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【夏の文庫フェア】【ナツイチ】『本と鍵の季節』米澤穂信


仄暗さと儚さが印象的な、本と鍵にまつわるミステリー。


夏の文庫フェアの本、3冊目。今回は、集英社文庫のナツイチより、『本と鍵の季節』(米澤穂信 著)について書いていきたい。



作者の米澤穂信さんについて、著名な作家としてもちろんお名前は存じ上げていたが、なかなか機会がなく、今回初めてその作品を読んだ。


フェアの良いところの一つは、これまで読んだことのない作者やジャンルの本を開くきっかけとなることだと思う。


図書委員の高校2年生コンビ


図書委員の高校2年生、堀川と松倉。二人は仲が良く、一緒にいることが多いが、タイプは異なる。優しくまっすぐで、正しくありたいと思っている堀川。外見も頭も良いが、どこかミステリアスな部分のある松倉。


この二人が様々な奇妙な出来事に遭遇し、本や鍵にまつわる謎を解き明かしていく


先輩の祖父が鍵をかけたまま亡くなった金庫の番号を考えたり、美容院でとある違和感から事件に気付いたり、試験問題を盗んだ疑いをかけられた後輩の兄のアリバイを証明すべく調査をしたり、自殺した3年生が最後に読んでいた本を探したり。そして最後には、松倉の過去に迫ることとなる。


仄暗い雰囲気と儚い二人の関係


本書はまず、全体を通じた仄暗い雰囲気が心に残る。高校生というと、青春、爽やかさ、といったことを思い浮かべるが、このお話はややかげがあり、奥深さを感じさせる。


堀川と松倉の関係もどこか儚いずっと続いてほしいのに簡単に消えてしまいそうな二人の関係は尊く、好みだった。


また、どの謎も、読者にその後を想像させる余韻があった。このお話は、特に後半、私たち読者に正しさとはなんだろうと問いかけてきたり、目に見えているものがすべてではないと教えてくれたりするので、これらの視点から、登場人物たちのその後に思いを巡らせるのも良い。



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これまで紹介した夏の文庫フェアの作品はこちらから↓



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