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noteを使って1週間で100万円稼ぐ…世界的ピアニストの新たな実験 #4 終止符のない人生

「日本でもっともチケットが取れないピアニスト」と言われる、若き天才・反田恭平さん。昨年、世界三大音楽コンクールのひとつ「ショパン国際ピアノコンクール」で2位入賞の快挙をなしとげ、世界的に脚光を浴びています。そんな反田さんの初の著書『終止符のない人生』が、この夏、ついに発売となりました。ファンの方はもちろん、音楽好きの方、自分の「好き」を仕事にしたい方にも読んでもらいたい本書、その一部をご紹介します。

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「音楽で食っていく」ために……

第1回目の緊急事態宣言が発出され、世界中が異様な緊張状態に陥っていた2020年5月25日、実験的プロジェクトに挑戦した。noteにブルグミュラー(ドイツの音楽家)が作曲した「25の練習曲」の音源をアップしたのだ。

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noteは文章に限らず、写真や音楽、動画など作品を何でも手軽に配信できる。無料で見せることもできるし、課金制にしたり、投げ銭(チップ)を受けつけることも可能だ。

演奏は自宅で収録し、録音も編集も自分で行った。価格はブルグミュラーの生まれた年にちなみ「1806円」に設定した。

このプロジェクトは評判を呼び、わずか1週間で100万円以上の収益を上げた。その後も売れ続けて、2022年の今も商品価値をもつロングセラーになっており、2022年6月時点での収益は約300万円以上になっている。

noteには吉本ばななさんのようなプロの作家も寄稿しているが(有料制)、投稿者の大半はアマチュアのクリエイターだ。そのプラットフォームにプロのアーティストが参加して、自分のパフォーマンス、言葉、思考を発表する。無料ではなく最初から有料課金制にしてnoteで収益を上げるという発想は、当時はまだ新しかった

「ネットに載っている記事はタダで読めるのが当たり前」という風潮がはびこる中、「売れなかったらどうしよう」と日和れば、プロの演奏を無料で公開して苦しむ自縄自縛に陥る。パンデミックのせいでコンサートホールがどこも閉鎖され、音楽を楽しむ歓びを奪われた人々に、ブルグミュラーの練習曲でピアノの腕を上げる楽しさを再認識してもらいたい。

なおかつ収益を上げて、プロのピアニストとしての活動をコロナ禍においても継続したかった

なんでも時代のせいにするな

雑誌の対談企画である方とお会いしたとき、その人が「せっかく超難関の東京藝術大学を卒業したのに『アーティストとして演奏する場所がない。生活に困っている』と嘆く若い子がいる」と言っていた。その話を聞いたとき「甘すぎる。なんて甘ちゃんなんだ」と呆れた

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名門大学を卒業したからといって、その音楽家が1000人、2000人のコンサートホールを満席にできるとは限らない。ましてやパンデミックによって経済活動も停滞、人々が文化・芸術への出費を惜しむ世の中だ。チケット代への出費が減れば、ただでさえ苦しい芸術家の生活はますます厳しくなる。

だからといって、その現状を時代の流れのせいにしたり、パンデミックのせいにして良しとする生き方はつまらない。甘ったれた言い訳をして逃げを打つのは簡単だ。愚痴を吐き、後ろ向きでかたくなな姿勢に凝り固まれば、アーティストはますます発表の場を失って追い詰められていく。

ネットを使った有料配信だって可能なのだし、noteのように誰でも今日から参加できる使いやすいプラットフォームだってある。そこで作品を発表してみればいいと思うのだ。「音楽を発表する場がない」なんて言い草はただの言い訳であって、「場」はいくらでもある。せっかく自由に活動できる場所があるのに、そのプラットフォームを活用していないだけの話なのだ。

コロナ禍のおかげで、前向きで良い変化もある。大手プロダクションに所属していなくても、インディーズの立場で自ら発信していこうという若い世代のクリエイターが増えた。デジタルネイティブ世代にとっては、スマートフォンはただのツールではなく、お金を稼ぐための商売道具にもなりうる。

手の中に収まるスマホを使えば、新しい仕事を生み出し、収入を得られる。その事実に気づいた若い子が増えつつあるのは、とても良い傾向だ。

イープラスの有料配信やnoteでの音源発表を成功させた僕に続いて、後輩の若い音楽家たちもどんどん挑戦してほしいと切に思う。

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終止符のない人生 反田恭平

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