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人生には四季がある…秋になったら冬を迎える準備をしよう #1 「ありがとう」といって死のう

いつか誰にでも訪れる「死」。いざというときジタバタしないために、死とはどういうものなのか、どうすれば穏やかに逝くことができるのか、元気なうちに考えておきたいものです。終末緩和医療の最前線で働くシスター、髙木慶子さんの『「ありがとう」といって死のう』は、死を考えるうえでの座右の書になりうる一冊。髙木さんが看取ってきた人たちの実話に、思わず涙がこぼれる本書、その一部を抜粋してお届けします。

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誰にでも必ず冬はやってくる


私と年齢の近い方、あるいは私よりもお年を召された方を見て、ときどき残念に思うことがあります。

厳しい見方かもしれませんけれど、「ああ、この方々は、人生の冬に備えてこなかったのだなあ」と。
 
誰にも老いはやって来ます。老いが来て、やがて死がやって来る。
 
そのことを自覚して夏や秋に備えをしていたならば、いま見せているような恥ずかしい老後(人生の冬)を迎えるはずはなかったのではないだろうかと。
 
いくつになっても、まるで自分が20代や30代の若者であるかのようにふるまっておられる方がいらっしゃいます。お化粧から洋服まで、まるで人生の夏を過ごしているかのよう。物やお金を持つことが生きがいになっておられるのでしょうか。
 
どれだけお金を持っていても、物を所有していても、あの世へは持っていけないんですよ。

年を取って、自分で自分のことができなくなった時に、お金があれば人様が面倒を看てくださいます。でも、お金で若くなることはできませんし、「あれをしたい、これをしたい」と言っても限界があります。
 
人生の秋を迎えたら、できなくなった時のことを考えて、心の準備をしておかなければいけません。「お金があったら、物があったら、何でもできる」と思っているから、死を目前にした時に慌てふためくことになるのではないでしょうか。
 
「こんなにお金があっても、こんなに物を持っていても、死の前には何の助けにもならない」ということを若い時から考えて過ごしていただきたいと願っております。
 

朝、目が覚めたら、太陽がどのように動いていくのかを観察してみましょう。一日は二十四時間で、朝があって、昼があって、夜が来る。太陽は東から上って、南中し、西の空へ沈んでいきます。

日本には四季があります。冬があって、春があって、夏があって、秋があって、また冬が来ます。
 
一日二十四時間、一年三百六十五日で、季節が一巡りします。それは私たちの人生と一緒ではないでしょうか。
 
大自然は私たちに教えてくれています。季節と同じように、私たちの人生にも四季があるということを。
 
いつまでも夏が続いて、秋が続いて、永遠に冬はやって来ない。そんなことは決してありません。誰にでも必ず冬はやって来ることを身をもって学んでおきたいと思いませんか。

いずれやってくる死と向き合おう


生まれてから20代ぐらいまでは春の時代。赤ちゃんの時代です。経験を積み、知識や知恵を蓄え、夏に備えます。

30歳を超え、結婚をして、家庭を持って、だんだんと自分の仕事も軌道に乗って、自由になるお金が増え、それにともない物も増えていく。目に見える所有物が多くなっていく。物質的に豊かになっていくのが夏です。年齢でいえば50代前半ぐらいまででしょう。
 
そして実りの秋を迎えます。子どもが結婚して、孫ができ、家族が増える。お金や物が増えていく時代は終わりを迎え、心を豊かにしていく時代に入ります。
 
秋は冬を迎える準備の時期でもあります。冬に備えるとは、近い将来に自分にも最期の時がやってくるということを意識して生活するということです。
 
秋から冬に向かうということは、死を目の前にしてそのための準備を始めなさいということだと考えています。これが50代半ばから70代前半ぐらいまででしょうか。
 
そして、70代半ばぐらいから冬の時代に入ります
 
冬というのはやはり死の世界です。すべての命が凍りついてしまうような時期です。いまでこそ24時間電灯を煌々とともした生活を送っていますが、冬は本来真っ暗闇の世界。このような時期を私たちは毎年経験しているのです。
 

日本には四季がありますから、雨季と乾季しかない国とは違って、秋が来たら冬が来ることを経験上よくわかっています。
 
当たり前のことですが、私たちは急に年を取るわけではないのです。
 
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来る。これを繰り返して、だんだんと年を取っていく。
 
70代、80代に入ると急に死が近づいてきたように感じられるかもしれませんが、そうではありません。そのように感じるのは、冬(死)を迎える準備をしてこなかったから、特に秋という季節をしっかりと過ごしてこなかったからではないでしょうか。
 
人生の秋を迎えたら、冬を迎える準備をする
 
秋は、いずれやって来る死と向き合う季節なのです。
 
これが私たちの人生なのです。
 
自然はそのことを教えてくれています。自然からもっと学びましょう。

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「ありがとう」といって死のう

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