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『仁義なき戦い 広島死闘篇』…アウトロー映画の金字塔が一冊に! #3 シナリオ仁義なき戦い

巨匠・深作欣二によるヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』。菅原文太をはじめ、松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦、田中邦衛など、戦後を代表する名優が一堂に会した本作は、今なお映画ファンを熱狂させています。『シナリオ仁義なき戦い』は、第一作目の『仁義なき戦い』から、続編の『仁義なき戦い 広島死闘篇』『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』まで、シナリオを完全収録した貴重な一冊。ファン垂涎の本書より、一部を抜粋してお届けします。

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1 第一部の広能と事件のフラッシュ・ダイジェスト

米兵と争う広能

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闇市で遊び人を射殺する広能。

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山守と親子盃の広能たち。

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土居を追いかけ射殺する広能。

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山方の最期。

新開の最期。

上田を射殺する有田。

矢野の最期。

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坂井を射とうとして捉われる広能。

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坂井の最期。

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坂井の葬儀場で山守と対決する広能。

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広島駅前マーケットの路上で三国人を日本刀でブッタ斬る村岡と松永等村岡組員たち。

N「昭和二十年、敗戦によって戦場から復員した広能昌三等一団の若者たちは、鬱屈した青春を暴力に叩きつけて戦後の荒廃に挑み、山守義雄を親分として一家を創立した。老獪な山守の才覚と広能たちの命をかけた闘いによって、山守組は呉で一大王国を築いていったが、権力の拡大につれて内部の分裂が始まり、山守の画策に乗ぜられた幹部組員たちは相次ぐ仲間内の抗争によって次々と倒れ、広能も山守に盃を返して袂を分った」

N「一方、広島では、村岡常夫が率いる村岡組が強大となりつつあった」

2 朝鮮動乱と世相のニュース・フィルム

基地を立つ米軍ジェット機。

船積みされる戦車。

朝鮮戦線の砲火。

特需工場の活況。

株式市場の喧騒。

第一回ミス日本選出風景。

競輪場を埋めるファンの熱狂。

画面ストップ・モーションにかぶせて、

メイン・タイトル 『仁義なき戦い 広島死闘篇』

N「時は昭和二十五年にさかのぼる。その年六月、朝鮮動乱が起り、米軍の軍需基地と化した日本は、戦後初めての好景気に沸いて繁栄への道を歩み始めたが、その一方では米軍の強力な占領支配に依って労働運動は抑圧され民衆の貧困と混迷はまだ根強く続いていた。その中で広能たちよりも遅れてきた若い暴力の世代が育ちつつあったのである」

3 クレジット・タイトル・バック

薄暗い工場の中で旋盤にとりついている若い工員、山中正治。

『月産目標貫徹!!』などの貼り紙。

生アクビをしてノロノロと部品の取り替えをしている山中。

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キャッチボールをしている工員たち。

庭の隅で、ボソボソと昼飯のコッペパンを噛っている山中。

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製品を運んでいる山中、怒ったように乱暴に放り出す。

班長が来て給料袋を渡す。当てつけに中身を陽にかざして見る山中。

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帰ってゆく工員たち。

山中、空の給料袋を粉々に引き裂いて吹き飛ばし、みんなとは違う方向へ独り走ってゆく。

クレジット・タイトル終わり。

T『広島』

4 賭場(裏通りの仕出し屋の二階)

地元一家の胴、合力で商店主や職人たちの本引博奕が開かれている。

隅の席に工員服のままの山中がいる。

工場にいた時とは打って変わった狂気、真剣勝負さながらの目の輝きで、既に手許にはかなりの勝ちゴマ(札束)が積まれてある。

何度目かの勝負。

カミシタを開く胴の豆札を見ながら、張り札を開いてゆく山中、

その一枚をトンと軽く叩いて表返す。(コットンと呼ばれる絵替りのベカ札)が、視線を散らしていたせいか、ベカ札の表が半々になって返っている。

一瞬、殺気立って見る合力たち。

合力A「おう、何じゃい、そりゃア!?」

山中「(不貞腐れて)何じゃいいうて、見りゃア分ろうがの、コットンよ」

合力B「おどれクソ、舐めよってから!!」

山中「こりゃア、わりゃンとこのもんから買うた札じゃ、何がいけんの。半分出とるんじゃけん、黙って半分ツケないや!」

合力たち「出ろ、クソッ!!」

飛びかかる乾分たち。山中、死物狂いの体当りで暴れるが、腕力は口ほどもなく、忽ち袋叩きにされて連れ出される。

5 同・廊下土間

山中を好き放題に殴りのめす乾分たち、ポケットの金を洗いざらい奪い取って、

合力A「堅気じゃけん帰しちゃるが、おう、今度ツラ見せたらブチ斬ってくれちゃるど!!」

と二階に引き揚げてゆく。

山中、強情な顔で立ち上がり、洗い場にいって顔の血を洗い落しながら、フト側の菜っ葉包丁に目を留める。

6 同・元の賭場

勝負が再開されている。

と、包丁を提げて黙然と入ってくる山中、乾分たちが気づくより早く、合力A・B始めさっきの乾分たちの顔面を一瞬に斬り裂いて回る。

絶叫、血しぶき。

逃げる乾分をまだ追いかける山中のストップ・モーションに、

T『山中正治 十九歳 傷害罪で逮捕』

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7 検事室

若い検事が威丈高になって山中に怒鳴りつけている。

検事「訊いとることに返事せんか! 未成年のくせに舐めた真似しとると、定年刑務所に放り込んで網走まで送らせてやるぞ!」

上目づかいに黙って睨んでいる山中。

*  *  *

検事が穏やかに調書を書き取っている。

神妙に答えている山中。

検事「今までの供述に間違っていると思う所はないか?」

山中「有りません」

検事「よし、初めからそういう素直な態度を取っとればいいんだ。ここに拇印を押しなさい」

山中、椅子から立って拇印を押すフリをしながら、机上のインキ瓶を取っていきなり調書の上にブチまける。

検事「(激怒)貴様ッ!」

山中「おどれが勝手に書いとるんじゃけん、何べんでも書き直しゃえかろうが、のう!」

検事「貴様ッ、最高刑喰わして定年刑務所へブチ込んでやる!!」

山中「なにいうとるんなら、このクソ、満期になりゃア五分じゃけん、挨拶に行っておどれのドタマぶち割ってやるよう。そン時になってカバチ垂れんな!!」

8 刑務所の検身所

素ッ裸のカンカン踊りで通ってゆく囚人たち。

その中に山中もいる。

看守A「○○番(山中)、もっと股開けい! 聞こえんかッ、ケツの穴拡げて見せいいうとるんじゃ!」

山中に駈けよって頭を張る。猛然と組みついてゆく山中。

他の看守たちが集まり袋叩きにして押さえつける。暴れ狂う山中。

騒然となる囚人たちの中で、着替え室から作業衣を着た広能昌三が出てきて見守っている。

T『広能昌三 のち、呉・広能組組長』

N「広能昌三はこの時土居組長射殺事件の罪で服役中であった」

9 同・鎮静房

革手錠をはめられて正座の山中。口もきけぬほど腫れ上がった顔で何かブツブツ呟いている。

山中「……ぶち殺しちゃる……ぶち殺しちゃるんじゃけん……ぶち殺しちゃる……」

と、眼前のシキ天(覗き口)が開き、炊事番の広能が覗く。

広能「コゲ飯よそってきちゃったけん、よう噛んで元気つけいや、のう」

下の差入れ口から山盛りの飯椀が入れられる。

目礼する山中。手錠のまま犬のようにガツガツ頬張る。

シキ天を閉めて去る広能。

10 広島駅前マーケット・大衆料理屋「一福」の店内

丼物をかっこんでいる山中。

T『山中正治 二十一歳 広島刑務所を仮出所』

若い女主人の上原靖子がお茶を注ぎにくる。

山中「ねえさん……わし、ここで働かせて下さいや」

靖子「さア……板場は人手が足りとるけん、よそで聞いてみんさい」

山中「ここで働いて返そう思うたけん、わし、銭がありゃせんのじゃが……(とはめていた安物の腕時計を外して)……これを代わりに預かっといてくれんですかのう」

靖子「(呆れて)なんネ、綺麗に済ましちょってから……(と時計を返して)いいから、早よ出て行きんさい!」

山中「(ムッと)わしゃ、乞食じゃないで!」

靖子「(気丈に)あんた、無銭飲食しとってインネンつけるん!?」

ハン台に並んで前から様子を窺っていたグレン隊風の若者たち、大友勝利と須賀政男、寺田啓一、神谷英司、三上善輝等、パッと立ってきて山中を取り囲む。

勝利「ヤッちゃん、わしに委しない!」

靖子「あんた等は出んといて!」

須賀「(山中に)馬鹿、この! この姐さんはの、村岡組の親分の姪に当る人じゃ、おう、何んない、こりゃア!」

と卓上の腕時計を土間に叩き落して踏み潰す。カッと立ち上がる山中に、

勝利「わしゃ、ここら仕切っとる大友連合会のもんじゃ。村岡さんにも顔が立たんけん、出いや」

と手にしていた三尺ほどの青竹の先を板場の出刃を取ってスパッと切り落し、即製の竹槍にして山中に突きつける。

T『大友勝利 のち博徒大友組組長』

11 マーケットの露地

山中、一同に囲まれてきて、いきなり勝利に頭から体当り。凄まじい山中の気迫に初めは圧され気味の勝利たちも相手の腕力を見ぬいてから、カサにかかって集中攻撃。

勝利、青竹で滅茶苦茶にブン殴る。

ちぢこまって殴られっぱなしの山中。

靖子が飛んでくる。

靖子「そのくらいにして止めときんさい、堅気の人じゃけんに!」

勝利たち、手を引く。と、ギラッと目を上げて睨み回す山中。

山中「おう殺せいや、のう、おどれ等の顔はよう覚えちょるけん、わしを生かしとったら、おどれ等あとで一人ずつブチ殺しちゃるんど!!」

勝利「なに、外道ッ!!」

烈火の如く再び襲いかかる勝利たち。

全身血に塗れてノビる山中。

一方から、大友長次が世話人倉光俊男、若衆中原敬助等と来かかり、

大友「勝利ッ!」

勝利「いかん、おやじじゃ!」

勝利たち、素早く逃げ去る。

大友「あの馬鹿がまたボンクラ集めよって」

T『大友長次、テキヤ大友連合会会長』

倉光、中原と共に山中を助け起す靖子。

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