私が感じた詰め込み教育の落とし穴
私は団塊の世代の子供なので、学校では子供の人数が多く、受験、就職はまさに氷河時代だった。
高校生のとき、私は私立高校の進学コースに属していた。
そのクラスの生徒は卒業後、就職ではなくて大学進学を目指すというもの。
けど、偏差値は平均前後だったから、特別勉強が出来るというわけでもなかった。名門大学を目指しているのではなくて普通の四年生大学、短大を目指していた。
そういうわけだから、先生たちはこの普通の子供たちを出来るだけ偏差値の高い大学へ行かせようと頑張っていた。
しかも私が入ったとき私たちは二期生だった。
いわゆる出来立てのコース。先輩は二年生しかいなくて三年生はいなかった。
「進学コース」と学校側が世間にアピールしていても、まだ結果が出ていない状態だった。
なので、何とか全員大学に合格させようと学校側も力を入れていたんだと思う。とにかく授業量がすごかった。
今思えばかなりの詰め込み教育。
毎朝漢字か英単語の小テストがあった。
10点満点中8点以上が合格で、落ちれば再テストだった。
不合格なら当然だが合格をしても満点でなければ間違えた単語を20回ほどノートに書き取りして提出しなければならなかった。
授業は一日7時間目まであった。
通常は一コマ50分授業。でも最後の7時間目は70分授業だった。
男子は毎日8時間目まであった。
各教科から宿題、小テストはしょっちゅう出た。
もし小テストに落ちると、休み時間に先生の所へ行って受かるまで何度も再テストを受けた。
忘れ物にも厳しく、もし教科書を忘れたら授業を受けさせてもらえなかったので(隣の人に見せてもらうなんてことは出来なかった)事前報告し、先生にひとしきり怒られてから授業を教科書なしで受けた。
私はかなり忘れ物に気を付けていたつもりだがそれでも忘れたときはあった。
そういう時はその授業が始まるまでに友達から教科書を借りて今日やるであろう場所をノートに書き写した。
そして事前にその教科の先生の元へ行き、「教科書を忘れたので書き写しました。なので授業受けさせてください。」と頼みに行った。
そうしても結局怒られるんだけど。
夏休みは普通コースの人たちは40日ほどあったが、進学コースは19日間しかなかった。
残りは、全員「特講」と言われる授業を受けなければならなかった。
大学の授業みたいに一コマ90分。それを午前中受けた。希望者には午後からの自主勉強もあった。
風紀もかなり厳しかった。
先生に対し敬語は当たり前、制服のアレンジはもちろんダメだし、ピアス、パーマ、カラーはもってのほかだった。
廊下で先生とすれ違う時は、「おはようございます」「さようなら」は当たり前だが、日中でも「こんにちは」は言わなければならなかった。
担任の先生は行儀にも厳しく、立ってジュースを飲んでいると普通に怒られたし、文章を書く練習になるからと毎日日記を書いて週末に提出するようにと指示された。
土曜日になると一週間分の日記を先生に提出し、もちろん先生はそれを月曜日までに全て目を通し、一つ一つコメントを書いて返してくれた。
32人、全員分だったので先生も大変だったと思う。
だけどそれを3年間ずっと続けた。
そんなこんなで、卒業の時にはクラス全員が大学に合格し卒業することが出来た。それは嬉しい事だった。
私は文系の四年制大学に入学することが出来た。
そして大学に入った後、私は気づいた。
誰かの指示を待っている自分がいるのだ。
大学では課題に取り組むとき、やり方は自由にと言われたりする。
じゃあ、どうやったらいいのか浮かんでこなかった。
「こうしなさい」と先生から言ってほしかった。
決められたことをしっかりこなすという能力はあっても、自分で考えて行動する能力に欠けていることに気づいたのだ。
だけど高校時代、先生から「自分で考えて、行動する」という事を言われてはいた。
ただそれは言葉だけで、高校生活を送る上で実際そのように動ける機会はあまりなかった気がする。
たくさんの指示が先生から出て、とにかくこなしていくという生活を送っていたので、実際本当に自分で考えて行動しなければいけない場面に遭遇した事があまりなかった。
だからいざ実践しなくてはいけなくなったとき上手く動くことが出来なかったのだ。
それが分かったとき
「ヤバくない?自分…。」
と思って焦った記憶がある。
とにかくそれからは「自分で考えて、行動する」を出来るだけ実行できるように頑張った。
私が受けた教育が全てダメというわけではない。
決められたことをきちんとこなす力が付いたことはいい事だし、行儀の面では社会に出て行ったときにかなり役に立った。
しかし、あまりに指示を受けてそれをこなしているだけの生活が続くと自分から行動することが出来なくなるという事を身をもって知った。
ここが詰め込み教育の落とし穴かな…。
子育てをしている今、私はこのことに気を付けている。
バランス良くが難しい。
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