日々雑感 KAZU1に関連して その2 🛥️🚤 第58寿和丸海難

 昨日は、KAZU1のことを書きました。そうしたところ、noteのおすすめ記事の中に瀬戸内海で発生した修学旅行生の乗った船の沈没事故などが表示されるようになりました。
船の事故について書かれた本では、伊澤理江『黒い海 船は突然、深海へ消えた』が素晴らしいと思います。数々の賞を受けた読み応えのある本で、その本の感想を書いた人の記事がホームで出てくるようになりました。ということで、本日は第58寿和丸の事件についてです。「事故」ではなく敢えて「事件」と記述します。
 さて、この第58寿和丸の事件ですが、上記書籍やこの書籍を引用した報道記事の内容と、運輸安全委員会の報告書の内容が大きく異なっています。
 この海難では3人の生存者がいたので、その証言等をもとに真相に迫っています。
運輸安全委員会のウェブサイトから概要と原因を引用します。
【概要】
 漁船第五十八寿和(すわ)丸は、船長、漁ろう長ほか18人が乗り組み、千葉県犬吠埼東方沖の漁場において漂泊中、船体が右傾斜して転覆し、平成20年6月23日13時50分ごろ、犬吠埼灯台の東方沖350km付近の海域において沈没した。
 乗組員20人のうち、4人が死亡し、13人が行方不明となった。
【原因】
 本事故は、本船が、犬吠埼東方沖350km付近において、南西~南の風が吹き、南西~南の波がある状況のもとでパラ泊中、標準状態より重心が上昇するとともに右舷側への初期横傾斜が生じた状態であったため、本件大波を右舷前方の舷側に受けて右舷中央付近から海水が打ち込み、船首甲板に滞留して船首が沈下するとともに右傾斜が増大し、右舷船首の乾舷が減少した状態となり、右舷舷側から波が連続して打ち込んで更に傾斜が増大し、右舷端が没水して復原することなく転覆したことにより発生した可能性があると考えられる。
 本船が、標準状態より重心が上昇するとともに右舷側への初期横傾斜が生じた状態であったのは、漁網が補修や海水等を含むことにより重量が増加していたこと、漁具、ロープ類等を操舵室天蓋等に積載していたこと、及び漁網が、右舷側から、重量の大きなチェーン、網、浮子の順に積み付けられ、重量が左右不均等になっていたことから、船体の動揺により、重量の大きなチェーン側に横移動したことによる可能性があると考えられる。
 海水が船首甲板に滞留したのは、放水口の機能を阻害するような放水口周りの構造が関与したことによる可能性があると考えられる。
以上、引用は次のURLから。https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/ship/detail.php?id=57


 一方、出版社による「黒い海」の紹介文は次のとおりです。
その船は突然、深海へ消えた。沈みようがない状況で――。本書は実話であり、同時にミステリーでもある。
 2008年、太平洋上で碇泊中の中型漁船が突如として沈没、17名もの犠牲者を出した。波は高かったものの、さほど荒れていたわけでもなく、碇泊にもっとも適したパラアンカーを使っていた。なにより、事故の寸前まで漁船員たちに危機感はなく、彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
 周辺には僚船が複数いたにもかかわらず、この船――第58寿和丸――だけが転覆し、沈んだのだった。
 生存者の証言によれば、船から投げ出された彼らは、船から流出したと思われる油まみれの海を無我夢中で泳ぎ、九死に一生を得た。
 ところが、事故から3年もたって公表された調査報告書では、船から漏れ出たとされる油はごく少量とされ、船員の杜撰な管理と当日偶然に発生した「大波」とによって船は転覆・沈没したと決めつけられたのだった。

 「二度の衝撃を感じた」という生存者たちの証言も考慮されることはなく、5000メートル以上の深海に沈んだ船の調査も早々に実現への道が閉ざされた。こうして、真相究明を求める残された関係者の期待も空しく、事件は「未解決」のまま時が流れた。
 なぜ、沈みようがない状況下で悲劇は起こったのか。
 調査報告書はなぜ、生存者の声を無視した形で公表されたのか。
 ふとしたことから、この忘れ去られた事件について知った、一人のジャーナリストが、ゆっくり時間をかけて調べていくうちに、「点」と「点」が、少しずつつながっていく。
 そして、事件の全体像が少しずつ明らかになっていく。彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして・・・・・・。(引用おわり)


 国の機関による調査報告書(運輸安全委員会作成)と伊澤理江さんとどちらが真相に近いかについてですが、率直に言えば伊澤さんの主張が真相に近いのではないかと思いました。
 現に、「第58寿和丸」と検索すると、運輸安全委員会報告書に批判的な報道が多くヒットするからです。取材しても明確な回答を示さない運輸安全委員の方々には正直に答えていただきたいと思います。真相を公表することがお亡くなりになった17名の乗組員の方々やその家族のためになると思います。

 昨日のKAZU1の事故報告は、一見すると尤もらしいことだと思っていたのですが、この第58寿和丸の件を考慮すると、もしかしたらですけど、あまり信用してはならないのかなとも一瞬ですが思ってしまいました(運輸安全委員会の皆様ごめんなさい)。

 事故原因を追求する委員会が、昨日記述したように、海水温に触れて、救助船の到着の遅れを擁護するように感じた記述に違和感を覚えたものですから(運輸安全委員会も海上保安庁も同じ国土交通省ですし・・・偶然の一致?)。陰謀論のようになってしまい、申し訳ございません。

最後までお読みいただきありがとうございました。
(続く) 

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