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体を横向きにする、背中をさわる…うるさい「いびき」を止める方法 #5 スタンフォードの眠れる教室

睡眠不足から不眠症、夜ふかし、いびきまで、まさに現代病ともいえる睡眠のトラブル。スタンフォード大学医学部教授・西野精治さんの『スタンフォードの眠れる教室』は、そんなあなたのお悩みを科学的エビデンスをもとに解決へ導いてくれる一冊。睡眠の誤った常識をくつがえし、眠りの研究の最前線がわかる本書から、内容の一部をご紹介します。

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パートナーのいびきに困ったら


男性でも女性でも睡眠時無呼吸症候群のリスクは同じ。パートナーがいびきをかいていたら、次の方法を試しましょう。

・体を横向けにする
 
・背中を軽くさわる

 
ただこれだけのことで、いびきは結構止まります。あまり強くやると目が覚めてしまいますので、やさしくしてあげましょう。「うるさい!」と怒りに任せてどつくのは厳禁で、夫婦喧嘩になったり、その後寝ついてもまたいびきをかいたりします。
 
いびき以外にも睡眠時無呼吸症候群のサインはあります。頻繁に寝返りを打っているのは、呼吸が止まって苦しいからかもしれません。
 
神経や血管の圧迫でも寝返りは起こりますし、個人差が非常に大きいので一概にはいえません。一晩で何十回も寝返りを打っても問題ない人もいます。
 
ちなみに「うつ伏せと仰向けのどちらが良い睡眠を取れますか?」と聞かれますが、どちらでも入眠しやすければ問題ありません
 
ただし、うつ伏せ寝では乳幼児突然死症候群と呼ばれる乳児の突然死のリスクが上がります。

乳幼児突然死症候群は1歳未満、特に月齢2か月から6か月程度の乳児で、日本で年間150人程度と頻度が高い疾患ではありませんが、何の予兆もないままに、突然死をもたらす疾患ですので、その時期のうつ伏せ寝は注意が必要です。
 
大人でのうつ伏せ寝は、好みの問題でリスクはないと思われます。その姿勢によっては、いびきや、無呼吸のリスクに影響が出る可能性もありますが、そのあたりは好みと就寝時の観察によると思います。

口呼吸には「濡れマスク」を


睡眠時無呼吸症候群の人は新型コロナ感染リスクが高いと述べましたが、その一因は口呼吸です。質が悪い睡眠で免疫力が下がっている体にとって、口呼吸による低温・乾燥はウイルスの増殖を高めますし、乾燥した粘膜は当然感染しやすくなります。

新型コロナに限らず、ウイルスや雑菌は、通常なら何重にもブロックされています。鼻呼吸をしていれば、適切な加湿・加温を受け、まずは鼻の粘膜によってブロック、次に扁桃腺でブロック。それでも入ってきてしまったものを、免疫反応で退治します。
 
口呼吸だとこのしくみがうまく働きません。コロナ感染には肥満や高血圧などさまざまな要因がありますが、明らかに口呼吸をしている人の手軽な対症療法としては、濡れマスクもいいでしょう。
 
最近JALのビジネスクラスに乗る機会がありましたが、市販の加湿機能のあるマスクを配っていて「理に適っている」と思い感謝しました。
 
「マスク生活にうんざりしているのに眠る時まで?」と思うかもしれませんが、乾燥は確実にウイルス増殖の要因です。市販の濡れマスクでも、濡れたガーゼを布マスクに挟むのでもいいので、呼吸の妨げにならないやり方を工夫してください。
 
同室で眠っている人のいびきも気になるものですが、歯ぎしりも案外、音がします。歯ぎしりがひどいと歯が割れてしまうこともありますので、歯科医に予防のマウスピースを作ってもらうといいでしょう。歯のすり減り具合ですぐにわかります。
 
睡眠中には筋の弛緩が起こりますが、強い歯ぎしりをしている人は、それが起こりません。咬筋がスイッチオンだから嚙み締めてしまうのです。
 
若い人の歯ぎしりはストレスなど一過性のものも多く、自然に治ることもありますが、若い頃から歯ぎしりをしていて、それが変わらず続いているのなら、その人の癖のようなものです。過度に気にしないほうが良いと思いますが、歯に損傷が及ぶ場合には専門医に相談すれば良いでしょう。
 
歯ぎしりも睡眠障害で、睡眠の専門医が診察治療を行いますが、睡眠歯科の専門家もおられます。大阪大学の加藤隆史先生は、世界でも珍しい歯ぎしりの専門家です。

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