見出し画像

異形者達の備忘録-2

ママの吸い殻

その日、アルバイト先のお蕎麦屋さんは、異常な忙しさで、部屋に帰るなりベットに倒れ込んで寝てしまった。

夢を見た。 
とても綺麗な森の中、テントが2つある。それぞれのテントの前では、小さな焚き火で美味しそうな食事が出来つつある。手前のテントの人が「アァッ!また火が消えたちゃったよ、着火したはずなのになー、疲れたー、なぁ、熱いコーヒー 一杯だけ、分けてくれよ」数分空いて、「それがさ、おかしいんだよ、さっき確かにグラグラ沸いていた湯が、今さ、 水になってるんだ」2人のキャンパーは、一瞬顔を見合わせていたが、殆ど同時に「撤収しよう」と頷きあった。バタバタと片付けて荷物を背負い込んだ時、マズイ!焚き火が燻っている。消火だけはしていかなくてはならない、水をかけたり踏んだりしてもなかなか消えない、また同時に、これは火では無いと言い合って背を向けた。走り出した途端に、ドンと何かにツマ付いた。見ると学生鞄が、蓋を開けた状態で転がっていた。中にはびっしりと、濡れたタバコの吸い殻が詰まっていた。その時背後で、先程の焚き火跡から青い人型の光がズイーッと立ち上がった。キャンパー2人と同時に私もワアーっと声を上げて、飛び起きた。

寝起きに水を飲んで、先ほどからなぜか起動音のするノートパソコンを開いた。
いつもの地図が立ち上がっていて、凄いスピードで拡大していく

突然母子家庭になってしまった。暴力を振るう父が出て行って1ヶ月して、大きな古い団地に、母と2人で引っ越した。家具は殆ど無く、空間が、寂しかったので、団地内のスーパーで段ボールを貰って来て、色々と作った。私が作った段ボールの食卓や、机などを見て、咲子は器用ねえ!と母は、喜んでくれた。母と2人の生活は楽しかった、離婚したことは私の苗字が変わったことで分かったんだ。母の仕事が、夕方から出勤するので、夜は1人で過ごしていた。冬休みが始まってすぐに、母が帰って来なくなってしまった。何も聞いていなかったし、母の勤め先も知らない、母が居るうちから、ガスも電気も止まっているので、母がお弁当を買ってくれていたのに、もう何も無い、母と2人息を潜めて居留守をしていた、借金取りの人たちが、この頃は毎日夕方に来るので、息を潜めてじっとしていた。お腹が空きすぎて痛くなって来た。学校が休みで給食は無いし、困っていたが、ふと灰皿に目が入った。母が、残して行った吸い殻がある、いつも手を温めていた百円ライターで、火をつけて吸い殻を咥えて吸ってみた、目眩がして、気がついたら、空腹が平気になっていた。そうかぁ、いつもお母さんがお弁当を1つしか買ってこなかったわけが分かった。お母さんのご飯はタバコだったんだ。3本吸ったら空腹なんか全然平気になったよ、でも、お母さんは、タバコに絶対に触っちゃダメだって、言ってたから、怒るだろうな、父さんみたいに殴るだろうか、そうだ!団地裏の山へ逃げよう、時々見に来て、お母さんが帰って来ていたら、公園で口を濯いで帰ってこよう、そうだそうだ!そうすれば、借金取りの人達からも逃げられるじゃん、夕方になる前に、急いでカバンに吸い殻を放り込む、外は寒いからマフラーもして行こう、外に出たら今にも雪になりそうだ。傘無いし、このまま逃げよう、鍵を閉めて、公園を通り過ぎる時、東家の灰皿に沢山あった吸い殻も全部もらっていくことにした。見つからないように汗をかいて山登りした。水道のある広場があった。1人になってタバコを吸った。雪が降って来た。沢山降ったらカマクラ作ろう、寒いなあ、お湯飲みたいな、疲れたから木の下で少し眠ろう、起きたらカマクラ作ろう。

画面はGoogleに戻った。Noteに切り替えて、お湯を沸かした。コップに入れて机に乗せた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?