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何度も聴きたいロック名盤をご紹介 ④

アーティスト:ロキシーミュージック
名盤:アヴァロン

イギリスのグループ、ロキシー・ミュージックの1982年の名盤です。
1971年にロンドンで結成されたロキシー・ミュージックは、ヴォーカリストであり、ソングライターでもある
ブライアン・フェリーを中心としたグループで、彼の個性そのものがこのグループであると言いきってもいいほどです。
そんな彼を慕ってか、偉大なミュージシャンが多く在籍したことも、このグループの特徴となっています。
今では環境音楽の大家で、独特の音像を表現する巨匠ブライアン・イーノはこのグループの初期のメンバーです。
1972年のデビュー作と、翌年発表の2作目のみの参加ですが、グループ脱退後は、ソロアーティストとしてだけでなく、プロデューサーとしても確固たる地位を築いています。
それ以外にもギターのフィル・マンザネラは、最近のデヴィッド・ギルモアのバックバンドで活躍し何枚かの映像作品に顔を出しています。
サックスのアンディー・マッケイはソロでも活躍しています。これほど、すごいアーティストを従えながら、出てくる音は見事なほど、
ブライアン・フェリー色に染まっています。最も評価の高いこの「アヴァロン」はイギリスでは3週連続ナンバーワンを獲得しますが、
アメリカでは最高27位とあまり振るいませんでした。
イギリスでしか生み出せないロックミュージックの典型と言えるでしょうか。アメリカのロックシーンでは受け入れられないことは明白ですね。
ヨーロッパ独特の耽美主義あるいは退廃主義の代表作ともいわれる作品でゆったりした音楽ですが、荒廃、退廃、末期といった言葉がぴったりくる音楽です。
このアルバムではブライアン・フェリーのキーボードが音全体に浮遊感を持たせ、音数は多くないものの、センスのいいバッキングが見事です。
一音、一音にこだわって、フェードイン・アウトするタイミング、その余韻までも計算された曲作りです。
これほどのアルバムを作り上げてしまうと、グループとして活動を継続していくことはなかなか難しいのですが、
その後はグループとしての活動を停止し、それぞれのソロの活動に移行していきます。
特にブライアン・フェリーは、その才能の残り香を最大限に発揮し、1985年にアルバム「ボーイズ・アンド・ガールズ」を制作し大きな評価を得ます。

アーティスト
ブライアン・フェリー- ボーカル、キーボード
フィル・マンザネラ-ギター
アンディ・マッケイ-サックス
ゲストミュージシャンを迎え入れ、アヴァロンは制作されています。

  1. "More Than This"
    ノリのいい軽めのナンバーで、メロディーが美しく、ブライアンの声に良く合っています。非常に心地のいいサウンドです。
    バックのギターとシンセの官能的な演奏は、雰囲気を持ちつつ、緊密に計算された音作りで最後の一分ぐらいは歌なしのインストで
    フィル・マンザネラのギターをメインに据えつつ、シンセがその高揚感をうまく盛り上げています。
    この独特の雰囲気を持つアルバムを凝縮したようなオープニングで、全英シングルチャートで6位とヒットしました。

  2. " The Space Between"
    2曲目のいいアルバムは優れたアルバムという方程式がありますが、この曲もそれにふさわしい雰囲気を持った曲です。
    単体の曲として聞くと物足りない感じもしますが、前の曲を受け、次の曲に繋ぐという点では見事に成功しています。
    リズムが強調された曲で、アンディー・マッケイのサックスさえもパーカッシヴな使い方で、リヴァーヴを深めに掛け
    左右のチャンネルに移動させたりして効果を出しています。
    アルバムの中でこの曲がいい意味でクッションになっています。

  3. " Avalon"
    アルバムのタイトルソング。言わずと知れた傑作ナンバーです。
    「パーティーは終わり、私はこんなに疲れている。あなたはどこからともなくやってきて、そのしぐさは雄弁なのに、言葉を交わすことはない」
    という情景描写のあとに、一呼吸置いて「アヴァロン」と歌いかけられる部分はまさに官能の極致です。
    「アヴァロン」というのは、ケルト神話に登場する桃源郷で、アーサー王等の英雄が集う島とされています。
    アーサー王をアヴァロン島に誘った三人の湖の乙女にちなんだのか、女性ヴォーカルの官能的なコーラスもこの曲を特徴づけています。
    ゆったりとした演奏の主役は、ブライアンのシンセとフィルのギターです。
    ただ出しゃばったようなプレイは一切なく、あくまで曲の退廃的な雰囲気を維持することに専念しています。
    たぶん、この先誰も到達できない領域ではないかと思います。今までこれほどの耽美主義に徹した曲は知りませんし
    この雰囲気に到達した曲は皆無だと思います。

  4. " India"
    インストゥルメンタルの小曲。前曲の流れを一旦冷ますための配置で、ここらあたりは心憎い構成だと思います。
    ブライアンのシンセをフィーチャーしたナンバーで、ゆったりとその音の世界に身を浸したい曲です。

  5. " While My Heart Is Still Beating"
    レコードのA面ラストの曲。素晴らしいサイドを締めくくる、暗めのナンバー。
    リズム隊の弾み方がいいのと、ギターの音も相変わらずいい音で鳴っています。ここまで来ると職人技と称えたくなります。
    それぐらいこのA面の出来は素晴らしいと思います。

  6. " The Main Thing"
    B面はいかにもプログレっぽいイントロを持ったナンバーから始まります。
    メロディーは曲のタイトルを連呼するサビの部分のメロディーはちょっと盛り上がりにかけるという、ちょっと風変りな仕上がりになっています。
    演奏のアレンジの巧みさで仕上がっているような曲で、特にエンディングのシンセとギターとリズム隊の掛け合いはちょっとした聞きどころです。

  7. " Take a Chance with Me"
    フィル・マンザネラとの共作ナンバーです。メロディーも明るめで、ブライアンの声も少し軽快になっています。

  8. " To Turn You On"
    続くこの曲も明るい曲で、ブライアンのヴォーカルも前に出ています。間奏のギターソロもクリアなトーンで演奏されています。
    アルバムの中では一番爽快な印象を持った曲で、B面のポイントとなる曲です。

  9. "True to Life"
    シンセサウンド前面のナンバーで音の籠り度合がイギリスのサウンドという感じがします。自身の声にも効果を掛け、パーカッシヴな音としてうまく使っています。
    アルバム後半の山場ですが、明るくふるまっても退廃的な香りはプンプン漂っており、このアルバムの締めくくりにふさわしい出来になっています。

  10. "Tara"
    最後を締める小曲は、シンセのバックにアンディー・マッケイのサックスが物悲しく響くナンバー。半端ない末期感は他では味わえない曲です。

以上が今回のアルバム評となります。ロック入門の一助になればと思います。ご参考になればうれしいです。


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