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拝啓。

拝啓。お世話になった方様へ
お元気ですか、貴方が退社されて数年経ってしまいました。月日が経つのは早いですね。

私が貴方に出会ったのは、接客業から営業職に鞍替えした2年目の時で、私は本当にがむしゃらに働いていました。営業部3人体制の中、上司が大病で離職。今思えば無茶苦茶な状況でした。

事務職で中途採用の貴方は、10歳以上離れていましたが、器量と感の良さで、未熟な私をサポートしてくれましたね。忘れっぽい私に、メモやメールでアシストしてくれました。本当に助かりました。ありがとうございました。

 貴方が心の支えだったんです。本当に支えでした。いつだか業務に追われてヘロヘロだった時に〈アドレナリンが出てるから、素敵ですよ!良い顔してる!〉って言ってくれたの本当にすくわれました。聞いた瞬間に、男は馬鹿だから元気が出たものです。
 一年経つと、器量の良い貴方が、事務のお局方々にいじめられているのを知りました。私もその頃から会社経営陣とぶつかることも増えてしまい、正義感からとはいえ辛い時期でした。
 ある日、突然貴方から、〈AIタロウさん、私、退職するんだけど知ってた?〉と聞かれた時は、ショックで、ぐらついてしまったのを、今でもたまに思い出します。辛い日々、ある意味、同士だった貴方がいなくなる。それより辞める事など何も知らずに、貴方の器量があれば、一緒にこの先も頑張れる!なんて自分の事ばかり考えてた、自分が恥ずかしくて、情けなくて、絶句してしまいました。
貴方がいなくなった次の日から、貴方が初めからいなかった様に会社は日常に戻りました。
貴方が去った後、何人かの方が、私の部署に中途入社で来てくれましたが、結局皆、辞めてしまいました。貴方が助けてくれた日々は私の宝物です。
でも貴方が助けてくれた様に、私は周りの辞めてしまった方々に尽くせたのかは疑問です。
貴方がいた時以上に私は、会社とぶつかり窓際になったりしました。辞めていった方々は私の味方でいてくれた人達でもあります。皆会社に絶望して、あるいは呆れて去っていきました。
私は貴方に助けられた様に、辞めていった人達にやはり助けてもらって、結果会社に残っています。
貴方がくれたものは、かけがえのない日々です。
貴方は、普通の人が持つ、普遍的な正しさや前を向く生き方を示したと思います。

 窓際の私は今、転職を考えていますが、残るうちは若手に尽くしていこうと思っています。会社は大きく変わり、貴方やその他の方々がいた事すら忘れて前に進んでいます。

私は忘れません。
いつかどこかでお会いする事があれば嬉しいです。貴方が同じ世界の、同じ空の下で笑っています様に。貴方が示してくれた普遍的な良い人である陰ながらの努力と、きっと深く傷ついてしまった心が癒えて、健やかにお暮らししてる事をお祈り申し上げます。

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