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地上げで100億円稼いだ親分も! ヤクザと企業の深い関係

刺青や指詰め、男たちを結ぶ盃の意味、背負った代紋の重み、「シノギ」の方法、ヤクザと企業の関係……。私たち「カタギ」の人間には知りえない、ヤクザの世界。豊富な取材をもとに、そのリアルな実態を教えてくれるのが、山平重樹さんの『ヤクザ大全 その知られざる実態』です。驚きと意外性にあふれた本書から、一部を抜粋してご紹介します。

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バブルはヤクザと企業の「蜜月時代」

バブル期というのは、ヤクザと企業側とのかつてない蜜月時代だったね。お互い持ちつ持たれつ、どれだけ潤ったか、そりゃあ、はかり知れないものがあるよ。

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ヤクザは汚れ仕事を一手に請け負い、その代わりに、企業から多大な融資や便宜をはかってもらう。まあ、互いにバブルが弾けて落とし穴が待っていたわけだけど、弾ける前までは本当にいい思いをしたわけだよ。双方があんなに近づいた時代というのも、稀だろうね」

と感慨深げに振り返るのは、関東の組長だ。

たとえば、バブル期を象徴する言葉として挙げられるのが、“地上げ”。それまで耳慣れない言葉だったのが、一躍流行語となり、いまではおそらく高校生でも知っているであろう。

当時、この“地上げ”の担い手となったのは、ほとんどヤクザだったといわれる。

「地上げで一〇億円稼いだ親分衆なんて腐るほどいたでしょ。だって、土地が一割乗っけて売れるという時代だもの。たとえば当時、都心の土地は一坪二〇〇〇~三〇〇〇万円はしたからね。一〇〇坪で二〇~三〇億。それをまとめちゃえば、翌日には二二億から三三億で売れたわけだからね。そういうのを一〇回もやれば、一〇億なんていうのは簡単な話ですよ。うまくやった人は、五〇億から一〇〇億ぐらいの金額を手にしてますよ」(前出・関東の組長)

また、別の組長がこういう。

地上げよりもっと大きいのは、開発だったよ。二束三文の山林を広く取得してだね、それがゴルフ場として認可がおりれば、金のタマゴを生む土地になってしまうわけだからね。そうやって取得した土地を大手企業に売り込むんだが、大概買ってくれたよ。

当時はゴルフ会員権が高く売れたもんだから、坪二~三万円の原野を、企業側は、一万円ずつ乗っけて買いましょうってなもんでね。一万といったって、何万坪という土地だからね。何億にも化けちゃうんだ」

ヤクザと企業を襲った「バブル後遺症」

また、バブル期に、土地・不動産関係と並んで誰でも彼でも手を染めたのが、「株」である。

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「親分衆の間じゃ、株をやらなかった人間のほうがむしろ少なかったんじゃないかな。当時、ダウが二万円。それがどんどんあがって、三万円、三万五〇〇〇円となっていったわけです。つまり、二億円つぎ込んだ人は黙ってても三億五〇〇〇万円の価値になったわけですよ。

で、銀行はまた、その株を担保にカネを貸してくれたんです。一部上場は七掛け、二部上場は六掛け、店頭は五・五掛けで、そのときの株価に応じてカネを貸してくれたわけです。それがまた不動産投資につながったり、さらにカネをつくったり……うまくまわってましたね」(都内の組関係者)

それと絵画である。

前出の都内組関係者がこう続ける。

カネあまりのバブルだから、絵も倍で売れたんですよ。絵を契機に新たにヤクザと企業人のつきあいが生まれるケースもあったわけだけど、ある有名企業が大物親分から絵を大量に買い入れた話なんかは、表には出てないけど、一部ではよく知られてますよ。ただ、その親分と企業とはどういう関係があるのか、まったくわからない。何かトラブルを処理してやったとか、そういうことがあったんでしょうね」

だが、前述のようにバブルとはよくいったもので、株も土地も暴落し、バブル経済はあっという間に弾けた。

ヤクザのほうは、平成不況の到来に加えて暴対法というダブルパンチに見舞われ、昨今は企業側ヤクザ側ともに、バブル後遺症が濃厚に表われだしている

「親分衆で、バブルで儲けてストックして、そこでやめたという人はあんまりいないと思う。欲というのは限りないからね。じゃあ、もうひとつやってみようか、あそこもやってみようかということで、土地や株に手を出し、ヤケドしてるのが現実でしょ。

株が暴落し、土地が売れなくなって、借金を抱え、毎月、気の遠くなるような金利があって……というふうに。それが組のカネを使い込んだものだなんてなったら、もう悲惨ですわね」(事情通)

一方、企業側のバブル後遺症も、その後、社会問題となり、深刻である。

相次ぐ企業テロに、その影が垣間見られたものだ。平成六年三月の警察庁調べでは、暴対法が施行されてからの二年間で、会社幹部などに銃弾が撃ち込まれたり、対応に出た家族が刃物でケガをさせられた事件が全国で一六件起きているという。

事件は、神奈川、東京、愛知、和歌山、京都、大阪の六都道府県で起き、一四社の幹部が襲われた。一六件のうち一一件は幹部や家族に直接の被害はなかったが、すでに三人の死亡者が出ている。


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