目薬をさすとき
目薬をさすときほどの角度で上を見上げることはなかなか無い。
花火だってあんな角度で見てはいない。
スカイツリーのような建物を物珍しげに真下から見上げるときくらいしか、あんな首の曲げ方はしない。
スカイツリーを見上げるときには、立っていることが常だろう。しかし、目薬をさすときは基本的に座っているものだ。
また、目薬をさすには両腕を持ち上げていなければならない。
片方の手で目薬を持ち、もう片方の手でまぶたを押さえる。必然的に自分の頭よりも高い位置に両腕が上がっていることになる。
これらを総合すると、目薬をさすという行為は、座ったまま首を大きく後ろにかたむけ、両腕を頭部よりも高いところに持ち上げる姿勢を数秒間キープすることであるという説明ができる。
これは人間が普通に生きる上では非常に特殊な動作であり、もし目薬というものがこの世に無かったのならば、もしかすると一生で一度も経験しない行為かもしれない。
wikipwdeaによれば目薬の歴史は古く、古代バビロニアにまで遡るそうだ。
点眼薬という物、いや、直接眼に注ぐことでその治療を試みるという考え方の発明は、それを実践するための特殊な動作を人間に与えた。
人間がもともとそういう動作を取りうる身体構造をしていたから、目薬というものがこれだけ普及したのか、それとも人間が取りうる動作内で完結する行為だったからこそ、そもそも点眼という概念が生まれたのか。
日常的に行っているあらゆる行為と身体構造の間にはこのような鶏卵問題が常につきまとっている。
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