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【読書感想】平成くん、さようなら/古市憲寿

芥川賞候補作品
作者の古市憲寿の初小説

舞台は平成が終わるまでの1年間。安楽死が合法化された日本。
突然安楽死をしたいと言い出した平成くん。平成くんは。平成が終わり、古い人間になるのが嫌で安楽死をしたいと告げる。そして、そんな恋人の説得を試みる愛ちゃんの話。
テーマとしては安楽死や死の実感についてなどいろいろと考えられるが、改元っていうシンプルなものでもありそう。

おもしろかった。「ねえ平成くん、」から始まる2人の会話がとても好き。固有名詞がリアリティを出していて、現実と小説でこんがらがりそうになったが、のめり込むように読んだ。2人の生活は明らかにほとんどの人間と異なるから自分と重ねながら読むことはしない、させないような内容。だけど2人の生活を覗くのは楽しい。フィクションと割り切れれば悲しみよりも面白さが勝つ。

常に最新の人間になろうとしていた平成くんだが、時代を背負った人間は必ず古くなってしまうと訴える。彼の抱える様々な葛藤に私は何も言えなくなってしまった。私は平成くんが結構魅力的に感じた。もっと平成くんの言葉を聞いていたかったなと最後は寂しくなった。そして私も平成くんと喋ってみたいな〜というのが素直に私が読んで思ったこと。私は残される者のエゴを尊重しちゃうタイプだから、あのシーンの平成くんはまじ理解不能だったけど‼︎‼︎

新しい価値観を小説で取り込みたい人にはとてもおすすめ。何度でも読み返せます。読んだあとしばらく考える時間があった方がいいかも。
そしてぜひ注解付きでも読んでみて欲しい。

ここからは自分の考えをつらつら整理してるだけなので読んでもこの本を知るのに有益な情報はないです。
なので、1番下にあるまとめ的な言葉をここにも書いておきます。
結果的に私は愛ちゃんとは共感し合えそうもない感想をもって、この本を読み終わった。でも、まだ愛ちゃんにとっての平成くんのような存在に出会えていないからかもしれない。まだ愛している人から安楽死の相談をされたことがないからかもしれない。まぁそもそも2人の生活が特殊だから当たり前かも。これから先の人生、様々なタイミングで読み返すだろうなと思った本だ。


この作品を読んで自分の死生観が大きく変わった。
死はただ1つの絶望で人間が最も恐れて生きていくものだと思っていたが、「もう人間は死ぬことなんてできなくて、たとえ誰かが死んだとしても、それはちょっと遠くに出掛けるのと、あまり変わりがないことなんだよ」という言葉に、確かに死と同じような人間関係の終わり方は沢山あるなと気が付けた。(この言葉が伝えたいこととは違っていると思うが、私はそう思ったのだ。)そのことから、死を無理にでも認める必要はそんなにないのかもしれないとも思う。

そう考えると私にとって小学校卒業から一生会うことのないクラスメイトは死んだと同じようなものなのだろう。だが、このような考え方の方が後々悲しくならないのかもしれない。なぜなら死んだと思っていた人が生き返ることがあるからだ。ある日道端でふと会えるかもしれない。殯を経験しない限り、人が死んだことを認めず、どこか遠くに出掛けたと思いながら過ごせるだろう。悲しくなるくらいなら死なんて簡単に認めなくてもいいと思う。私は葬式もお墓の管理も「あなたの分まで生きる」とかいう言葉も遺された生きている人たちの為のものだと考えている。だからこそ友達の葬式にはなるべく出席したくない。認めずに私の頭の中でコミュニケーションをとっていたい。 

私は愛ちゃんとは共感し合えそうもない感想をもって、この本を読み終わった。でも、まだ愛ちゃんにとっての平成くんのような存在に出会えていないからかもしれない。まだ愛している人から安楽死の相談をさられたことがないからかもしれない。まぁそもそも2人の生活が特殊だから当たり前かも。これから先の人生、様々なタイミングで読み返すだろうなと思った本だ。

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