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みんな自分の山を登っている。

この間、バスケットボールをしに、7歳の息子と二人で、バスケットゴールのある公園に行ってきました。息子のドリブルは、たどたどしく、10回続いたらいい方でした。バスケットにゴールさせるのは、割とうまく、5回投げたら1回は入る感じでした。下投げですけどね。

そして、その日の午後また息子と、今度は4歳の娘も一緒に、近くの公園に遊びに行きました。息子はドリブルが楽しかったようで、また1人でやりはじめました。午前中はたどたどしくドリブルしていたのに、お昼をはさんで、コツがつかめたのか30回、50回、そのうち100回も続くようになりました。私は「すごい!」と言いましたが、彼の中では満足できていなくて、「次は200回、いや500回を目指す!!」と言いました。

私は、朝10回できるかどうかだった息子がその10倍の100回できたんだから、もう十分だと思っていました。

息子はまた、真剣に取り組みはじめました。1、2、3・・・、ドリブルの回数はどんどん増えていって、190、191、192、193、194となった時、彼のそばを人が通り、気がそれたのでしょう、195っ・・・でボールが彼の手の内から離れ転がっていってしまいました。

息子は、悔し涙を流しながら、私のほうに向かって走ってきました。彼がいかに集中していたか分かっていたので、私も、もらい涙をこらえながら、「頑張ったじゃん。195回でもすごいよー。悔しくて泣けるってことは、それだけ頑張ったってことだよ。」と抱きしめながら声をかけました。それでも、気持ちが収まらない息子は泣き続けました。
「もう1回やる?あきらめる?」と私が聞くと
「・・・あきらめたくないけど・・・。」涙。
私は、「あきらめなければきっとできるよー、あきらめたらそこで試合終了だよ。」とスラムダンクの安西先生の言葉を引用しました(笑)よく引用します。

私の言葉がけでは、息子はなかなか踏ん切りがつかず、やるか、あきらめるか迷っているようでした。
そこに、娘が突然
「あきらめちゃだめだよ、あきらめたらそこでおわりなんだよ。あきらめなかったらできるんだよ。」的なことを言いました。
すると息子は
「・・・もう1回やる!」と言ってドリブルをはじめました。

1、2、3、・・・190、191、192、193、194、195、196!197!198!199!200!!201!202!203!・・


彼はその後も続け、・・・495、496、497、498、499、500!!!・・・501、502、503・・・・・・・・・・・・628!

彼の最終記録はなんと、500回を大幅に超えた628回でした。

かれの右手はパンパンに腫れ、左手とくらべると2周りも大きくなっていました。その手を嬉しそうに見せてくれる息子の顔は一生忘れたくありません。そして娘の声掛けは1パーセント効いたって言ってました。(笑)

その日から、明らかに息子は変わりました。

彼は、年中の頃に公園で10分ほど迷子になってしまったことがきっかけでトラウマを持ち、信頼できる大人がそばにいないと不安で、私の姿が見えなくなると、家の中でも大声で「ママー!!」と叫ぶような子でした。

そんな彼が、私が見えなくても、いなくなることはないと思ったのか、自分は大丈夫と思えたのか、私と離れられる時間と距離が伸びました。

自分から知らない子に声をかけることはない息子が、公園であまり会ったことのない子に自分から関わりを持つようになりました。

私の友達の声掛けに、手をあげるくらいしか反応しなかったのに、声をだして挨拶を返すようになりました。

驚きました。そして気づきました。息子は自分の山を登っているんだって。


朝、ドリブル10回がやっとだった子どもが、夕方、628回もできるようになるなんて、私には全く予想できることではありませんでした。でも、息子は自分で定めた目標を達成したことで、はじめて自分の山の難所を1つクリアできたんだと思います。これが私が決めた目標100回をクリアしたんだからと終わらせていたら、彼の満足気な笑顔を見ることも、彼の心の大きな変化も見ることはできなかったんだろうなって思います。

私は私の山を登っていて、息子は息子の山を登っているので、手を伸ばして無理やり引っ張りあげるなんてことはできないんですね。そんなことをしても、空を切るだけ。私(親)にできることは子どもを見守ることだけ。彼が、見て!見てて!って言ってくれる内は、「見ること」が私にできること。思い返せば、息子も娘もずっと、「見て!見て!」って言ってますね。

みんな、自分だけの自分の山を登っていて、同じ山を登っている人は誰ひとりとしていない。自分の人生の頂に登れるのは自分だけ。そして、そこに登る力は自分に備わっていて、最後まであきらめなかったら、登りきることができる。

そこから見る景色、私は見てみたいです。

そして子どもたちが、山を自分たちの力で登る姿を、これからも見守っていきたいです。

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