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睡眠の専門家が答える「寝る前のスマホはやっぱりよくないのか?」 #4 スタンフォードの眠れる教室

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

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太陽光を浴びると体内時計が整う


朝、太陽光を浴びると、入眠を助けるメラトニンの合成分泌が止まり、体内時計は「朝だ」と認識して調整されると説明しました。

光とは「見る」だけでなく「感じる」ものです。光は網膜を通じて入り、視覚(錐体、桿体)とは別のいわゆる第3の目(メラノプシン)という受容体に感知され、いったん上頸部まで下降して上頸部の神経節を介して松果体に到達します。
 
そんな光は、正確にいえば電磁波。人の目に見える可視光線と、人の目に見えないものがあります。可視光線の波長は350nmから800nmといわれ、400nmより短い波長は紫外線、700nmより長い波長は赤外線です。
 
ブルーライトは380nmから500nmとされていて特に470nmあたりのブルーの波長がメラノプシンを刺激する――何やら理科の授業のようになって恐縮ですが、何をお伝えしたいかといえば、スマホやパソコンのブルーライトは、紫外線に近いとても強い光だということです。
 
紫外線のダメージはよく知られており、疲労や老化、免疫力の低下につながるといわれています。ブルーライトはそれに次ぐものですから、影響が大きいことは確かです。

ただし、覚醒・活動度や気分の高揚作用、季節や時間のキュー(始まる合図)を発しており、重要な機能を果たしているので、悪者ではないのです。浴びてはいけないタイミングで浴びると悪影響が出るということです。

夜になったらスマホをスリープに


では、睡眠とブルーライトの関係はどうかといえば、ブルーライトは覚醒を促し、メラトニンの分泌を抑えます

それが夜に見てはいけないといわれる理由ですが、このブルーの波長が覚醒だけではなく気分にも影響し、うつ病の改善、自殺予防に効果があるというプラス効果のレポートもあります。

もっとも、この自殺との研究が発表されたのは2006年で、まだわからないところも多くありますが、季節性感情障害(冬季うつ病)だけでなく、季節性でないうつ病においてもその効果は確認されています。

高照度光器具を用い、朝5000~10000ルクスの光を30分~1時間浴びる治療法ですが、今後波長の影響なども考慮すればもっと手軽な療法が開発できる可能性もあります。
 
太陽光は短い波長の紫外線から長い波長の赤外線まですベて含まれている、この世界で最も強い光です。いくらブルーライトの影響が話題となっても、太陽光ほど強いものではありません。
 
しかしブルーライトに覚醒の効果がある以上、太陽と同じようにスマホやパソコンにも「日没」があったほうがいいでしょう。夜はスリープモードにして、眠らせてあげることです。
 
昼間使う分にはむしろ良い結果をもたらしますが、夜だと悪影響。ただし、これはブルーライトに限った話で、スマホ全般の眠りへの影響となると、また別の話となります。
 
若い人でスマホをベッドに置いている人は7~8割にのぼると述べましたが、今後その比率を減らすというのは無理な話です。

就寝前のスマホの使用は睡眠や体のリズムに良くないのは当然で、その対処はやはり、良い睡眠を取りたいのであれば、個人のレベルで使用時間は最小限にとどめ、刺激になるような使用は控えるということになります。
 
私も、ある特定の人が、いつも腹が立つようなメールを頻繁に送ってくる、しかも夜間にということがあり、憤慨して眠れないというようなことがありました。

それで、その人のメールは夜には開かないようにしました。不思議なことに、ぐっすり寝て同じようなメールを朝見るとそれほど腹が立たないのです。個人の睡眠はそういった些細なことでもかなり改善できます。

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