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フェーロー語学習の際の資料①和書

北ゲルマン語の一員であるフェーロー語 føroyskt はデンマークの自治領のフェーロー諸島のことばです。フェーロー語を学ぶときに役立ちそうな資料をまとめていきたいと思います。構成としては和書、洋書、オンラインリソースの順とします。

第一回目は和書。商業出版されたものに限定します。現在のところ、完全に日本語のみではフェーロー語を学習できません。また、フェーロー語のみを扱った書籍もありません。フェーロー語がある程度纏まった分量取り上げられている書籍をなるべく網羅的に紹介します。抜けがありましたらお知らせください。

※見方:★の後に書籍情報を示します。書名のみ太文字。なお「→」以下は私見です。あまり頭から信じない方が良いかも知れません。またフェーロー語は日本語による言語名表記に若干の揺れがあるので各書籍での呼び名を記しています。

1 和書

1.1 一覧(和書)

★編著=岡崎 晋: 北欧文庫Ⅰ 北欧姉妹語入門. 東京, 1975: 鷹書房 (107-162)
→本書の前半(第1部)は Hjalmar Axel Lindroth: De Nordsika systerspråken. Stockholm, 1942: Natur och Kultur の翻訳です。この補足として後半の第二部がありますが、その一つ目がこの岡崎 晋著の『フェーロー語の輪郭』です。言語名表記は「フェーロー語」。これは和書の中では最も割かれたページ数が多いものです。少し(非自明な)誤植が多いのと独特な用語の使用があります。

★Elias Wessén (訳=菅原 邦城): 北欧の言語. 東京, 1973: 東海大学出版会 (59-62)
→ 原題 De Nordiska Språken (Filologiska föreningen vid Stockholms högskola, 1941)。ロシア語 (1949) やドイツ語 (1968) にも翻訳されています。あとがきによると第9版 (Almqvist Wiksell, Stockholm, 1969) を底本にし、ドイツ語版を随時参考したとあります。この本は著者の母語であるスウェーデン語の記述に割かれているページが多いです。フェーロー語については社会的側面の記述が主。言語名表記は「フェーロー語」。

★Elias Wessén (訳=菅原 邦城): 北欧の言語 新版. 東京, 1988: 東海大学出版会 (59-62)
上とほぼ同じです。 ii ページ「増刷に際して」によると原書第9版と翻訳の若干の誤りを訂正し、北欧諸地域の人口統計を更新したのみです。言語名表記は「フェーロー語」。

★浜崎 長寿: ゲルマン語の話. 東京, 1976: 大学書林 (1)
→言語名表記は「フェール語」。内容についての記述はほぼなかった気がしますが現在手元になく定かではありません。

★Maurice O'C Walshe (訳=薮下 紘一): 北欧語入門. 札幌, 1990: 北海道大学出版会 (29)
→ 原題 Introduction to the Scandinavian Languages (John Wiley & Sons, 1965)。記述は8行と少しです。言語名表記は「フェーロー語」。

★編=亀井 孝, 河野 六郎, 千野 栄一: 言語学大辞典第3巻 世界言語編(下-1). 東京, 1992: 三省堂 (691-698)
→該当部分は秦 宏一著です。言語名表記は「フェーロー語」。ページ数としては8頁ですが、1頁あたりの情報量が多いこともあり一読の価値があります。

★編=亀井 孝, 河野 六郎, 千野 栄一:言語学大辞典セレクション ヨーロッパの言語.  東京, 1998: 三省堂 (362-369)
→『言語学大事典』からヨーロッパの言語を抜き出したもの、だと思います。言語名表記は「フェーロー語」。おそらく記述内容は同じ。

★編=Allan Karker, Birgitta Lindgren, Ståle Løland (訳=山下 泰文, 森 信嘉, 福井 信子, 𠮷田 欣吾): 双書・北欧1 北欧のことば. 東京, 2001: 東海大学出版会 (226-244)
→ 原題 Nordens språk (Nordiska språksekretariatet, 1997)。該当箇所は Jóhan Hendrik W. Poulsen 著, 森 信嘉訳です。言語名表記は「フェーロー語」。社会的側面に留まらず、表記・発音・語彙・統語などにおけるフェーロー語の特徴や歴史的音変化についてバランス良く記述されています。

★編著=岡澤 憲芙, 村井 誠人: 北欧世界のことばと文化. 東京, 2007: 成文堂 (19-20)
→言語名表記は「フェロー語」。該当部はトゥンマン・武井 典子著。記述は20行余り。

★編=町田 健: ニューエクスプレス・スペシャル ヨーロッパのおもしろ言語. 東京, 2010: 白水社 (148-167)
→該当箇所は入江 浩司著です。言語名表記は「フェーロー語」。3課からなり、音声付きです。語学的な入門書といえますが、文法の概観は難しいと思います。アイスランド語の知識を持っている場合はなんとなく感じを掴むのに良いかも知れません。

★清水 誠: ゲルマン語入門. 東京, 2012: 三省堂 (113-116)
→実質 3 頁の分量です。言語名表記は「フェーロー語」。主にフェーロー語の社会的地位について記述されています。

記述が多くなってしまったので以下に表でまとめておきます。

フェーロー語を扱った和書

1.2 その他の書籍について

扱われていそうなのに扱われていないものを挙げておきます。

☆尾崎 義: 北欧語のはなし. 東京, 1972: 大学書林 
☆編=柴田 武: 世界のことば小辞典. 東京, 1993: 大修館
☆下宮 忠雄: ドイツ・ゲルマン文献学小辞典. 東京, 1995: 同学社
☆下宮 忠雄: ゲルマン語読本. 東京, 1995: 大学書林
☆河崎 靖, 大宮 康一, 西出 佳代: ゲルマン語基礎語彙集. 東京, 2015: 大学書林
☆編=東京外国語大学語学研究所: 世界の言語ガイドブック〈1〉ヨーロッパ・アメリカ地域. 東京, 1998: 三省堂

には実質記述がありません。

☆下宮 忠雄: 世界の言語と国のハンドブック. 東京, 2000: 大学書林
☆河崎 靖: ゲルマン語学への招待. 東京, 2006: 現代書館
☆下宮 忠雄: ゲルマン語対照辞典の試み. 東京, 2007: 大学書林
☆町田 健: 言語世界地図 (新潮新書). 東京, 2008: 新潮社

は現在手元にありません(もしくは一度も確認できていません)が、少なくとも数頁以上の分量はないと思います。誤りがありましたらお知らせ下さい。

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