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何度も聴きたいロック名盤をご紹介 ⑥

アーティスト:ザ・スミス
名盤:ザ・クイーン・イズ・デッド

ザ・クイーン・イズ・デッド(The Queen Is Dead)は、イギリスのロックバンド、ザ・スミスの3枚目のアルバムでUKチャートで最高2位まであがりました。
ザ・スミスは1982年、マンチェスターで結成され
インディーズ・レーベルの「ラフ・トレード」に所属し、4枚のスタジオ・アルバムを制作した後1987年9月に解散しました。
実質的な活動期間は5年程度と短く、国外ではさほどヒットしなかったものの、イギリスの若者には熱烈に支持され
今日では1980年代イギリスの最も重要なロックバンドのひとつとして認識されています。
リアルタイムで聴いていた僕も、振り返るとザ・スミスしかなかった時期がありました。
80年代イギリス最大のインディ・バンドと言われるザ・スミスは、ジョニー・マーの持つ幅広いポピュラー・ミュージックの知識と
シングル曲などに見られる3分間のポップ・フォーマットへの拘り、そしてモリッシーの文学性、カリスマ性が見事に融合した、
ベーシックな古典的なバンドだったと言えます。
また、彼らのシングルにはジャケット・スリーヴと楽曲の完成度が噛み合ったトータルな芸術品といえるような美しさがありました。
そのビジュアルも独特でモリッシーとラフ・トレードのアートディレクターであったジョー・スリーがデザインしたアルバムやシングルには、
彼ら自身の姿は一切登場せず、その代わり二色刷りで映画やポップスのスターが印刷されていました。
カバーに起用されたのはモリッシーの興味の対象で、例えば古い映画やカルト映画のスターなどでした。
『ザ・クイーン・イズ・デッド』のアルバムカバーはモリッシーがデザインし、1964年の映画からアラン・ドロンを使っています。
このようにザ・スミスの特徴は、ボーカルのモリッシーによる社会批判を含み、ねじれた自虐的歌詞と、
作曲担当のジョニー・マーによるギター中心の曲作りであり、その歌詞は、メジャーレーベルから出ていた産業ロックやヒット曲
などに共感できない若者たちに受け入れられ、一部の熱狂的なファンを生み、後のオルタナティヴ・ロックの一部のバンドに影響を与えました。

アーティスト
モリッシー -ボーカル
ジョニー・マー-ギター
アンディ・ルーク-ベース
マイク・ジョイス-ドラム
クレイグ・ギャノン-ベース、アディショナル・ギター(1986年~)


  1. "The Queen Is Dead"
    オープニングにふさわしい美しい6分間。60年代のイギリス映画からサンプリングされたオープニング、それを打ち砕くようなドラム・ロール。
    「女王は死んだんだ!」とか細い声でわめくモリッシーがロックスターの雰囲気を醸し出しています。
    バンドの性質上、歌詞ばかりが先行して語られますが、普遍的なロックとしても風化せずに残るサウンドは、もっと評価されてもいいと思います。
    ラストの「Life is very long, when you're lonely~」に被さるように奏でられる、ハープシコード・タッチのシンセに、凡庸なガレージ・ロックで終わらせないテクニックが感じられます。
    シングルとしてはリリースされていないのだけど、リード・トラックとして、PVは作られた。その独特かつ耽美的な映像センスは様々な方面にパクられたようです。

  2. " Frankly, Mr. Shankly"
    ラフ・トレードのオーナーへの揶揄を歌うモリッシー。公に社長を小バカにしていますが、どちらかといえばコミカルな曲調です。

  3. " I Know It's Over"
    そっと手を差し伸べてくれそうな感じのスローバラード。
    どこかに希望を持っていたいのだけど、そんなものはどこにもない。自分の中にあることはわかっているのに。でも、それは決して手をつけることはできないのだ。

  4. "Never Had No One Ever"
    すっかり一人前の大人になった友人に比べ、まともな職に就いたこともない自分。恋人も友人もいらないけど、君の車の後部座席にいることができれば、僕は幸せさ。
    古いタイプの短編小説的な歌詞を淡々と紡ぐモリッシー。バンドはオーソドックスなギターバンド・スタイルです。

  5. "Cemetry Gates"
    アコギから始まるオープニングで牧歌的なナンバーです。曲調だけ見ればのどかなムードの穏やかなムードだけど内容は辛辣です。以前書いた歌詞が古典文学からの引用だと指摘した評論家への痛烈な皮肉になっています。

  6. "Bigmouth Strikes Again"
    このアルバムもうひとつのキラー・チューンであり、実質ザ・スミスの最終作だったライブ・アルバム『Rank』の最後を飾ったロック・チューンです。
    この曲で彼らの歴史は終わりを遂げました。シングル最高26位はちょっと不発でしたが、確実に80年代UKインディー・ロックファンの道標となったと思います。
    キャリアのピークにありながら、ここまで自虐的なフレーズを口にしてしまうモリッシー、
    他者への強烈な口撃の勢いを緩めず、やたらめったら鉄槌を振りかざすが、しかし最後に振り下ろすのは凡庸な自分の頭でした。

  7. "The Boy with the Thorn in His Side"
    UK最高23位にランクインしたネオアコ・テイストの軽快なポップ・ナンバー。邦題「心に茨を持つ少年」は名訳ですね。当時のザ・スミスの中二病的な少年性をうまく言い表しています。

  8. "Vicar in a Tutu"
    モリッシーのヴォーカルは相変わらずのヘロヘロで、パロディに聴こえてしまう余興的な曲なのか。
    この曲は突然、スパッと終わります。そのエンディングの潔さはザ・スミスの生真面目なスタンスを感じさせます。

  9. "There Is a Light That Never Goes Out"
    シングルにはなってないけど、こちらもリリース当時から物議を醸し出したキラー・チューンのひとつです。
    人気があっても、仲間同士で話題の中心にはならないザ・スミスは、聴く時はみんな一人で集中して聴きたくなる自分だけのグループです。

  10. "Some Girls Are Bigger Than Others"
    最後はポップな正統ネオアコでサウンドとしては、これが一番完成されていると思う。ラストに持ってくるには相応しい曲です。
    強い楽曲が並び、完璧なB面と言われる所以です。

以上が今回のアルバム評となります。ロック入門の一助になればと思います。ご参考になればうれしいです。


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