【元気を出したいあなたへ】【読書】「マカン・マラン」シリーズ
仕事でもやもやすることがあり、優しい小説を読みたい、癒やされたい、と「マカン・マラン」シリーズを読み始めた。
気分転換には様々な方法があり、読書に限っても、推理小説やファンタジーで非日常に浸り、現実を忘れるというやり方もある。しかし、今回は、「充分頑張っているよ」と肯定してくれたり、「少しずつ前を向こう」と背中を押してくれたりする本が読みたかった。
きちんとした食事と話を聞いてくれる人、の組み合わせは最強だと思う。『東京すみっこごはん』とか、『お探し物は図書室まで』とか、『太陽のパスタ、豆のスープ』も好きで、このたび、「マカン・マラン」シリーズを初めて手に取った。
「マカン・マラン」シリーズ4作品
カフェの名前でもある「マカン・マラン」は、インドネシア語で「夜食」。昼間はダンスファッション専門店である路地裏のお店で、お針子さんたちへ賄いを提供することから生まれた、常連さんだけの「夜食カフェ」。
このお店の主人は、シャールという女装した男性だ。かつては証券会社で男性としてバリバリ働いていたシャールは、進行性の病にかかっていると知ったときから自分を偽ることをやめ、ドラァグクイーンとして生きることとした。
お針子さんたちも、シャールのような人たちだ。常連さんは、シャールと中学校の同級生だった中学教師の柳田や、近所に住む老婦人。そして、縁あって「マカン・マラン」を訪れる悩み深き人々が加わっていく。
シャールは、野菜中心の健康に良い食事を提供しながら、お客たちの話を聞き、真剣に向き合う。
悩み深きお客たち
シリーズ4作品は、順番どおり、
1.『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
2.『女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび』
3.『きまぐれな夜食カフェ マカン・マランみたび』
4.『さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい』
と読むのがおすすめだ。
前作で登場した人物が次の作品でも登場したり、シャールから広がる人の輪を感じることができるからだ。
立場は違っても、お客一人一人の悩みや葛藤にはどこか共感できる部分があったので、全部読むのがおすすめだが、【どんなお客が訪れるのか、どのような人に届いたら良いなと思うか】、私が読んで感じたことを参考まで記載していきたい。
1.『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』
◯大手広告代理店で20年会社を支えてきた中堅社員だが、早期退職者募集の対象となった40代女性
→自分の積み上げてきたことに自信が持てない人、自分にばかり仕事が集まっていると感じる人、新たな世界に踏み出したい人
◯母親の手料理を食べなくなった中学1年生男子
→自分を責めてしまいがちな人、考え込んでしまいなかなか実行に移せない人
◯下請け編集プロダクションでクライアントに振り回される20代の女性ライター
→自分には何もないと悩んでいる人、今苦しくて辛い人
2.『女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび』
◯周りと上手くやるため神経をすり減らす、いつも「良い人」でいてしまう20代の派遣OL
→自分をつまらない人だと感じて自信が持てない人、職場の人間関係に悩んでいる人
◯漫画家を目指してアシスタントをしていたが、家業を継ぐことが必要になった、老舗旅館の次男坊である20代男性
→家族のことで悩んでいる人、兄弟姉妹と自分を比べてしまう人、夢を追っているが自信が持てない人
◯息子の発育に悩む、完璧主義の30代母親
→頑張っているのに報われないと焦る人、自分だけが必死になっていると孤独を感じる人、親子や夫婦、恋人など近い人のことがわからないと悩む人
◯高2の冬になって突然理転すると言い出した娘に戸惑う父親
→親子の関係に悩む人
3.『きまぐれな夜食カフェ マカン・マランみたび』
◯自分が不幸だから誰かを貶めても良いという黒い気持ちを持つ20代バイトの女性
→誰かに嫉妬する気持ちを抑えられず苦しい人、なぜ自分だけがこんな目に遭わなければいけないのかという思いを持つ人
◯才能はあるが自分の進みたい道がわからなくなった、20代料理人の男性
→自分の能力が正しく評価されていないと感じる人、前に進んでおらず止まっている気がして焦っている人、何がしたいかわからなくなってしまった人
◯美人で優秀だが、結婚生活の終わりを迎えることとなった40代女性
→本当の自分を見失ってしまった人、何でも上手くやれるけれど裏では虚しさを感じている人
◯「終活」を始めた70代女性
→将来が不安な人
4.『さよならの夜食カフェ マカン・マランおしまい』
◯亡き母が憧れていた名門女子校に入ったが、周囲との関係に悩む女子高生
→自分だけが大変だと思っている人、友人関係に悩む人、大人になりたい人
◯SNSでの炎上から急に危ない立場となった、高輪の大人気料亭の30代オーナーシェフ
→がむしゃらに突っ走ってきたけれど立ち止まらざるを得なくなった人、自分は頑張っているのに、正しいのに周囲がついてこないと嘆く人
◯「特別」であることにこだわるセレブ妻の20代女性
→色々なことから逃げてしまいがちな人、周囲に見栄を張ってしまう人、不安ときちんと向き合いたい人
◯性転換をすることに決めた、アメリカで働く青年
→困難に立ち向かう人、自分は一人ではないと認識したい人
終わりに
どのお話も、読んでいると泣きそうになり、読み終わったときには、前向きに、真摯に生きていこうと思えた。
様々なお話を通じてシャールが伝える、「苦しんだり悩んだりするのは、一生懸命自分と向き合っている証拠」というようなメッセージが、とても温かかった。
複雑な世の中、大変なこと、辛いことも少なくないけれど、一人でも多くの人が、本を通じて「マカン・マラン」のお客となり、ゆっくりとでも前を向けますように。
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