見出し画像

《2020年の光》 五山の送り火と信号

 昨夜の京都は五山の送り火が執り行われた。大の字が6つの火の点で表される、異例の送り火となったことはご存知の方も多いだろう。とはいえ、どんな形であろうと、LEDで代用することもなく、毎年変わることなく松明の火でこの行事を続けてこられた、保存会の方々には敬服するばかりだ。

 さて、“変わることのない明かり”という話題で、こんな面白い話があった。信号機、とくに歩行者用信号のデザインが変わっていることに、皆さんはお気づきだろうか? 別に自分は信号機オタクではないので、専門的なことはよくわからない。けれども、そんな素人でさえ気付く、間違い探し初級編くらいの変化だ。
 以前までは赤地(または青地)に薄黄色の人型の絵があるデザインだったが、最新のものは黒地に赤(または青)の人型が描かれたデザインになっている。
 なんだそんなことか、と思われる方もいるかもしれない。ただ、標識デザインなどに興味の無い人からすれば、その違いを言われてもピンとこないらしい。
 事実、50代の自分の知り合いに、口頭で何度も説明した。それでも伝わらなかったので、検索して画像を開き、ビフォー・アフターを行ったり来たりして、ようやくわかってもらえた。
 本人曰く、信号待ちのとき(自分が歩行者のとき)は、自動車用信号を見ているからだとか。自動車用信号が赤になるタイミングを見計らって、歩行者信号が青になる時にタイミングよく出発できるためである(気持ちはわかるけれども……)。
 
 しかしながら、信号機のデザインは、切り替えが始まって久しいはず。なぜ、今日に至るまで、その知り合いはこの違いに興味をもたなかったのだろうか? 逆になぜ、自分はこの違いに興味をもったのだろうか? ここで思い当たったのは、置き換わった当時、自分は小学生で、身の回りのあらゆるもの、工業や公共物のデザインに特に敏感であった、という理由だ。
 実際、具体的な切り替え開始時期はいつだろう。疑問が湧いたので、ウェブサイトを1時間ほど渉猟した。結果、2002(平成14)年から新デザインの信号機が設置された、という情報をようやく見つけた。デザインの移行は、電球式からLED式への移行とイコールでもある。
 なるほど、予想は当たった。思えば、高速道路などにある動物注意標識のバリエーションの豊富さは、自分の中で大きな関心事だったし、大人になった今でも、踏切注意の標識に汽車の絵が描かれていると、「ラッキー!」と思う。
 現在50代の人にとっては、30くらいまで当たり前のように見てきた公共物が、突然変化したところで、日常の些細すぎる変化なのかもしれない。

画像1


 ここで話したかったのは、別に、ジェネレーションギャップについてではない。自分だって、毎日当たり前すぎて見過ごしてしまっている、けれども他の一部の人は気づいていることが、あるんじゃないかということだ。そしてそういったことは、その気付いている人から教えられて、初めて気付くものだ。だから今回は、“変わった光”もあるんだよという、自分が持っている気付きを共有するため、noteを投稿した。世の中、ギブ・アンド・テイク。

 昨夜は家からも、大文字の火床がある山からも離れたとある場所へ、一眼レフと三脚を手に、自転車で送り火を見に行った。手前に置き換え前の信号機から漏れる電球の光と、その前を通るクルマのライト、そして奥の方に簡略化されてもなお、燃える炎の大文字。これらを一つのフレームに収めた。
 2020年の夏、たしかにあった光たち。手前の信号も奥の送り火も、LEDになる時が来ないとも限らない。


画像2

《2020年の光》(2020)


参考webサイト:https://www.excite.co.jp/news/article/00091207903563/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?