見出し画像

商品をお勧めするにあたって

仕事上、お客さんの対面の席に座り、商品をその場で提案する機会が多い。

正直かなり苦手。

売る立場にある以上、商品に関する知識を深く把握していないと失礼に値するため、毎回、脳内でシュミレーションを行ってからお客さんの元へ向かうようにしている。

それでも、「提案する」という行為そのものに嫌悪感を抱いたり、勘繰って解釈してしまう方もいる。
買ってあげないと可哀想だ、という心理を働かせてしまうことも、個人的には好きではない。

そして私自身、検討もしていなかったものを勧められると、グッと身を構えてしまう質(たち)である。

しかし、商品に出会ったことで、お客さんの生活の質が向上する可能性もあるため、伝えること自体を、勝手に拒否していてはいけないとも思っている。
ただ、ボリューム感や時間的な長さ、伝える順番などを、その場で汲み取ったお客さんの快不快に従って判断していくことは、かなりの負担となっている。

このように日々葛藤しながら働いているのだが、その日も
「はぁ。提案しに行かなきゃ…」
と、気持ちが沈みつつも、気合を入れてお客さんが座っている席へと進んだ。

百聞は一見にしかずと流布されているように、口頭で断片的な言葉を放つのみの接客は、話す側の配慮が足りないと感じる。

タブレットを活用して、作業例をお見せしながら、会話を意識して、明るく提案を行った。

結果的に、値段が懸念点となり断られたのだが、「教えてくれてありがとう。今回はごめんね。」と優しく微笑んでくれた。

その後、予定していた作業が終わり、お客さんを車まで誘導後、「わぁ!とっても綺麗!いつもありがとう。」と目を見て言ってくださった。
またよろしくお願いいたしますとお辞儀をした際にも、「こちらこそ、またよろしくお願いします。」と、最後まで丁寧な言葉を私にくださった。

ありがとう ごめんね こちらこそ

大人になればなるほど、言えなくなる言葉。直接的なコミュニケーションが減少している現代だからこそ、口にする機会も減っていると感じる。
 
しかも、今回のケースは、私が一方的に商品をお勧めしている状況なのだから、ありがとうやごめんね、こちらこそ、などのフレーズを言ってもらえるとは到底思っていない。

だからこそ、その日の出来事は強く胸に刻まれた。

そして、立場上、商品を売っていかなければならないのだが、売るためにどうするかではなく、提案後も「また来たい」と思ってもらえるような言葉のやり取りをしていけるかどうかが、何よりも重要であることに気づくことができた。

これからも、私なりの接客を追い求めていこうと思っている。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?