【夏の文庫フェア】【ナツイチ】『海の見える理髪店』荻原浩
家族、人生についての後悔と未来を、柔らかいタッチで描く短編集。
夏の文庫フェア、6冊目。集英社文庫のナツイチより、『海の見える理髪店』(荻原浩 著)を読んだ。直木賞受賞作。
「時計の針を巻き戻したいって思うことは、誰にでもあるでしょう」
『時のない時計』で時計屋さんが言うこの一言が、本書のテーマを端的に表しているように思った。
海辺の小さな町にある床屋さんにおける、若い男性客と店主との会話で物語進行する表題作。店主は生い立ちを語るが、二人の関係性とは。
老いて病気になった、かつては非常に厳しかった画家の母親と娘の交流。夫が仕事ばかりで子育てに協力的でないことに怒り、実家に帰った主婦に届いた手紙。家庭に事情を抱える小学生たちの冒険。亡くなった父親の時計を修理してもらおうと時計屋を訪れた男性が知った事実。亡くした娘が迎えるはずだった成人式の日、両親が決行したこと。
家族や人生の難しさ、後悔と未来について、優しく描いていく。
温かさに包まれる
決して明るい内容ではないのに、全体的に光が感じられ、じんわりと温かさに包まれた。
このお話の人々は、全体を見れば救われた瞬間もあるものの、一時期はどん底を経験している。辛いことも、未来は開けると信じて、しなやかに受け止める強さを持ちたい。
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