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手を伸ばせば何でも手に入る時代だけど、僕たちは何にも手にしていない

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Hey! What's up people~!? 鎌田です。

これまで「感じるメディア」では、あまり児童書や絵本というジャンルに踏み込んでこなかったわけですが、別の動画でも話している事ですが最近の傾向として本を読まなくなった理由を挙げると、そのひとつに「読書そのものが苦痛」という意見もあるようです。

つまり読書習慣がなければ、本の面白さもわからないわけで出版に関わる人間として、その辺りの活動はきっちりやらないとなと考えた次第でございます。

これからどんどんこの辺のジャンルを出版していきたいと考えておりますので楽しみに待っていてください。

私は毎日1冊のペースで本を読む活字中毒です。漫画も読んだりもしますし、雑誌も読みます。内容は小説がほとんどで自分で書いたりもします。

そんな私の原体験はやはり絵本や児童書だったなと思うのです。絵を見ているだけで楽しい猫横丁の絵本で何回も読み返したなぁと今でもまるごと記憶にあるくらいです。

そして小学校では学校の図書館で江戸川乱歩の推理小説やSF小説を読み漁っていました。この辺りから読書スキは続いているのですが、だんだんと難解な本も読むようになって読書が苦痛と考えたことはありませんが、やはりそれは本を読むのが習慣だったからだと思います。

今回は新ジャンルの開拓ということで、本の持つ魅力を伝えるために「読書が苦痛」とならないように、子供が大きくなっても記憶に残るような素敵な絵本を出したいなと思います。

そのために、色々な絵本を読んでおりましてその中でも編集者目線で「う~ん」と唸った一冊を紹介させていただきたいと思います。

それがこちら「ぼくのブック・ウーマン」です。最初にあとがきを読むスタイルというのは、本の読み方として正しくはないのかもしれないのですけども、特別な例外というのは何にでも存在するとは思いませんか?

バッファとでもいうのでしょうか。こういった余裕のようなものが人生を豊かにしてくれると考えます。

「ぼくのブック・ウーマン」は、そのバッファゾーンにある本の一つで、ブック・ウーマンというのがどんな仕事の女の人なのか、知ってから読むと、きっと特別な関心を寄せるに違いないからです。

北米のケンタッキー州東部にあるアパラチア山脈のなかで、人里離れた山のずっと高いところに住む一家の、読み書きできない少年が絵本の主人公となっています。

彼には時間があればいつでも本をひらいて読んでいるような本好きの妹がいます。ある日、山の少年の家に、アメリカ西部劇に出てくるガンマンのようないで立ちで、馬の背中に大きな革のバッグを馬に乗せた女の人がやってきます。

その女性が持っていたのは銃ではありませんでした。一日がかりで山の上まであがってきたその女の人がたずさえてきたのは、バックいっぱいにつめ込んだ本だったのです。

時は1930年代のアメリカということで、ルーズベルトが大統領だった時代で、経済状態は最悪の状態だったと思います。そんな大恐慌のさなかに大統領になったルーズベルト大統領は雇用促進事業計画の一環として「荷馬図書館員(パック・ホース・ライブラリアン)」プロジェクトを開始しました。

少年の家にバッグいっぱいの本を携えてやってきた女の人は、馬に乗って家々に本を配ってまわるパック・ホース・ライブラリアンだったのです。

当時はアメリカでも女の人が働く場所は家のなかでという考えがまだ一般的だった時代に自ら進んでパック・ホース・ライブラリアンの仕事に就いたのは女の人たちでした。

ルーズベルト大統領は、1929年のアメリカで起きた大恐慌は、一大悲惨事というだけでなく、「一つの時代の終わり」という象徴的な出来事でした。

そこで政府は困窮のなかにあえぐ国民のため義務と責任をまっとうするがごとく、まったく新しい職業をつくったのです。

その義務と責任のあらわれの一つとして実行されたのが図書館予算の削減などでなく、パック・ホース・ライブラリー・プロジェクトになったのでした。

このプロジェクトは、歩いていけるような場所に学校がなく、図書館もないような遠隔地に本を届けることを目的として、ブック・ウーマンとよばれるようになった人たちが活躍します。

そんな職業があったことを私はこの本を読んで初めて知りました。報酬はわずかでも、 ブック・ウーマンたちはとても忍耐づよく、その仕事に誇りをもっていました。

本書の少年が暮らすアパラチア山脈に、やがて長く深い雪に閉ざされる冬がやってきます。本を山の上に暮らす少年の家にたっぷりと置いていったブック・ウーマンが、次に馬にまたがって姿を現したのは春でした。

冬のあいだ妹に教わって少年が覚えたのは本を読む喜びだったのです。みなさんは想像できますか? 今は選択肢の多い時代です。本以外にもテレビやゲームなど限られた時間の中で取り合いをしているのです。

そんな中で本が唯一の娯楽だとしたら一冊の重みが違いますよね。

そんなブック・ウーマンは冬の間に成長した少年に言うのです。「わたしのために本を読んで」。少年が声にだして読むのを聴いて、ブック・ウーマンは顔いっぱいに笑みを浮かべました。

なんということでしょうか。貧しくとも幸せにあふれた日常生活を思い浮かべることができますよね。手を伸ばせば何でも手に入る時代だけど、何にも手にしていないと感じる時代です。

本当に貧しいのはどちらなんでしょうか。

世の中を震撼させた新型コロナウイルス感染症対策による経済への打撃はやがて計り知れない衝撃となって私たちに帰ってくるでしょう。

そんなときに本当の幸せって経済的豊かさで測るものじゃないよね。と、自分の尺度を持っていれば自分の軸があれば、どんな状況に置かれていても不安に恐れることもないし、不幸だと嘆くこともありません。

このように、この絵本はずいぶん昔の物語ですが、「今」皆さんに読んでいただきたい絵本だと思いました。

絵もとっても心に残るタッチでした。それもそのはずで絵を描いているディビッド・スモールは、2001年『それできみは大統領になりたい?So You Want to Be President?』 でコルデコット賞を受賞していまして、絵本『リディアのガーデニング』でも、球根から花を育てる庭仕事の好きなルーズベルト時代の少女を描いています。

自宅で過ごすことも増えて移動時間が減った分、こうした本を読んでみるのも豊かで幸せな気持ちになれるのでおススメですよ♡

それではまたお会いしましょう!

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言の葉を綴じる杜
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