと思っている。
ちょっとだけ高めのコーヒーが買えるようになります。よろしくお願いします。