見出し画像

読みやすい文章は「漢字比率」が28%以下だった #4 仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。

プレゼンのうまい人は、何文字で資料をつくり、何分喋るのか? 文章がうまい人は、一つの文章にメッセージをいくつ入れるのか? 営業がうまい人は、一ヶ月に何回顧客に会いに行くのか? テレビでもおなじみのコンサルタント、坂口孝則さんの『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』は、あらゆる角度から「数」で仕事をとらえ直したまったく新しい仕事の本。ムダなく、ミスなく、いつも結果を出す人になれる、そんな本書の中身をご紹介します。

*  *  *

ひらがなを多用したほうがいい

福沢諭吉は『文字乃教』のなかで、「文章を書くに、むつかしき漢字をば成る丈け用いざるよう心掛ることなり」と、難解漢字を廃するよう述べた。

画像1

梅棹忠夫さんは『知的生産の技術』(岩波新書)のなかで、ひらがなを多用するように述べている。実際、梅棹忠夫さんの文章はひらがなが多用され、たいへん読みやすい。

まず漢字比率に注目したぼくは、ベストセラー本を買い集めた。もちろん、ベストセラーだからって文章がすぐれているわけじゃない。ただし、少なくとも多くのひとが受け入れたのは事実だ。その本を読み終わったかは別にして、多くのひとが立ち読みで「読んでみよう」と思ったには違いない。

そこで、ぼくはベストセラーを裁断してバラバラにして、スキャニングした。その後OCR(文字認識ソフト)を使って、スキャニング画像を文字データ化した。さらに、そこからひらがな、カタカナ、数字を抜くプログラムを作った。そうすると、漢字だけが残るから、漢字比率が計算できる! 

これを繰り返すと、ベストセラーは全体の文字数のうち漢字が25~28%を占めるとわかった!

これでぼくの一つの指針ができた。もちろん仮説かもしれない。だけど、読みやすい文章のためには、漢字比率を25~28%に抑えればいいんだ。もちろん、数えて計算できるほど頭はよくない。でも、文章を書き終わったあとに、おなじくプログラムで検証してみればいい。

漢字比率が高ければ、書き直す。そうすりゃ、読みやすくなるはずだ。なんたって、編集者に漢字とひらがなの使いわけを訊かれたときに、根拠とともに説明できれば、かっこいい。

具体的にどんなプログラムを使えばいいか。Visual Basicを使えばいい。そこで、本章末に書いておいた(※本書をご覧ください)。もっとスマートなコードはあるだろうけれど、ぼくたちは文章の漢字比率を調べられたらいいから、多少の不具合には目をつぶっておこう。

さて、そのようにベストセラーを分析したあと、自分の文章も分析してみた。すると、漢字比率は30%を超えていた。これは直感的な話になるけれど、漢字比率が30%を超えると、なんだか堅苦しい。実際に、よく売れている本は漢字比率が30%を超えているものは、あまり多くなかった。

「漢字比率」を25~28%程度にする

そこでぼくは、漢字比率が下がるように工夫してみた。具体的には、「ぼく」「くらべる」「おこなう」などをひらいてみた。ひらくとは、漢字ではなくひらがなを使うことだ。

画像2

専門書や論文を書くときは、文章を堅苦しくするために、意図的にひらいていないことがある。だけど、読みやすさを追求するときは、漢字比率を考える

この指針は個人的に気に入っている。というのも、これまで「私」がいいとか「わたし」がいいとか、「僕」がいいとか「ぼく」がいいとか、さまざまな論があった。

でも、文章全体の漢字比率を25~28%程度にせよ、であれば、全体の率さえ考慮しておけばいい。特定の単語を漢字にするかひらくかの選択は、個人のルールにすぎない。

内容ではなく、漢字の数、形式に文章の印象が左右されることは、ぼくにとって発見だった。一度、意図的に漢字比率を約40%、約30%、約20%にした文書を書いてみればいい。おなじ書き手のものとは思えないはずだ。

本章の冒頭文章を使ってやってみよう。

(1) 元の文章……漢字比率約30%

ぼくは処女作を出版するときに、はじめて企画書なるものを作成して持っていった。この企画書の話はあとでする。それで運良く企画が通ったときに、編集者から「原稿は2ヶ月でお願いします」といわれた。ぼくはもちろん合意した。(29漢字106文字)

(2) 漢字比率をあげた文章……漢字比率約40%

僕は処女作を出版する時に、初めて企画書なる物を作成して持って行った。この企画書の話は後でする。それで運良く企画が通った時に、編集者から「原稿は2ヶ月で御願いします」と言われた。僕は勿論合意した。(41漢字97文字)

(3) 漢字比率をさげた文章……漢字比率約20%

ぼくは処女作を出版するときに、はじめて企画書なるものを作成してもっていった。この企画書のはなしはあとでする。それでうんよく企画がとおったときに、編集者から「原稿は2ヶ月でおねがいします」といわれた。ぼくはもちろん合意した。(23漢字111文字)

どうだろうか。(1)にくらべて、(2)は堅苦しすぎ、(3)は柔らかすぎると思ったのではないだろうか。

ぼくは、ベストセラーの漢字比率を読者が意識して選択したとは思わない。だけど〈「みんなの意見」は案外正しい〉(©ジェームズ・スロウィッキー)から、集団的無意識を使ってもソンはしない。

◇  ◇  ◇

連載はこちら↓
仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。

画像3

紙書籍はこちらから

電子書籍はこちらから

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!