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地方で長期実践型インターンシップを経験する3つの意味

鳥取県で鳥取の企業と大学生をつなぐ長期実践型インターンシップの事業を行っているゲンヨウです。弊社も夏のプログラムが開始しています。関東圏から大学生が挑戦してくれたりしています。そして、全国の仲間と一緒に、地方の長期実践型インターンシップは募集してます。

1.日本で二番目に大学生が少ない県は鳥取

鳥取県は日本で一番大学生が少ない県だ言っていたのですが、倉吉市に看護大ができたので、2番目で7844人です(文科省平成30年度調査:ちなみに一位の島根は7708人)。「二位じゃダメですか」という声が脳内にこだまします。100人くらいだと年度によってひっくり返りそうですね(誤差の範囲内に近い)。

大学生が1万人以下の県は、島根、鳥取、和歌山、佐賀、高知、香川の6県です。7000人台は、山陰両県の二つだけです。それでも数千人規模で若者がいるというのは一つの価値だと思います。

そんな若者と長期インターンシップという方法で連携することを、弊社や仲間の組織は挑戦してきています。それとは別の流れですが、COC+など国の施策として、地方大学生が地方の企業に就職するためにインターンシップを後押ししているパターンもあります。

いろいろ出てきた地方でのインターンシップに関する僕の考えと、そこで長期実践型インターンシップに取り組む意味について書きたいと思います。

2.学生、企業、大学の思惑がいろいろな現状

インターンシップと一言で言っても、関係者としての学生、企業、大学の思惑がいろいろあります。その辺の整理を一旦します。

(1)学生
大学生にとってのインターンシップの目的は大きく2つです。

(A)就職活動をする上での企業選びの時間
(B)スキルアップなど経験値を貯める場所

実際はその両方を取ったりする戦略も含めて、長期休み(8-9月や2-3月)を中心に実行しています。在学中に通いながらインターンシップというパターンも都市部では多いです。

(2)企業
企業にとってのインターンシップの目的も大きく2つ

(A)採用活動
(B)事業を進めるためのパートナー

上記を両方兼ねている場合もありますし、最近は採用活動のウエイトが大きくなってきたと感じます。両社に当てはまらない場合は社会貢献などの一環(中高生の職場体験に近い)としてとらえている企業もあります。ただ、継続性を考えれば上記の2点に軸足がある事で継続しやすいです。

(3)大学
大学にとってのインターシップはあくまでも研修なので、学業につながるもしくは学業を阻害しないという部分が大きいです。昨今の地方大学にとっての地方就職率は行政などとの関係性から生まれていますが、国立大学にとっては教え子が大きな企業に行ってくれた方が、関係性もできますし共同研究などメリットも大きいので、判断が難しい部分だと思います。

(A)就職につながる社会経験の場

そんな、いろんな思惑が重なってインターンシップはたくさんのタイプに分かれています。

3.短いプログラムと長いプログラム

(1)ワンデイインターンシップ
短いプログラムとしては、ワンデイインターンシップです。一日のインターンが経験できるということで、企業負担も少ないし、学生の拘束時間も少なくて需要も増えていると感じています。

実態としては、会社説明会に近い感じなっていて、場合によっては会社ではやらずに、会議室などでできるという点で、地方企業が東京や大阪でも開催しています。会社の概要を知るには良いかと思います。仕事の経験などまで考えるとなかなか難しいかなと思います。

(2)1週間程度
これは、仕事を経験できる(職場体験)に近いものと、何か成果物をつくらせるグループワークものとわかれます。グループワーク物に関しては成果物を作る過程で、人となりが見えますので、都市部の企業やベンチャーなどが取り入れています。採用にかなり近い感じの動きです。

地方の企業はメニューを組むのが難しい(人的にも)なので、職場体験の延長として現場に連れて行ったりして、少し課題を出したりしています。

(3)2週間から1か月
このくらいの期間になると、合宿・グループワーク形式では足りなくなるので、現場の仕事などを組み合わせながら体験してもらうもの。もしくは調査などプチミッションを学生に与えて、結構しっかりしたアウトプットを作ってもらうようにします。ちなみに弊社の長期実践型インターンシップは1か月から提供しています。

(4)一か月以上半年まで
この期間だと、どちらかといえば採用・就職的な視点よりも事業促進や経験の面が強くなります。企業は何か仮説検証の機会として捉え、学生も経験値を増やすための機会と捉えています。

4.地方中小企業のインターンで経験できること

これは地方中小企業の特徴でもありますが、3つのポイントがあります。

(A)圧倒的に近い顧客との関係性
(B)幅の広い現場(職種・人材の多様性)
(C)企業の利益と地域の利益のバランス

(A)圧倒的に近い顧客との関係性
BtoCは特にですが、BtoBであっても知り合いや顔見知りと一緒に何かする可能性が大きいです。誰のために仕事しているのかがはっきりしやすい現場というのは特徴でしょう。

(B)幅の広い現場(職種・人材の多様性)
インターン生で関わるとなると、経営者の近くになるので、より多能な動きを期待されます。企画・広報・人事が一緒だったり。企画の社員さんであっても、繁忙期には現場に出るなどユーティリティープレーヤーにならざる負えないというのが、地方の特徴です。

そして、一緒に働く人の多様さもあります。若手は少ないことも多いですが、年配女性チームとか、おじさま軍団とかなど世代もバックグラウンドも違った人たちとチームを組むことになります。共通言語が何かをつかむというのも大事なポイントになってきます。

(C)企業の利益と地域の利益のバランス
地域企業の経営者とお話ししていると、多くの方が地域の経済や、住む人の幸せを考える目線を持っていることに気づきます。1000人の町で20名とか50名とかの雇用を守っていることから必然的に、そして地域のキー企業としてのポジションもあるかと思います。

なので、1社だけメッチャ儲けるみたいな話よりは、全体を底上げしていくには、連携性を高めるにはみたいな話が出てきます。そこをイメージできるのも地域の企業に関わる特徴かと思います。

5.地方で長期インターンシップに挑む意味

昨年から都市の大学生も、鳥取に来てもらって経験してもらうプログラムを提供しています。もともとは最初に書いたように、日本で一番大学生のいない県なので、学部の幅も含めて外からのルートも欲しかったというのもあるのですが、最近はそれだけじゃなく、地方だからこそ経験できることがあると確信してきました。

大きくは3つ

(1)現場の渦からビジネスモデルやキャッシュポイントを見つける視点
(2)多様なメンバーとチームを組んで成果を出す環境
(3)企業内を俯瞰する目と地域を俯瞰する目

(1)現場の渦からビジネスモデルやキャッシュポイントを見つける視点
 
現場の多くは多忙だったりカオスです。その中から、ビジネスモデルが何か、キャッシュポイントが何かを期間限定で関わることで見つけ出す経験ができます。中で働いている人には気づけない、暗黙知になっている部分を引き出すことで企業にとっても良い気づきになります。

そしてそれは、就職後に自分の部署や担当などで働くときも、何がポイントなのか忙しさに流され切らずに見つけるキッカケにつながります。

(2)多様なメンバーとチームを組んで成果を出す環境
前日したように、共通言語や文化がないメンバーと一緒に仕事します。カタカナ言葉や流行りものを知らない人もいたり、そうでなかったり地方ならではの多種多様があります。場合によっては変える事に抵抗があるかもしれないし、姿勢や熱意に共感して応援してくれるかもしれない。

大学生にとっては高校までは同じ世代と近い文化や考え方の集まりでやっていたやり取りを、社会に出る前に価値観や考え方が違うメンバーと一緒にやる。共通言語を見つけてプロジェクトを進めていく経験は就職後にもつながってきます。

おそらく、副業・兼業の流れが更に促進することで、企業の枠を超えた働き方やプロジェクトベースでの仕事の仕方が広がっていくと考えます。その時に少ない時間の中で多様なバックグラウンドを持つメンバーと、共通言語を作りチームを組む経験をしているのは、コーディネーター的な動きができる人材となり、大きなアドバンテージだと考えます。

(3)企業内を俯瞰する目と地域を俯瞰する目
企業内では、複数の職務を経験することで企業内のいろんな情報を手に入れることができます。そして役割や垣根を超えた複数のポジションを経験することで見える俯瞰的な状態が生まれます。同じように地域での企業やサービスの位置づけを、経営者の目線とともに感じていく時間が、結果的に企業内だけではなく地域を俯瞰してみる目を手に入れられると思います。

6.都市の企業も地域との関りを増やしに来ている

副業・兼業の流れは大きくなっています。僕らの周りも「ふるさと兼業」という流れも来ていますし、地域仕掛け人市でも副業・兼業について聞きに来る人が増えていました。

大手企業でも、例えばより経験を積ませたい若手向けに地方企業と連携する企画が作れないかとか、ベテラン社員のネクストステップとして地方での技術提供など、地方の余白や可能性を都会の大手も期待しています。

その流れを大学生のうちに経験できるというのが最近、地方だからこそ経験できる場があると感じている大きな理由です。

7.経験をワンランク上げるために心がける唯一の事

飛び込んできた大学生に、その経験を更に濃いものにするために心がけることを1つだけお伝えして今日は〆ます。

「経営者とのコミュニケーション機会を増やす」

経営者が一番、会社全体や地域全体を考えていることが多いです。ただ経営者は忙しい(忙しく見える)ので、負けずに懲りずに自分から声をかけるのがポイントです。

僕も今思うと、大学院1年・学生人材バンク立ち上げ時に入ったインターンシップ先のボランティアセンターに派遣されてきたアドバイザーにめちゃめちゃ話を聞いてました。

時間が限られるので、だんだん聞くポイントを工夫したり、先に資料を作ってみたり。徐々に効率よく聞けるようになったかと思います。当時はバタバタで必死だから気づきませんでしたが、その時のキーマンだった彼との時間を作れたのは大きかったなと思います。

なかなか最初は何を聞いていいのかわからないかもしれないけど、相手を見て、気づいたことを投げ込んでいけばよいと思います。

この夏にチャレンジする大学生みなさん、健闘を祈ります。

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