ズベ公たちの饗宴…官能小説の金字塔、衝撃の第2弾! #5 花と蛇2 涕泣の巻
緊縛、浣腸、剃毛……。義理の娘とともに、ズベ公たちによって性の奴隷となり、屈辱的な調教を受ける静子夫人。救出にきた探偵の京子もなぶられたうえ、妹の美津子までが捕らえられた。やがて、美津子の恋人とその姉が新たな餌食に……。団鬼六文学の最高傑作として、一部で高い評価を得ている『花と蛇』シリーズ。その第2作め、『花と蛇2 涕泣の巻』の冒頭をご紹介します。
* * *
「美津子に宣誓させるからね。ちょっと、ここへおいでよ」
ズベ公達にとり囲まれている美津子は、眼の前に吉沢が、すっくと立つと、たまらなくなったように、吊られている腕の附根あたりに紅潮した顔を、すりつける。
「ふふふ、何と言ったって、まだ女学生なんだからね。自分の夫と決まった人に、正面に立たれると羞ずかしいのだよ」
銀子が笑って、いう。
「さあ、お嬢さん。今、私達が教えてあげた事を吉沢さんに、はっきり、いうのよ。そしたら、縄を解いたげるわ。夫になる人の前だからといって、そんな羞ずかしい恰好を何時までもさらしていたくはないでしょう」
と、朱美。
美津子は、ズベ公達に尻を突かれ、腋の下をくすぐられたりして遂に顔を正面の吉沢に向けた。涙にうるんだ黒い瞳は、妖しいばかりにキラキラ光り、その凄惨なばかりの美貌を見た吉沢は、射すくめられたように、どきりとする。
「――吉沢さん。美津子は、喜んで、貴方の妻になる事を――ち、誓います」
血を吐くような思いで美津子がいうと、わあーとズベ公達は、勝ち誇ったように歓声をあげた。
「よく決心してくれたわね。これであたい達の顔も立ったというもんだ。やっと肩の荷が下りたわ」
銀子は、満足げに、うなずく。朱美が、狂い泣きしている美津子の耳元に口を寄せ、インタビューする記者の口ぶりを真似て、からかうのだ。
「ところで、お嬢さん。目出度く結婚されたら、赤ちゃんは、何人ぐらい欲しいとお考えですか――」
どっと、ズベ公達は笑い出した。
「お嬢さんの気の変らねえうち、式は早い方がいいな。てっとり早いところ、今夜にでもどうだ」
森田がビールをうまそうに飲みながら、がらがら声でいう。
「――ああ」
美津子は、紅潮した顔を横へねじるように伏せ、高々と吊られているしなやかな白い腕を苦しげに動かしながら、すすりあげている。
「さあ、吉沢の兄さん。可愛い恋人に、キッスしてあげなよ」
銀子にいわれて、吉沢は、いささか照れた顔つきになったが、すぐにズカズカと美津子に進み寄る。恐怖に黒眼がちの美しい瞳を大きく開き、嫌々と激しく首を振る美津子。
「花婿のキッスをこばむ花嫁がいるかよ」
と、朱美は、美津子の真っ白な尻をピシャリと平手で叩いた。
如何に拒んだところで、X字形にきっちりと固定されている美津子は、どうしようもなく、遂には、いやらしく突き出してくる吉沢の唇を我が唇で受け止めなくては仕方なくなってしまうのだった。
吉沢は、何かにとり憑かれたような血走った眼つきになり、美津子のきらめくように白い肩、そして、背後に廻り、すべすべした雪のような背筋から、ふっくらと盛りあがった胸のあたりにまで、接吻の雨を降らしまくる。体中をまむしが這いまわるような、ぞっと虫酸の走るような感触を、美津子は苦しげに首をのけぞらせ、歯を喰いしばって耐えている。
「あっ、あ、何をするの? やめて!」
吉沢が、腰をかがませて、美津子の割り開いた両腿を両手で支え、その両腿の附根に唇を触れさせようとすると美津子はもう耐えられなくなって、金切声をあげ、吊り上げられている両腕を必死になってひく。ふっくらした尻の筋肉までが、ピーンと、はった。
ズベ公達が笑った。銀子は、もう、その位にしておおき、と口を歪めながら吉沢を制する。
「あとの楽しみが薄くなるじゃないか。そういう事は、今夜、水いらずで、すりゃあいいよ。まだ、これからあんたがする事は、たんとあるんだから」
吉沢は、へっへへ、といやらしく笑いながら、ようやく美津子の傍から離れる。
銀子は、大きく肩で息をし、屈辱にのたうっている美津子に対し、急に手きびしい口調でいった。
「大げさな悲鳴をあげるんじゃないよ。吉沢さんは、これからは、あんたの亭主になる人じゃないか。亭主のする事にさからっちゃ、私達が承知しないからね。いいね」
銀子は、美津子の鼻をつまみあげた。そしてカウンターの上のガラス製の便器を取りあげ、それを吉沢にわたす。
はっとしたように耳たぶまで真っ赤にして、顔を横へねじった美津子。
「何もそう真っ赤になって羞ずかしがる事はないだろう。あんたの亭主が世話してくれるんじゃないか。大きい方も、これからは全部、こういう具合に亭主任せにするのよ。わかったわね」
酒臭い息を吐きながら朱美が、体中を火のように熱くしている美津子の耳元に、吹きこむのだった。
「それがすんだらね、このテープレコーダーに吹きこんで、三階にいるお姉さんに報告しましょうね。貴女が吉沢さんと結婚する事をさ。貴女のお姉さんも、きっと、賛成して喜ぶ事だろうと思うわ」
銀子は、おかしくてたまらないといった調子で、美津子にいい、吉沢の方へ眼くばせをする。奇妙な形のガラス瓶を見た美津子は恐ろしさに体中を針のように緊張させて、吊り上げられた両手をねじるように、必死に悶えさせる。
「嫌よ。ああ、嫌。あ、あんまりです。そ、そんな事、絶対に嫌!」
美津子が逆上したように、わめきつづけると、ズベ公達はますます調子を出してくる。
「何いってんのよ。吉沢さんにこういうものを使ってもらっているうち、貴女、吉沢さんに対する本当の愛情がわいてくるものなのよ。そりゃ、最初のうちは、とても羞ずかしいだろうけどさ、馴れてくりゃ何でもないものよ。使わせてもらう時間が、そのうち待ち遠しくてたまらなくなるわ」
銀子はそういいながら、ポケットから、ガスライターを出して、美津子の鼻先でパチリと火をつけた。美津子に絶対、拒ませないための、おどかしである。
「その可愛いお鼻を、黒こげにしてもらいたくなかったら、ふふふ、吉沢さんに甘ったるい声で、お願いするのよ、こんな風にね。ねえ、あなたあ。美津子、おしっこよう!」
銀子が、頓狂な声を出したので、やくざもズベ公も腹をかかえて笑った。
冗談ではなく、銀子は美津子に実際にそんなことをいわそうとしてムキになり、肌身をつねり、はては、ライターの火を尻のあたりに当て、美津子に悲鳴をあげさせる。銀子の残忍さに抗し切れず、遂に美津子は、固く眼を閉ざしたまま、
「――ねえ、貴方――」
「ねえ、貴方じゃ味もそっけもないよ。ねえ、あなたあーんと、色っぽく甘えかかるようにいうのさ」
銀子は、美津子の尻をつねって叱る。
「――ね、ねえ、あなたーあ」
美津子は、体中を火柱のように燃えたたせて、血を吐くような思いでいう。
「なんだい。何か用かね」
吉沢がニヤニヤしながら、ガラス製便器をかかえて美津子に近づく。
吉沢の赤黒い顔が美津子の白い顔をのぞきこむように近づく。狂ったように首を振り悪魔のような吉沢の視線から、顔をそらせる美津子であったが、早くいわないか、と銀子や朱美に体のあちこちをつねり上げられる。
「――美、美津子。お、お、ああ――」
たまらなくなって、激しく号泣しだした美津子を、ズベ公達は腹を立てて、思い思いに折檻しだす。
さあ、も一度、最初から、ちゃんとやり直すんだ、と銀子と朱美にぐいと、顎を持ちあげられた美津子。もうズベ公達にさからう気力も失せたよう、観念しきったように眼を閉じ、女達に命じられた通りの事を口にするのだった。
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