太陽の光を浴びる、森林浴をする…「自然の力」はストレス解消の特効薬 #3 70歳の正解
今年、発表した著書『80歳の壁』が大ベストセラーとなっている、精神科医の和田秀樹さん。この夏、待望の続編にあたる『70歳の正解』が発売となりました。健康のこと、お金のこと、人間関係のこと……。70歳でやっておくこと、やめていいことが、この一冊でわかります。本書の教えをいくつかご紹介しますので、すでに70歳の方も、これから70歳になる方も、ぜひ実践してみてください!
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「太陽の光」にはさまざまな力がある
脳をストレスから守るには、どうすればいいのでしょうか?
ストレス解消に大きな効果をもつ方法は、大きく2つに分けられます。「自然解消法」と「芸術解消法」です。
まずは「自然解消法」について、お話ししていきましょう。“自然関係”で、ストレス解消に最も大きな力を発揮するのは、やはり自然界の中心である「太陽」です。
太陽の光には、心身を活性化させる力があります。逆にいうと、日の光を浴びないことは、人間にとって最大級のストレスになるのです。
その証拠に、北欧では、冬場、昼間がひじょうに短くなると、うつ状態に陥る人が続出します。
その原因は「体内時計」が変調を来すことですが、その後、春が訪れて、日照時間が長くなると、元気を取り戻す人が増えていきます。体内時計が正常に機能し、心身の不調が解消されていくからです。うつ病には、強い光を浴びる療法があるくらいです。
その他にも、太陽光線を浴びることには、数々のメリットがあります。血液の循環がよくなり、新陳代謝が促進されます。免疫機能が強化され、風邪や感染症を防げます。
また、日の光を浴びると、体内でビタミンDの合成が進みます。ビタミンDは「カルシウムの運び屋」とも呼ばれる物質であり、そのカルシウムには精神を安定させる働きがあります。むろん、骨を強化し、骨粗鬆症のリスクが低くなります。
「森林浴」で副交感神経を刺激する
もうひとつ、ストレスの「自然解消法」として、おすすめしたいのは、「森林浴」です。森や林には、確実に人の心を落ちつかせる効果があります。
森林浴の効用が発見されたのは、19世紀のドイツでのことでした。森に囲まれたサナトリウム(結核などの療養所)で、しばらく過ごしていると、軽い精神疾患が治癒するケースが多いことがわかってきたのです。
その後、「フィトンチッド」と呼ばれる香気成分が、副交感神経を刺激し、精神を安定させることがわかってきました。森の香りには、アロマテラピー以上に、人の精神を鎮静化させる作用があるのです。
また、森の中では、鳥のさえずりや風のささやきなど、人の気持ちをリラックスさせる音が聞こえてきます。むろん、森の中を歩いて適度な運動になることも、気持ちをリラックスさせてくれます。
これらの要素が合わさって、私たちは、森を歩くことで、日頃のストレスを解消することができるのです。
森まで出かける時間や体力がないという人は、家庭菜園やガーデニングに取り組むといいでしょう。精神的に落ち込んでいるときでも、土いじりをすると、気持ちが和み、穏やかになれるものです。
ハーブの鉢植えなどをベランダに置き、すこし世話をしてみるだけでも、心は癒されます。土いじりをしながら、植物の匂いを嗅げば、即席のアロマテラピーにもなります。
また、家庭菜園は、前頭葉を鍛え、感情の老化を予防することにも役立ちます。家庭菜園は、超小規模でも「農業」です。「農業は脳業」という言葉もあるくらいで、農業は頭をかなり使う仕事です。
自然を相手とする思うようにならない仕事であるうえ、ときどき、予想外のことも起きますし、小さな区画から大きな収穫を上げるためには、マネジメント能力や創造性が要求されます。適度の不確実性があって、マンネリ、ルーティーンな仕事でないことが、前頭葉を刺激してくれるのです。
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