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経営危機をもたらした様々な事件 #社員による現金横領で真っ青

起業2社目の会社での出来事です。

この事業はマーケティング(主に企業コンサル)やイベント企画が主業務でした。
起業で誰もが一度は考える「低初期投資、在庫なし、自分が売り物」の典型ビジネスです。
前職で某広告会社でマーケティング部に所属し戦略プランナーをやっておりましたので、その転換で事業化です。

1年目からそこそこの利益は出ました。
前職でのコネや人的繋がりが収益の源泉です。
一方で人材確保が悩みどころでした。

ある日、クライアントの依頼で、表参道でイベントがあるのでモデルのブッキング&当日の取り回しの業務が舞い込みます。ショップオープンの客寄せイベントです。

そこで出会ったのが、本事件の主人公Mくんです。
モデル派遣会社から来た小柄で痩せた20代後半の男性で、
「私、この会社を退職予定です。社長の元で雇っていただけませんか?」
数日間のイベント中、何度も私にまとわりついてきます。

次に飲食店開業を予定していた私としては、店舗調査など実務担当が欲しいと思っていたので、
アルバイトからならばということで、翌週よりオフィスで働き出しました。

可もなく不可もなく淡々と作業をするMくんです。

正直、アルバイトとしては問題ないと思われましたが、雇用にするには決定打がありません。(と言いますか、零細企業には優秀な人材は来ません。期待しすぎました。)

一方で飲食店開業の準備は淡々と進んでいきました。
店長候補やアルバイトスタッフの雇用も順調に進んでいきます。

そのうち、彼は自分の経験で新しいビジネスを立ち上げたいと言い出しました。
もう居場所がないと感じていたのでしょう。

秀逸なプランとは言えない内容ではありましたが、彼はその分野では確かに経験豊富です。
全責任は彼がとるという事で一筆契約書を取って新しい会社を登記し便宜上、彼を代表取締役に就けました。

事業としてではなく、投資として低リスク案件と判断したためです。
加えて当時は会社も順調で利益余剰金がかなりあったことも理由の一つです。
ダメなら他の担当者で進められる、首のすげ替えが効く事業モデルです。

Mくんへの事業投資として、まずはイニシャルで300万は必要でしたので、恵比寿のU銀行に法人口座を作り入金しておきました。
もちろん、銀行印や通帳はオフィスの金庫で厳重に管理です。

その翌週のことでした。

Mくん出社がしないので携帯に電話したところ、解約済みアナウンスです。
不審に思い、彼の自宅マンションへ行ってみましたが、カーテンも取り外しておりすでに転居した様子です。
(ちなみにこの住居も会社で借り上げていました。)

「トンズラ?」

きっと、自分の事業に自信が持てずに逃げ出したのではないか?などと首を捻っておりましたが、
本業には影響がないため、その日は通常業務に戻りました。

数日後、M銀行においておいた事業資金300万を引き上げようと窓口に行ったところ、
窓口の行員に、

「お客さま残高はゼロでございます」

と告げられました。

そう、Mくんが持ち逃げしていたのです。
まさかと思いましたが、行員に詰め寄っても数日前に引き出されていると連呼するばかりです。

手口は簡単でした。
彼は銀行窓口に行き、銀行印の紛失届と新しいハンコの登録を行なってまんまと引き出しに成功したのです。
本来であれば金庫に隠しておいた通帳も必要なのですが、このU銀行は不備にもかかわらず変更届を通してしまったようです。

え?法人銀行印の変更には法人印鑑証明とか登記簿謄本とかもいらないんだ?

と驚きました。無知です。

飼い犬に手を引きちぎられました。
その足で警察に被害届を提出しました。
(ちなみに現在は100万を超える引き出しを行うと、会社もしくは代表者に銀行から電話がかかってきます。)

続きです。
警察署を訪れて、窓のない狭い取調室に通されて事件の概要を説明しました。
こっちが被害者なのに、まるで犯罪者のような冷たい扱いです。一通り取り調べが終わると、彼は自席まで私を手招きし、机上に積み上げられた100枚以上ある書類の山を見せながら、

「事件こんなに溜まっているので、順番に受け付けますから操作開始までに時間はかかりますよ〜」


とそっけない回答です。
くっそ〜納税者にどんな扱いだ!と立腹ひとしきり署を後にしました。

仕方なく、弁護士を帯同させて再来署しましたら、あっさりと「すぐに動きます」と不貞腐れて返答いただきました。
しかしここまでで1.5年はかかりました。(この時の弁護士の詰め寄り方は凄かったです)

その後は、警察が自宅や勤め先を特定。電話で操作状況の報告が逐一入ります。

追いかけるようにMくんの代理人弁護士から電話があり、

告訴を取り下げてくれないかと懇願

されます。

やり取りの最中には、検察からも電話があり、

「どうしますか?こちらは進めるなら起訴で動きますけど」

と打診がありました。和解時の返金の心配までしてくれる検察庁です。

警察署で”怠惰な知能犯係”警察官に言われたのですが、これは業務上横領事件となり、起訴されて有罪になると一生ついて回るということでした。(そりゃそうだ前科だし。しかも他犯罪よりも再就職不利だし。)

すでに埼玉山間部のプラスティック工場に再就職、しかも結婚をしていた彼には堪える烙印だったのでしょう。

呆れつつも返金を促し、代理人との何度かのやり取り後、起訴しない念書を交わして全額返金されました。

幼少の頃、暗いトイレに1人で行くのを怖がっていると父が、

「お化けなんかより、一番怖いのはニンゲンだからね」


って何度も聞き諭されていました。
まさに自身の洞察力、経験の無さが招いた、無知が招いた人間の恐ろしさを学んだ出来事でした。

そして、まさかこのような経験ののち、数年後さらに上回る知能犯罪者に出会うことになるとは思いもしませんでした。。。


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