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掌編小説

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#エッセイ

むかし私が会った犬

むかし私が会った犬

 私は看護学校卒業後、勤務先の病院の寮に入っていた。その寮は病院から線路を隔てた北側にあり、直線距離で言えば200メートルにも満たないのだが、踏切があるせいで通勤にはなにかと時間を要した。

 特に準夜(勤)が終わり深夜に寮に向かうと、必ずといっていいほど踏切で足止めを食らった。貨物列車が通るのだ。貨物列車はとにかく長い。長過ぎる。全長1kmは優に超えているに違いない。冷静に考えればそんなわけがな

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春の日の午後

春の日の午後

太陽が西に傾き始めた午後、窓のサッシを開けると庭に猫がいた。
私 「いつも庭にフンをしていくのはお前さんかい?ここは誰の縄張りか知ってのことかい?」
茶トラ猫 「小生だけではなく黒猫も仲間でございます」
私 「お前たちは食うに困ってないのかい?」
茶トラ猫 「近所の優しい姐さんが餌をくれるのです」
私「するってえと何かい?お前さん、うちの庭は雪隠なのかい?随分じゃないか」
茶トラ猫「生理現象ですか

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