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【読書】『天使の傷痕』西村京太郎【意外な方向に進むミステリー】


「講談社文庫ミステリーフェア」で夏に購入した3冊のうち、1冊しか読まないまま、冬になってしまいました。


今回は、そのうちの1冊、『天使の傷痕』(西村京太郎 著)を読んだので、紹介していきます。



「テン」と言い残した男


社会部記者の田島は、久しぶりの休日、恋人の昌子と出かけます。聖蹟桜ヶ丘の三角山を二人で歩いていると、突然男の悲鳴が聞こえました。飛び出してきた男の胸には短剣が刺さっており、彼は「テン」と言い残して息を引き取ったのです。


亡くなった男は久松といい、雑誌社にネタを売り込んで生活していました。取材で掴んだネタを使って、強請りもしていたというのです。また、亡くなる数日前、久松が「天使は金になる」との言葉を残していたこともわかります。


警察は、「テン」は「天使」のことではないか、久松は強請っていた「天使」に復讐されたのではないかと考え、捜査を進めていきます。田島も、久松の周囲を調べていきます。


意外な方向


「テン」「天使」の意味や犯人を探っていくストーリーに夢中になりました。様々な手がかりをもとに、一歩ずつ真相に近づいていく過程から目が離せませんでした。派手さはありませんが、自分の足で着実に情報を集め、前に進んでいく警察や田島の姿勢が好きでした。


犯人がわかってから、動機は何だったのかぼんやりと考えていると、このお話が意外な方向に進み始め、驚きました。犯人当てやトリック、人間模様を楽しむだけでは終わらないお話でした。


正論を言うだけでは解決しない問題について、何をすべきなのか、自分に何ができるのか、考えさせられました。



古い作品で、時代を感じる部分はもちろんありましたが、読みやすかったです。今でも充分に味わうことができました。


あっと驚く何かよりも地道な犯人探しが好きな方、このお話にある意外性が気になる方、ぜひ手に取ってみてください。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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これまで紹介した「講談社文庫ミステリーフェア」の作品はこちらから↓


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