伝説のエース・桑田真澄が「メシを食う」と言わない理由 #5 心の野球
言わずとしれた読売ジャイアンツの元エース、桑田真澄。現在は、同球団の一軍投手コーチとして活躍しています。そんな彼の著書『心の野球 超効率的努力のススメ』は、盟友・清原和博との秘話をはじめ、プロ野球ファン必読のエピソードが目白押し。さらに、「がむしゃらな努力はムダだ」「超マイナス思考こそが心を満たす」「試練は必然」など、ファン以外の読者にも響く名言が多数収められています。一部を抜粋し、ご紹介しましょう。
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人生は「死ぬまで勉強」
人生は死ぬまで勉強だ。節制と勉強は一生続けていきたい。
野球選手で言うならば、次の三つの勉強はできるはず。
(1) 読書
(2) 語学
(3) トレーニング法などのスポーツ医科学
実は野球選手には、思いのほか時間がある。練習や試合以外の時間の過ごし方が、野球でのパフォーマンスにも大きく影響してくると僕は考えている。
麻雀、テレビゲーム、パチンコなどで余暇の時間を過ごすのもいいだろう。しかし、遠征が3日間あったら1日は美術館に行ったり、博物館や図書館に出かけて芸術や文化に触れてみるとよいだろう。
また、チーム内には外国人選手がいるのだから英語やスペイン語、韓国語などで話しかけてみたり、単語の一つも覚えたりすることがチームプレー、チームワークにつながっていくと思う。
新幹線のなかでも文学に触れてみることが大事。僕は、野球選手はもっと本を読むべきだと思う。マンガや写真週刊誌もかまわないけれど、それだけではなくて、いろんなジャンルの活字を読まなきゃダメだと思う。
難しいことは考えずに、ただ読む。そして情景を思い浮かべることにより、感受性を豊かにするのだ。
僕は鴨長明や夏目漱石などから始まって、いろいろな本を手にしてきた。『竹取物語』などの古典文学や般若心経は、独特のリズム感を知ることができる。
僕らの仕事は、ただ球場でプレーすればいいわけではない。地域の小学校を訪問したり、マスコミのインタビューに答えたり、スポンサードしてくれる企業の方々と話をしたりする。
そこで必要になってくるのが、言葉の表現力や対話する力。そのためには語彙を増やすべく、本を読み、そして自分の意思を伝えるための適切な表現が浮かぶように日ごろから訓練しておいたほうがいい。
僕は日ごろから電子辞書をもち歩いている。わからない言葉が出てきたら面倒くさがらずにすぐ調べる。そして、意味を理解する。そうやって学ぶことは楽しい。
「きれいな言葉」を使おう
言葉遣いも大事だ。たとえば、僕は「メシを食う」という言い方に抵抗がある。人として「食う」じゃなくて、食事をさせていただく、という心境になりたいといつも思っている。
だから僕は、若い頃から、「メシ、食いに行こう」とは言わないで、必ず「食事に行こうか」「何か食べに行こうか」と話している。
プロ野球選手は一歩外に出たらみんなに注目されているから、様々な場面で知らないうちに、会話を聞かれている。そうしたときに、きれいな言葉で丁寧に話すことを心がけるのは、本当に大事なことだと思っている。
社会全体から見ると、スポーツ選手は何だか軽いイメージで見られている気がする。たくさんの人に知られているという“アイドル性”ではなくて、もう少し人間として尊敬されるような選手像を作り上げたいと思っている。
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