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56歳、会社辞めてシルクロードに餃子食べに出かけてみた②中国式に圧倒される

シルクロードの旅の起点は西安

私たちは飛行機で西安に飛んだ。

西安空港は大きくて立派だった。

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今でこそ中国の地方都市だが、かつては長安、唐の都だ。

入国手続きの列に並ぶと、日本人はシニアの団体様を除くとほんの数名しか見当たらない。

入国時には、両手の10本の指全ての指紋と顔のデータを登録する。なかなかの厳重ぶりだ。

西安の市街地へは路線バスで向かう。

到着ロビーの券売機でチケットを買おうとしたら、キャッシュレスのみだった。慌ててカウンターへ行き列に並び、鐘楼行きのチケットを買った。

券売機なら漢字が読めればなんとかなるが、窓口では你好と謝々しか喋れない私ではお手上げ。終始娘に頼りっぱなしだ。中国語は発音、イントネーションが悪いと全然通じない。私は地名ひとつまともに発音できないのだ。もちろん相手の言ってることは全くわからない。隣国の言葉なのに、なんてこった!

旅行の前に中国語を少しは覚えようと思ったが、四声と拼音の壁はあまりにも手強かった。(諦めはものすごく早い)

鐘楼行きのバス乗り場に行くと、まだバスは来ていなかったが、中国人民の皆様は長い列を作っていた。

どうする?並ぶ?

いいよ、バスが来てから動けば。

私たちはどっかとベンチに腰を下ろしてバスの到着を待った。

いざバスが来て乗ろうとしたら、私たちのすぐ前で係のおじさんが「はい、ここまで」という仕草をして遮ってきた。

やっぱり皆んなが並んでたら並ばないとダメなのね。

地元民の行動に従う。

海外ではこれが鉄則だ。

中国に居る間ずっと、私たちはこの行列にうんざりさせられた。とにかく中国は人が多い。競争が厳しい。早い者勝ちだ。行列ができてたら、何の行列かわからなくてもとりあえず並ぶのだ。それが中国式。

次に来たバスに乗り込んだ私たちは西安の市街地、城壁の内側へと向かった。終点の鐘楼は城壁の中心に位置する西安のランドマークだ。

バスに乗っている間、私はスマホの地図で自分の現在地を確認していた。徐々に城壁が近づいているようだったが暗くてなかなか見えてこない。

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急に目の前に巨大な壁が見えてきた。

デカイ…

高さ12m、厚み18mという西安の城壁。

壁を抜けるときは、ちょっとしたトンネルのようだった。

鐘楼が近づいてくると右手にデパートがある。デカいよデカい!なんてデカいデパートなんだ!鐘楼もデカい!交差点もデカい!

目に入るものが全部デカい!

初めて見る中国の大きさにびっくりした。

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鐘楼近くのホテルでバスを降り、今夜の宿の方角に歩き出した。鐘楼の交差点を反対側に渡りたいのだが、交差点があまりにも大きくて渡れる気がしない。対岸がものすごく遠いのだ。歩道の角のエスカレーターを降りてみると、交差点の下は巨大な地下街になっていて、交差点を渡らなくても地下街で交差点の下を突っ切ることができるみたいだ。

私たちはスマホの地図と睨めっこしながら出口を見つけて地上に上がった。ひとつ出口を間違えるとえらく遠くに出てしまう。知らない街を歩くにはGoogleマップのような地図が必須だ。

中国では原則Googleは使えないことになってるので、百度地図のアプリをダウンロードしておいた。


使い方はGoogleマップとほとんど同じ。

もちろん中国語だけど、漢字の国の私たちなら無問題。中国に居る間は、散々この百度地図のお世話になった。

Googleが「原則使えないことになっている」という言い方をしたのは、使う方法もあるらしいんだけど、アラ還おばちゃんの私にはよく理解できないので割愛。VPN接続ってなに?(笑)

今夜の宿はXi’an Hantang  House 。漢字で書くと西安漢唐家?

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欧米人のバックパッカーの多いゲストハウスで一泊500円の8人部屋。

なぜここにしたかというと、レビューがまあまあ良かったのもあるけれど、西安に泊まるなら城壁の内側に滞在して、はるか昔の街のつくりを感じたかったのだ。そして安い。

国内でゲストハウスに泊まったことはあったけど、海外では初めて。

一階はレセプションとコーヒーハウス、中二階にバーがあり、その上が客室だ。エレベーターは無い。

コーヒーハウスというかラウンジというか、一階のパブリックスペースは宿泊客は自由に利用できる。ゲストハウスは、客室の中にはベッドしかないが、リビングやラウンジでのびのび過ごせるのがいい。このゲストハウスは独自のイベントが売りで、曜日によっては餃子作りのワークショップがあるのだが、残念ながら私たちはちょうど予定が合わなかった。

唐の都 長安で、欧米人に混じって中国人から餃子作りを習うなんて、なんだかワクワクする体験じゃないか。

部屋にはそれぞれシャワーとトイレがついていた。一泊500円で部屋ごとにシャワーとトイレがついてるのは凄い!と娘は言う。確かにその直前に泊まった北海道のゲストハウスは全体にひとつしかなかったっけ。夜中にトイレに行くのに、いちいちリビングと廊下を通るのは面倒だった。

部屋ごとと言っても、8人でトイレとシャワーがひとつなのだから、感激するほどの充実した設備とも言えないが。

割り当てられたベッドは私も娘も二段ベッドの上段だった。隣同士だったので話もしやすくてその点は都合よかった。ただ、二段ベッドの梯子の1番下の段がやけに高い位置についていて、最後は飛び降りるしかない。足首を捻挫しそうで怖かった。

中高年はぜひ下の段に(笑)。

とも思ったが、私の下の段にはオーストラリアから来ていた大変に体格の良い白人の10代の女の子が泊まっていた。推定身長は175センチ。彼女が軽く寝返りを打つだけで、二段ベッド全体がぎしぎしと音を立てて揺れた。

彼女が上の段だったら…(怖っ

部屋には各自の荷物を入れるロッカーがあった。人によってはロッカーに自前の南京錠をかけていたが、私たちは南京錠は用意してなかった。金目のものは常に携行してるし寝るときはベッドに持って入る。シャワーに入るときはどちらかが気をつけてればいい。一人旅なら南京錠はひとつ持っていくと何かと便利だと思う。

夜は西安の観光名所・回民街へ出かけた。


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ま、眩しい…

ぎらぎらしすぎやで、回民街。風情も何もない。

鐘楼もいい加減盛り過ぎだと思っていたが、こちらの寺院も…


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こ、これで正解なの?文化財とか伝統とか歴史的価値とかそういうのは気にしないのか?

なんでもやりすぎってほどやる。これが中国スタイル…?

西安に来てみて、鎌倉の小町通りとか京都・清水の三年坂周辺なんて観光地としては全然おとなしいと思えるようになった。

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さっそくシルクロードの餃子1つ目。皮は薄めでセイロで蒸してある、台湾の小籠包と見た目は大変よく似てる。ひと口皮をかじると熱々のスープが溢れ出す。

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ここも似ている。黒酢を、かけてシンプルにいただきます。が、ここは回民街。

豚肉入りはございません。

昔、世界史の教科書に「回教徒」という単語が出てきた。いつの頃からか目にしなくなった言葉だが、回教徒とはイスラム教徒のこと。

ここ中国で「回民」とは、漢民族のイスラム教徒を意味する。

私たちは羊肉入りを一皿と冷やしうどんのような麺を注文した。これは西安名物の涼皮??涼皮はもっと平たい麺だと思っていたが…

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イスラム教なので、アルコールはメニューにない。私は無難そうなお茶を注文した。

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この緑色のペットボトル。慣れ親しんだ日本の緑茶のペットボトルと似ている。安心し切ってひと口飲んで、吹きそうになった。

ものすごーく甘いのだ!!

娘は涼しい顔で「あ、中国のペットボトルはみんな甘いよ」と言う。早く教えてよー(涙)

緑茶を甘くするなんて!でも私の子供の頃、どこの家でも麦茶にお砂糖入れるのは普通だったな。今じゃ考えられないけど。

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まるで中央アジア…。やっぱりここはシルクロードの入り口なんだなぁ。回民街を歩くと旅への期待が膨らむ。スマホ決済用のQRコードがあるのがさすが中国、なんだけど。

翌朝、朝ごはんのためにゲストハウスの1階のコーヒーハウスへ行った。

ゲストハウスのスタッフが私たちの席に来て、兵馬俑に行かないか?と聞いてきた。これは英語だったので私にもわかった。兵馬俑ツアーに参加しないか?と勧誘してきているのだ。もちろんガイド料は有料です。娘が中国語で返事をすると「あら、あんた話せるの?」と中国語で説明が始まった。私たちは自分たちで路線バスに乗り兵馬俑に行く予定だったのでツアーは断ったが、途中娘と中国人のスタッフが爆笑していた。

「あの人さ、お母さんのことをおばさんって言ったのね。えーとおばさんっていうのは、叔母ってことじゃなくて使用人とかそういう他人を指すんだけど。で、あたしが母親ですって言ったら爆笑してた」

ごめん、それなにが面白いの?

てか、親子以外に何に見えるの??

だがこの先もいろんな国で、私たちの関係を謎に思う人は何人も出てくるのだ。

兵馬俑に行くために、まず路線バスで西安駅へ行った。中国の路線バスには降車ブザーのボタンが無い。降りたいバス停が近づいてきたら、降車扉のそばに立って、降りたそうな気配を出さないといけない。気配ってなんなの?フロントガラスの上に次のバス停の名称は表示されるので、それが頼り。運賃はみんなスマホをかざしてピッとするだけ。現金で払ってるなんて、私たちしかいない。

西安駅で兵馬俑行きの長距離のバスに乗り換える。マイクロバスだ。バスは次々来るので、兵馬俑?と聞いて乗り込めば大丈夫。というか、バスのボディにデカデカと書いてある。

正直バスはボロくて汚い。運転手が休憩時にタバコを吸うのかかなりタバコ臭かった。

兵馬俑博物館の入り口からかなり離れた場所でバスを降ろされた。9月の西安はまだかなり暑く、入り口にたどり着いた時にはすでにバテバテだった。

博物館前の広場には、有料のガイドさんたちが大勢待ち構えている。全員同じようなブラウスを着て、必ず日傘をさしているので一目でわかる。

そう、9月の西安には日傘が必要です。

ガイドさんたちは、私たちのような個人旅行の観光客を見つけるとたちまち群がってきて、「ほら見て!中国人だってガイド頼んでるよ!ここ2万坪もあるよ!ガイド居ないと迷うよ!」と言うが、いや、迷わないから…。

ガイドを振り切りチケットを買った。

ゲートの前の広場もチケット売り場もピカピカで新しかった。この分なら中も綺麗で涼しいだろうなと(冷房に当たりたいだけの人)期待しながらゲートを過ぎると、そこには広大な公園が広がっていた。

歩いても歩いても、建物は出てこない。

そう言えばさっき、電気自動車に乗ってる人たちがいた…。

なんでこんなに遠いの…??

兵馬俑は動かせない。そうだよね。だって遺跡だもん。まだ発掘中だし。

たけど、道路はもう少し延ばしてもよかったんじゃないの?確かに2万坪ぐらいはあるかもしれない。道に迷わなくても、遭難はしそうな広さだ。そして暑さ。

見学を終えて、「帰りはあの電気自動車で戻ろうね」と言っていたのに、博物館の建物のすぐそばはもう出口だった。帰りのバスの乗り場を百度地図で確認すると、この出口から2キロも離れている。

帰りのバスに乗るのに2キロ歩かせるってどういう作りなの?

実に、出口を出たところからバス乗り場まで、延々と食べ物の屋台と土産物屋が連なっていたのであった。

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すごいな、中国。やるなー。とことんやるんだね。

商売商売(涙)







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